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第4話

Auteur: ハカリ
病室で、明日香は一睡もできず、夢と現実が混ざり合っていった。

何が現実で、何が夢なのか。彼女は必死でそれを切り離そうとした。

あの結婚式での屈辱的な光景、ずっと前のことのはずなのに、今まさに起きているかのように鮮明だった。翔太の瞳の奥にあったよそよそしさでさえ、心臓が握り潰されるほどリアルだった。

逃げ出そうともがいても夢の中に囚われ、期待と絶望を何度も繰り返していた。

今、翔太がベッドの傍らに座っていた。その指先は、明日香の頬の上でふわりと止まったまま、降りることはなかった。

彼が持ってきた、明日香が大好きだったはずのユリの花は、もうしおれかけていた。

ドアをノックする音と共に、女のすすり泣く声が聞こえてきた。

翔太は一瞬、はっとしてそちらに目をやった。

瞳だった。

彼はすぐにはドアを開けようとせず、「明日香、なぜこうなってしまったのか、俺にも分からないんだ」とこぼした。

明日香を愛している。それは間違いのない事実だ。

だが、瞳とどう向き合えばいいのか、彼には決められなかった。

ドアの外で、瞳の泣き声が小さくなっていった。

迷い抜いた末、彼は耐えかねたようにドアを開けた。

瞳は勢いよく彼の懐に飛び込むと、翔太の腰に縋り付いて泣きじゃくった。

「翔太、ここ数日全然会ってくれなかった……また私を捨てるつもりなの?」

翔太は身体をこわばらせた。視線を下に落とすと——

瞳のゆったりとしたトレンチコートの下には、なんとランジェリーしか身につけられていなかったのだ。

瞳は翔太の手を引き、自らの胸元に置くと、潤んだ瞳で訴えた。

「私を捨てないで……私を選んでくれるよね?一生、私のことを大切にするって、言って」

これまで抑えていた理性が、プツリと切れた。

彼は瞳を部屋に引き入れ、ドアが閉まると同時に激しく彼女の唇を奪った。

2人の情熱は激しく燃え上がり、この病室に明日香がいたことすら忘れてしまっていた。

聞こえてくる生々しい音に、明日香は朦朧としていた意識を呼び戻された。

「ねえ翔太……私と明日香さん、どっちが好きなの?」

翔太の動きが止まった。脳裏に明日香の顔がよぎった。

だがそれもほんの一瞬のこと。その僅かな罪悪感は、目の前の欲望にあっという間に飲み込まれた。

これで最後だ。明日香が目を覚ましたら、心を入れ替えて彼女と結婚し、真っ当な生活を送ろう。

そう自分に言い訳しながら、彼は迷いなく瞳のわずかな布地を乱雑に引き裂き、低い声で応えた。

「お前だ」

その軽い一言が、数え切れない細い針となって明日香の心臓を刺し貫いた。

明日香の身体は止まらない震えに見舞われ、心拍モニターがけたたましい音を立てた。

機器のアラーム音と、彼女の夫が他の女と抱き合う吐息が重なり合った。

そんな中、翔太の小さなつぶやきが聞こえた。「ごめん……」

明日香は笑いたくなった。

その「ごめん」は、こんな場所でしか情事ができず、一生日陰の存在でしかいられない瞳に向けられたものなのだろう。

彼女はまた、翔太との過去を思い出した。

彼は自分の好きなものなら何でも覚えていた。自分自身さえ忘れていたような記念日に、もう売っていないはずのチョコを探し出してくれたこともあった。

ただ自分が「食べたい」と一言、こぼしただけだったのに。

「結婚するまではそういうことはしたくない」と言えば、翔太は絶対に無理強いなんてしなかった。

それほど優しかった彼が、よりにもよって今まさに、別の女の体の上で甘い言葉を囁き尽くしているのだ。

「もっと優しくして、翔太。お腹の子がびっくりしちゃうわ」

付き添い用ベッドが軋む音と押し殺した喘ぎ声が、夜の病室に異常なほど耳障りに響いた。

ベッドの上の明日香は、枕を濡らす涙を必死に押し殺していた。

梨花がご機嫌にスマホをかけながら、病室のドアを静かに押した。

「明日香さんがそろそろ目を覚ますかもって、担当医から連絡があったわ……」

言い終わる前に、目の前の恥知らずな2人の姿に言葉を失い、凍りついた。

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