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第一章:ルイス・ヴィスコンティは希望を得る

Auteur: Kaya
last update Date de publication: 2025-09-06 19:02:00

俺はルイス・ヴィスコンティ。ヴィスコンティの第二王子だ。

優秀な兄ーー王太子エルミニオの輝く影に隠れ、宮廷では「無能な王子」と囁かれている。

王位は遠く、誰も俺に期待などしていない。

時々、そんな俺の心の奥で何か疼くことがあった。

夏の海辺と、誰かの優しげな笑顔ーーそれはすぐ消え去ってしまう、幻のような記憶。

あれは一体何だったのだろう?

だがそれよりも、最近、俺の頭を悩ませるのはリーア・ジェルミの存在だった。

銀髪、儚い笑顔を見るたび、胸が締め付けられる。

だがこんなもの、愛じゃない。

それよりもっと歪で凶悪な……

彼女を縛りたい、閉じ込めたい。

そんなどす黒い衝動に苛まれる。

俺は兄に劣等感を抱くだけでなく、こんなにも最低な男だったのか?

その夜、王宮の小広間では悲惨な光景が広がっていた。

頭上のシャンデリアが月明かりで淡く光り、すぐ近くで運河の水音が響いていた。

兄エルミニオの冷酷な声が広間いっぱいに響いた。

「ロジータ・スカルラッティ!

リーアに毒を盛ろうとした罪は、俺への……

いや、ヴィスコンティ王家への反逆に等しい!

よって、婚約は破棄し、ここでお前を処刑する!」

ロジータの真紅のドレスが床に広がり、いつも自慢していた金髪が、みすぼらしく揺れる。

彼女は兄を愛しすぎ、嫉妬からリーアに毒を盛った。

将来、王太子妃になるかもしれないリーアを毒殺しようとした。

だからこの断罪には、正当性がある。

そう思い込もうとし、俺は彼女の最期から一瞬だけ目を逸らした。

しかし、次に見るとエルミニオの剣は容赦なくロジータの心臓を突き刺し、彼女の真紅のドレスはさらに濃く染まっていた。

かつては同じ『星の刻印』を持っていたロジータを、あんなにも残酷に。

碧い瞳に涙が滲み、やがて彼女は膝を崩した。

「エルミニオ様……、私……、私は、あなたを……!ゴホッ!」

震える声。

リーアがエルミニオの背後に立ち、華奢な体を寄せ、涙を流す。

「エルミニオ様、怖い……」

その儚さに俺の胸が痛んだ。

リーアが俺にもああしてくれたら……

違う。今はこんなことを考えている場合じゃない。

エルミニオはロジータの心臓を突き刺し、血まみれの剣を手放した。

ヴィスコンティ王家の不思議な力が宿る剣。

エルミニオはその手で、怖がるリーアを優しく慰めた。

ロジータの瞳に絶望の色が宿る。

数少ない関係者たちの冷たい視線。

誰もロジータを助けようとはしない。彼女が悪女だから。

……このまま死ぬのか? 

スカルラッティ家の令嬢、兄の婚約者だった女。

俺も、ただ見ているはずだった。

だが、ロジータがエルミニオを見つめる切ない瞳にーーその姿に胸が締めつけられた。

報われない自分自身を見ているようで。

リーアに歪な思いを抱く、未来の自分を見ているようで。

その瞬間、運命の相手を待ち侘びている俺の右手の『星の刻印』が、輝きはじめた。

まるでロジータ・スカルラッティを助けろとでも言うように。

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