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第2話土地神様と葵の目的

last update 最終更新日: 2025-11-02 18:30:14

「ふぁぁ……眠い……」

 神様の夜は早い…だなんて何言ってんだって思うけど実際七時に起きてるのだからしょうがないだろう。

 それにしてもやっぱり人の往来は激しいなぁ…

 いつ見ても驚く程だよ。

 なんせ昔じゃ考えられないものばかりなんだからずっと驚きっぱなしだ。

 この土地の人の話を聞くと近いうちにあの小さい鉄の塊がウチたちみたいに空を飛ぶみたいだ。

 ほんとかどうかは分からないけど、もしそれが現実になったらとんでもない事だ。

 多分、ウチだけじゃなくて神様達みんな驚くと思う。

 それだけ人間達はほんとにすごいのだ。

 こんな短期間でものすごく成長出来るのだから驚きが隠せないよ。

「人間って凄いなぁ」

「そうだよねぇ」

 と言った方の隣を見てみると……

「ん?」

「ん?」

「えぇ?!な、なんでここに?!」

「そ、そんな驚くことある?!」

 いや、驚くよ。

 だって昨日会ったばっかの子がこうしてまた来てるんだから。

 それに、ほんとに来るだなんて思わなかったし。

「来ちゃ…ダメでしたか?」

「いやダメってわけじゃないけど、どうしてウチ……じゃなかった私なんかに会いに来たの?」

「だって…どうしても会いたかったんだもん……」

「?!」

 何この子……凄い健気だ……

 それに、こんなウチなんかの為に昨日言った約束を覚えてくれたなんて……

約束……約束か……

 いや待って、約束ってさ陰陽師にとってそういうのは重いもの……縛りとかになるんじゃ……

 そんな事無いのかな?

 いや、特にこの子の家がどの家系によるけど…もしかしたら約束によって、縛られるんじゃないと思う……

 そうだったら……

 ここに来られないよう結界を張るしかないかもしれない……

「ねぇ……葵ちゃんって……どこの陰陽師の子なの?」

「私……ですか?私は……そうですね……」

「ごめん、言いたくなかったよね……」

「い、いえっ、って……神様が謝っていいもんなんですか?!」

「え?ま、まあなんか聞かれたく無いこと聞いちゃったし……」

「そ、そうですよね……まあ謝るのは当然ですけど…でも神様ってやっぱり……」

「?」

「ううん、なんでもないですよ」

「そ、そっか……」

 うん……

 気まづい。

 こうやって来てくれたのはいいけど、やっぱりどういう目的でここに来てウチを連れ去ろうとしているのか。

 それに、葵ちゃんはウチの名前をどこで知ったのかな?

 それが一番の気がかりなのだ……

「「あの……あ」」

「あ、葵ちゃんからいいよ」

「わ、分かりました……」

 そんなに怖がらなくても……

 まあ、怖がるか。

 仮にもウチ神様だし。

「質問なんですけど…澪··さんの耳としっぽはほんものなんですか?」

「ん?あ、あぁこれね」

 やっぱり触れられると思った。

 まあ…生まれとかは全然覚えてないけど確かお母様は狼と神の間に生まれたから……とか。

 だからウチにも色濃く出てるんじゃないかって言われてるけどね。

 こんなふわふわのしっぽと耳を持ってたら偽物って疑いたくなるよなぁ……

 まあこれ以外にも隠してるものあるんだけどね。

 ここは敢えて……

「本物だよ、ほらっ」

 ふわりと自分の意思でしっぽを動かす。

 普段は動かす事ないからウチの感情によって動いてるみたい……だからなぁ。

 まあ……たまに犬みたいって言われることあるからほんとは見せたくないんだけど……

 自然と消えないから恥ずかしいものだ……

「可愛い……」

「え?」

「あっ、ご、ごめんなさいっ!い、嫌でしたよね……」

「う、ううん。そんな事ないけど……良かったら…触ってみる?」

「え、い、いいんですか……?」

「いいよ、君なら」

「あ、ありがとうございますっ!!」

 と言うとウチのしっぽに飛びついた。

 やっぱりそれだけ触りたかったんだろうな。

 もふもふで、ふわふわ。

 ウチもたまにこれにくるまって寝ることあるけど。

 そんなにいいものなのかな……

 分からないけどね、でも自分のものだから暖かいなぁとしか思わないけどね。

「澪··さんは…」

「ん?」

「陰陽師を…恨みますか?」

 としっぽに埋まってる葵ちゃんが聞いてきた。

 恨む…か。

 そうだなぁ…

 1000年前の事だからもう全然覚えてないし恨むなんてこと忘れちゃったや。

「恨む……は無いよ。ただ、こうして今いるこの土地を守れてるのならウチは幸せかな」

「澪さん……」

「まあ、でもウチはそろそろ神様じゃなくなる。だから、葵ちゃんの誘い受けるのもありかなーって」

「?!」

 驚いた表情を見せる。

 なんというか、可愛らしい表情をしているからか愛らしく思ってしまうのはなんでだろうか。

「ふふっ、冗談だよっ」

「な、なんだぁ……」

「でも、ウチは……私はお母様の願いを叶えたいだけなんだ」

「願い……?」

「うん、ただ叶えたいちっぽけな願いだけどね」

「それは……」

「まあ、言えないんだけどね」

「えー」

「でも、守り神としての役目としてここを繁栄させる事が最大の役目だから、ずーっと居なきゃいけないんだよね」

「そう……なんですか」

「うん、それは伝えておくよ」

 やっぱり悲しい顔するよね……

 まあ、それが土地神の真の使命だからしょうがないんだよね。

 だから………いつ消えてもおかしくないんだ。

「そういえば、次私か」

「あっ、そうですねっ」

「私が聞きたかったことはどうしても葵ちゃんは私をここから連れ去りたいの?」

「……はい」

 やっぱり、そうか……

 でも、それはほんとにするべきことなの?

 こんな、土地に縛られてもう力がそんなに残ってない絞りカスみたいな神を求める理由が……あるの?

「それは、どうして?」

「それは……言えません」

「私には言えない理由?」

「……はい」

「そっか……」

 やっぱりなにかある。

 この神力と隠してるこれは……

 何かをまだ隠してる感じがある。

 分からないけれど……

「ごめんなさい……」

「別に謝らなくても……」

「その…また明日来ます!!ごめんなさい!!」

 と駆け出してしまった。

「あ、ちょっと!!」

 静止をしても止めるのが遅かったのだろう。

 でも、やっぱり止めるべき…だったよね。

「あぁ…何してんだろ、ん?」

 なにか忘れていったのかな。

 人間さん達が言う……のーと……ってやつ?

 まあ巻物みたいな感じか。

 中身……見ちゃいけないだろうけど……

 見ちゃうか

「え?なにこれ?」

 見た感じ……

 これって……

 ウチのことしか……書いてない……

 2023年4月1日

 今日は後ろから見てるけどやっぱりあの狼さんはかっこいい。

 凛としてて、ほんとにずるい。

 私が勝手にそう思ってるだけ……なんだけどね。

 2023年4月2日

 今日もお母様に怒られた。

 西園寺家としての自覚が無いのか、と。

 だから、あの狼さんの後ろ姿を見よう。

 あの人みたいに元気いっぱいで誰にも負けない気迫を持てるような……

 2023年4月3日

 術…やっと使えるようになった。

 でも、そんな継続して使える訳じゃないけどあの狼さんに近づけるだけになるまで頑張らないと。

 2023年5月8日

 あの狼さんに"助けられてから"5年が経った。

 でも、あの日から全然変わらない所に居るけど……やっぱりあの狼さんは神様……なのかな

 そろそろ、術もできるようにしないと。

 2023年8月31日

 夏休みも終わる……

 でもまだ術は長く発動出来ない。

 何がダメなんだろう、やっぱり……

 2024年3月31日

 とうとうお母様に出て行けと言われてしまった。

 それもそうだ、私には才能が無いんだから。

 お父様すら居ないこの家にいる意味すらないと思ってたから別に丁度いいけど。

 2024年6月10日

 やっと……やっと完成した……

 私だけの技……

 早速使ってこよう!!そして…あの狼さんも……

 2024年7月1日

 長かった……

 だいぶ時間かかったけどやっと初めての使い魔が出来た……

 正確に言えば式神か……マジモンの神様だったのが式神になるなんて……いいのか悪いのか分からないけど……やっとやっと……あの狼さんが手に入る……

 近いうちに。

「もう…終わり?いや、続きがある」

 開いた瞬間……

 そこから真っ黒で……

 でも、全部が黒いって訳じゃなかった。

 最後のページだけは……

 違ったんだ。

「あーあ、見ちまったんだな」

「?!」

 何この神力……

 凄まじい……いや、これは化け物を超えるか……

「あいつが忘れ物したから行ってこいって言ってたがそれを見たんなら話は変わるな」

「あなたは……誰」

「お前と同じ、神だよ。元、だけどな」

 to be continued

 <用語解説>

 西園寺家

 由緒正しい陰陽師の家系

 しかし、ある日を境に女児が生まれた事がきっかけで没落していく

 理由は不明、後に男児も生まれるが謎の死を遂げ続けるため女児を陰陽師として育てることに決めていたが上手くいかず異端児である葵を正当後継者にしようとするはずが失敗してしまった

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