Masuk「え、そんなに驚くこと?キスの一つや二つぐらいもうとっくの昔にしてるでしょ?」
「し、してる訳ないじゃないですか!」
顔を見るのも嫌だって言われてるぐらいなのに 「あ、」 「へ?あ…っ…!」 い、今、キスされた…?「敬語やめてって言ったでしょ。あ、もしかして初めてだった?」
一度も恋なんてしたこと…彼氏さえ出来ないまま結婚したんだから当たり前だ。
「別に…」
恋は湊さんと出会った時に、初めてした。初恋が実らないって言うのは嘘だけどほんとなんだ。「強がっちゃって」
キスなんてしたこと無かったけど、私だって見栄を張りたい時ぐらいある。今がまさにそう。「ほんとに、初キスじゃないです…っ、ちょ、ちょっと!やめてくださ…っ、んん、湊さ…、湊さん!」
キスなんて何年も一緒に過ごしてきて、一回たりともした事なかったのに…たった一日で何回するのよ。一生分した気分。
「…ムカつく」
「へ?」
「俺以外とキスしたとか、」 独占欲…強い…「そんなこと言われても…」
「ねぇ、ほんとの事を言わないと、今よりもっとすごいキスするけど」今よりもっとすごい…?って、そんなの無理に決まってるじゃん!
「湊さんが…初キス、だよ、」
「っ、」正直に言ったんだから、これでもうキスしないだろう
「湊さん…?っんん、ちょっ…んっ」
どうして…こんなの、約束とちがうじゃない!
「…これは、俺に嘘をついた罰」
「何を…んっ、ちょっと待って、」 「…これは沙耶ちゃんが可愛すぎる罰」 「ちょっ…もうやめ、っ、んん、」「まだまだあるけど…これ以上したらいろいろと耐えられない気がするから、ここら辺でもうやめといてあげる」
「正直に言ったらキスしないって言ったのに…、」「本当のこと言ったら、今よりすごいキスはしないって言ったけど、キスをしないとは言ってないよ」
「な、そんなの…」 ずるくない?「はっ…!」
今度はなんだ「この怪我は何!?」
あぁ、この怪我はお皿を割ってしまって、片付けようとした時にできた傷。だけど、それほど傷も深くないし、絆創膏を貼る必要もないと思ったからほっておいたのに、
「大丈夫?お医者さんに見てもらった方が…」
心配症すぎるよ…前の湊さんならきっと、傷を作ったお前が悪いって気にもとめなさそう「大丈夫だから。そんなに大袈裟にする事じゃないよ、」
「大袈裟なんかじゃないよ!どんなに小さな怪我でも心配なんだよ」「湊さん…」
この人は湊さんだけど湊さんじゃないんだから、ときめいたところで意味ないのに「ところで、ここには家政婦さんはいないの?」
「あ、はい。湊さんが家事ぐらいひとりでできるだろって」 「俺がそんなこと言ったの!?」「うん」
「そんな、1人で掃除できるような広さじゃないでしょ?」前の俺は随分冷たいヤツだったんだねって、本当にその通りだけど
「これぐらい1人でしないと、ただ何もしないでここにいさせてもらうのが申し訳なくて、私も家政婦が欲しいなんて言わなかったんだよ」
「なんで申し訳ないなんて思うの」
「私が至らないせいで、いつも迷惑かけてたから、」「…俺は彩花ちゃんといられたらそれだけで十分幸せなのに、自分のこと至らないとか思わないでよ。」
「ごめんなさい、」私が不甲斐ないばかりに、湊さんにいつも迷惑かけてたのは事実だから
「謝ってほしい訳じゃなくて、」 「…」湊さんにもよくお前は謝ることしか出来ないんだなって言われてた。
「彩花ちゃん、」
「っ、湊さん…?」 え、私、今、抱きしめられてる…、?「ごめん、ちょっとじっとしてて」
「…なんで、」 どうしてこんなにも優しく抱きしめてくれるんですか…?「辛そうな顔してたから」
危ない、抱きしめ返すところだった。今の私にそんな資格ないのに。「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「ほんとに?」 そう言って心配そうに私の顔をのぞき込む「大丈夫です」
「そっか、良かった。とりあえず彩花ちゃんの意見を尊重したいから家政婦の件は保留にするけど、しんどくなったらいつでも言ってね」私の意見を尊重してくれる…そんな人今まで…
「どうしてそこまでしてくれるんですか?」 怪我をしたら心配してくれて、私のためを思って行動してくれる…「どうしてって、好きなら当然だよ」
「好きなら…」
湊さんが私のことを好きになってくれるかもしれない。なんて期待したこともなかったし、自分が嫌われてることぐらいちゃんと分かってた。だけど、こう言葉にされると、何だかグサッとくるものがある。
「あ、前の俺が彩花ちゃんを好きじゃなかったって意味じゃないよ、」
そう言われれば言われるだけはっきり分かる。「いいの。分かってるから」
「ほんとに違うんだよ、だって彩花ちゃんの顔を見てたらドキドキするのだって、まだ出会って間もないのに彩花ちゃんがとてつもなく愛おしく感じるのはきっと昔の自分がそう思っていたからなんだろうなって」
「そんなわけ…」
湊さんが私を愛おしく思ってた…?そんなわけあるはずないよ。「ほんとだよ。ほんとに…。…っ、」
痛みで顔を顰めた。「湊さん!大丈夫ですか!?」
「大丈夫、ごめんね。今日はもうこのまま寝ることにするよ」 「うん。その方がいいよ。じゃあ私はこれで」「え、どこ行くの?」
どこって…「寝室だけど?」
「ここは?」 「ここ…?」「ここでは寝ないの?こんなにベット広いのに?」
「そ、そうだけど」 湊さんと私が一緒に…?そんなの、想像すらつかない。「嫌…?」
「嫌というか…その…」 私と寝たくないからってわざわざ自分の部屋を作ったのはそっちなのに。「あーごめんね。困らせたかったわけじゃないんだ。だからそんな顔しないで?ね?おやすみ、また明日」
ずるいよ、そんな顔で言われたら…「失礼します」
「え?彩花ちゃん?」 「別に湊さんが嫌いな訳じゃないから誤解して欲しくなくて」「はあ、可愛すぎ」
「か、かわ…?」
今のとこに可愛い要素があったんだろうか「抑えが効かなくなる前に早く寝よ」
「抑え…?なんの?」「彩花ちゃんは知らなくていいの」
なんて言うから「気になって眠れないかも」
「きっとすぐに眠れるよ」って結局答えが分からないままモヤモヤしてたけど、湊さんの言う通りすぐに寝りについた。
「え、そんなに驚くこと?キスの一つや二つぐらいもうとっくの昔にしてるでしょ?」「し、してる訳ないじゃないですか!」顔を見るのも嫌だって言われてるぐらいなのに「あ、」「へ?あ…っ…!」い、今、キスされた…?「敬語やめてって言ったでしょ。あ、もしかして初めてだった?」一度も恋なんてしたこと…彼氏さえ出来ないまま結婚したんだから当たり前だ。「別に…」恋は湊さんと出会った時に、初めてした。初恋が実らないって言うのは嘘だけどほんとなんだ。「強がっちゃって」キスなんてしたこと無かったけど、私だって見栄を張りたい時ぐらいある。今がまさにそう。「ほんとに、初キスじゃないです…っ、ちょ、ちょっと!やめてくださ…っ、んん、湊さ…、湊さん!」キスなんて何年も一緒に過ごしてきて、一回たりともした事なかったのに…たった一日で何回するのよ。一生分した気分。「…ムカつく」「へ?」「俺以外とキスしたとか、」独占欲…強い…「そんなこと言われても…」「ねぇ、ほんとの事を言わないと、今よりもっとすごいキスするけど」今よりもっとすごい…?って、そんなの無理に決まってるじゃん!「湊さんが…初キス、だよ、」「っ、」正直に言ったんだから、これでもうキスしないだろう「湊さん…?っんん、ちょっ…んっ」どうして…こんなの、約束とちがうじゃない!「…これは、俺に嘘をついた罰」「何を…んっ、ちょっと待って、」「…これは沙耶ちゃんが可愛すぎる罰」「ちょっ…もうやめ、っ、んん、」「まだまだあるけど…これ以上したらいろいろと耐えられない気がするから、ここら辺でもうやめといてあげる」「正直に言ったらキスしないって言ったのに…、」「本当のこと言ったら、今よりすごいキスはしないって言ったけど、キスをしないとは言ってないよ」「な、そんなの…」ずるくない?「はっ…!」今度はなんだ「この怪我は何!?」あぁ、この怪我はお皿を割ってしまって、片付けようとした時にできた傷。だけど、それほど傷も深くないし、絆創膏を貼る必要もないと思ったからほっておいたのに、「大丈夫?お医者さんに見てもらった方が…」心配症すぎるよ…前の湊さんならきっと、傷を作ったお前が悪いって気にもとめなさそう「大丈夫だから。そんなに大袈裟にする事じゃないよ、」「大袈裟なんかじゃないよ!どんな
「え…、天使…?」この人は…何を言ってるんだ…?この部屋に天使と思えるようなものなんて何も…ま、まさか幻覚でも見えてるんじゃ…「いるじゃんここに」そう言って私のことを指さした。「え、わ、私ですか?」「うん」私が天使…?そして、そんな瞳で私のことを見つめないでください。「私は天使なんかじゃないですよ、」こんな言葉人生で初めて言った「ってことは、ここは天国?」「違います…」さっきからおかしなことばかり言って…頭を強く打ちすぎておかしくなったのか…それとも、ただ私の事をからかってるだけ?いや、湊さんはそんな事をするタイプの人じゃない。「そっか、えっと…俺達初めましてなのかな?」「え?」どういうこと?私と過ごした時間をなかったことにしようとしているのか?「君の名前は?」「彩花です…み、湊さん、本当に私が誰か分からないんですか?」どう考えても嘘をついてるようには思えない「ごめんね、君のことだけじゃなくて、実は俺が誰なのかも分からないんだ」ーー至急、家にお医者さんを呼んで診てもらった。「記憶喪失…?」「はい。後頭部を強く打ったことにより脳震盪が起きたのでしょう」 「そんな…湊さんはすぐに記憶が戻るんですよね?」「今はまだ何とも…」どうして…どうしてあの時我慢できなかったの。いつもの事だからって、聞き流しておけばこんな事にはならなかったのに。「そうですか、ありがとうございます。」「はい。では失礼します」私のせいだ。私のせいで湊さんは…どうしよう…け、警察に行くべきなのか…もう少しで人を殺めてしまいそうに…いや、もちろん故意ではないけど殺人未遂…「彩花ちゃん!ねぇ彩花ちゃんってば!」 「っあ、はい」名前を呼ばれているのにも気づかないぐらいぼーっとしていたらしい。「大丈夫?顔色悪いけど」「大丈夫です。」嘘だ。大丈夫なんかじゃない。だけど今一番混乱しているのはきっと湊さんの方。「彩花ちゃん…?」でも、考えれば考えるほど…「湊さんっ…私のせいで、私のせいで…ごめんなさ、」謝ってすむ問題じゃない。分かってる。だけど私には謝ることしか出来ない。「え、ど、どうしたの?どこか痛い?泣かないで、」「ごめんなさい、」泣きたいのは湊さんの方なのに、涙が止まらない「何があったか分からないけど、もう謝らないでいいから」
「きゃっ!あぁ、またやっちゃった」お皿が割れた音に反応して来てくれたみたいなんだけど…「彩花!大丈夫!?怪我してない?」そんなに慌てなくても大丈夫なのに、「私は大丈夫だけど、ごめんね、お皿無駄にしちゃった」お皿を片付けようと伸ばした手を「駄目だよ」そう言って掴まれた。「え、でも」「俺が拾うから、彩花は触らないで。また指切ったりしたら俺が嫌だから」「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」心配症だなぁ。なんて呆れた顔で笑ってみたけど、本当はすごく嬉しかった。前までは心配するどころか、むしろ…「きゃっ、」早く片付けないとこんなのバレたらまた…「何やってんの」「湊さん…」彼はいつもゴミを見るかのように私のことを見下す。その目を見る度に私は…「はぁ、」なんて、わざとらしくため息を吐くから「ご、ごめんなさい…」私はそうとしか言えなくて「皿洗いもろくに出来ないのか」「ごめん、なさい、」皿洗いもまともに出来ない私が悪い。「お前は何もできないんだな」「ごめんなさい、」何も出来ない私が悪い。「はぁ、ごめんなさいはもう聞き飽きたんだよ」「っ…」それでもやっぱり、私にはごめんなさいしか言えなくて、「もういい、怪我でもしたら危ないから、…お前がちゃんと掃除しておけよ」「はい…」「はぁ、お前を見てるとため息が出る。顔も見たくない」こんな事を言われても、それでも耐えるしかない。これは私が決めた事じゃなくて、私の両親が決めた事だから。そう言って言い訳して、本当は…自分でも分かってる。だから余計に辛いんだって。「ほんとお前は何をやっても駄目だな」あの日もいつものように私に暴言を吐いていた。だけど、何故かあの時だけは無性に腹が立って、言い返してしまった。今思い返してみても、本当にどうしてなのか分からない。ただ、これ以上我慢したら、壊れてしまいそうだった。「私だって、結婚なんてしたくなかった!毎日毎日、そんな事しか言えないんですか!?」対抗なんてすると思わなかったのか、一瞬だけ驚いた表情をした。ような気がした。「っ、…お前が、出来損ないだから悪いんだ。誰に歯向かってるのか分かっているんだろうな」「両親のためとはいえ…もう、耐えられません。我慢の限界。私達、もう終わりにしましょう」「は、何言って、」「今まで迷惑ばかりかけてし