愛人を家に連れ込んだ夫を刑務所送りにした話
妊娠が判明したその日、私・吉野柚木(よしの ゆずき)は、何気なく夫・高城渉(たかぎ わたる)の車載レコーダーを確認すると、映し出されたのは――彼と、あのヨガインストラクターとの、車中での情事だった。
画面の中の渉は、私が聞いたこともないような卑俗な言葉を、興奮に任せて吐き散らしている。
映像を見せて問い詰めた。彼は一瞬たじろいだが、すぐに言い訳めいた口調に変わった。
「医者に言われただろ?妊娠の安定期まではダメだって。君と赤ちゃんのことを思えばこそ、外で解決したんだ!
所詮はその場限りの遊びだよ。俺の心はいつだって、君だけに向いているんだから……」
この、開き直ったような口ぶりに、吐き気がこみ上げてきた。
この腹の中の命を、私を縛る鎖にしようというのか。
そっと手を下腹に当て、俯いたまま薄く笑った。
「うん、わかった。信じるから」
遊びたいなら存分に遊べばいい。私が、とことん付き合ってやる――心の中で、静かに、そう呟いた。