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紅茶とすれ違い

ผู้เขียน: yumemado
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-11 06:56:25

紅茶専門店。

棚に並ぶ茶葉の瓶から、深い香りが漂っていた。

マルグリットは、一つの瓶を手に取り、

ふわりと香りを確かめる。

「今日は……少し香ばしいのがいいわね」

そこへ、背後から聞き慣れない男の声がする。

「君、それ、いい香りの選び方をしてるじゃないか」

マルグリットは振り返り、軽く会釈だけして話を終わらせようとした。

「あ、どうも……」

しかし男は一歩詰めてくる。

「ねえ、このあとさ、一緒にお茶でもどう?」

「結構です」

きっぱり断っても、男は引き下がらない。

にじり寄ってきて、ついには肩に手を伸ばしてきた。

「だから、やめてください」

マルグリットが一歩さがった瞬間だった。

すっと彼女の前に影が立つ。

「……女性が嫌がっている」

低く落ちついた声。

店内の空気が一瞬で張り詰めた。

マルグリットの前に立ちはだかったのは、

背の高い青年――テオドール侯爵である。

本人はまだ、自分が“相手の夫だった男”と知らない。

絡んでいた男が舌打ちした。

「なんだよ、関係ねぇだろ!」

テオドールは表情ひとつ変えずに答える。

「関係ないからこそ、黙って見ていられない」

その目は鋭く、威圧感があった。

男は明らかに怯え、逃げるように店を出ていった。

静けさが戻る。

マルグリットは息を整えながら、

助けてくれた青年へと向き直る。

「ありがとうございます。本当に助かりました」

テオドールは少し驚いた顔をして、

それから穏やかに頭を下げた。

「いえ……お気になさらず」

彼の声は落ち着いているが、

近くで見ると、どこか疲れた影があった。

沈黙を破ったのは、マルグリットのほうだった。

「紅茶……お好きなんですか?」

「ええ。最近になって、ようやく味を覚えまして」

「まあ、奇遇ですね。私も紅茶は大好きです」

ほんの短い会話。

けれど、互いの素性も知らぬまま、そこで終わる。

包み終えた茶葉を受け取りながら、

マルグリットは軽く頭を下げた。

「それでは……ありがとうございました」

テオドールは店を出ていく彼女の後ろ姿をしばらく眺めていた。

「……綺麗な人だ」

ただ、それだけ。

彼には、

この女性が “三年間の妻・マルグリット” だと気づく手がかりは何もない。

結婚式は代理人同士。

顔も知らず、写真も記録もない。

互いにとって、存在は紙の上の名前だけだった。

誰も、まだ気づいていない。

この奇妙な“すれ違い”が、

二人の人生を大きく動かし始めていることを。

店を出たマルグリットは、

紅茶の紙袋を胸に抱えながら微笑んだ。

「まったく、世の中には変な人もいるけど、

 親切な人もいるのね」

そして、海風の吹く道をのんびり歩いていく。

──すれ違いの二人。

まったく知らないまま、三年ぶりに“再会”を果たした午後だった。

また会った知らない人

紅茶店での出来事から数日後。

マルグリットは、港の市場に来ていた。

「今日はお魚が安いわねぇ。スープにしましょ」

と、買い物かごを抱え、まるで地元の奥さんのような手際で歩いていた。

魚屋のおじさんが声をかける。

「お嬢さん、この鯛どうだい? 今日は新鮮だぞ!」

「じゃあ、その子にしようかしら」

(※魚を“子”呼びする癖がすっかり染みついた)

――その時。

「すみません、この、魚市場はどちらへ?」

低く落ち着いた声がした。

振り向くと、見覚えのある背の高い男性。

マルグリットは「あっ」と小さく声をあげた。

「あのときの……紅茶店で助けてくださった方!」

「おや、偶然ですね」

テオドール侯爵は、少し驚いたように微笑む。

テオドール

「この辺にお住まいで?」

マリー

「ええ、まあ。……というか、あなたこそ、魚市場に何のご用で?」

テオドール

「魚を見に」

マリー

「見るだけ?」

テオドール

「いや、その……料理を覚えようかと思って」

「まぁ!」マルグリットがぱっと笑う。

「貴族みたいな台詞!」

テオドール

「え?」

マリー

「あ、いえいえ、なんでも!」

笑いながら、二人は隣の屋台でうっかり同じスープを試食することになる。

「これ、美味しいわね」

「……そうですね」

気まずいような、どこか心地いい沈黙。

しかし二人とも“まだ相手をよく知らない”。

その夜。

マルグリットはコテージで魚スープを煮込みながら呟いた。

「ふふ、不思議な人ね。二回も偶然会うなんて」

一方その頃、侯爵は屋敷の書斎で紅茶を飲みながら眉をひそめる。

「……あの女性、気になる。どこかで……会った?いや、気のせいか」

再びすれ違う二人。

お互いのことを知らないままに

図書館での再会(知らない人)

静かな午後の図書館。

高い天井からやわらかな光が降り注ぎ、

紙の匂いが心を落ち着かせていた。

マルグリットは料理の本をめくりながら、

「次はスープに合うパンの作り方、ね」と小さく呟く。

すっかり“普通の町娘”らしい日常。

――その時、角を曲がったところで、誰かの肩とぶつかった。

「あっ、ごめんなさい!」

「いや、こちらこそ失礼」

二人の声が同時に重なった。

顔を上げると、落ち着いた紺のコートの男性。

どこかで見た気がする……と思えば、

紅茶店で助けてくれた、あの人だった。

マリー

「あなたは……紅茶店の時の!」

テオドール

「おや、またお会いしましたね」

自然に笑みがこぼれた。

まるで旧知のような空気なのに、

もちろん互いに“誰か”とは知らない。

テオドール

「本はお好きなんですか?」

マリー

「ええ。料理の本ばかりですが」

テオドール

「珍しいですね。私は……戦記を少々」 

テオドール

「まぁ、難しそう。あの……お名前を?」

彼が少し戸惑って名乗る。

「テオドールです」

「私はマリーと申します」

※(マリーは、本名を隠しているわけではない。ただ、そう名乗っているだけ。)

司書が通りかかり、微笑んだ。

「素敵ですね。ご夫婦で読書ですか?」

ふたり同時に、即否定。

「いえいえ!」「違います!」

視線がぶつかり、思わず笑い合う。

一瞬の沈黙が、なぜか少し心地よかった。

帰り道、マルグリットは本を抱えながらつぶやいた。

「本屋でも、紅茶店でも、市場でも……なんであの人にばっかり会うのかしら」

笑いながら、陽の光の中へ消えていく。

一方そのころ、テオドールも図書館を出て、

「……不思議な人だ。会うたびに印象が変わる」

と、小さく呟いた。

それだけ。

――ただの偶然、ただの他人。

それでも、またすれ違う。

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