七年の嘘、愛も憎しみも虚しく
結婚して七年間、夜を共にするたびに、私は仏壇の前で朝までひざまずいていなきゃいけなかった。
「これは真夏への償いのためだ」そう言ったのは、夫の相澤嘉山(あいざわ かやま)だ。
また義母の相澤夫人に命じられ、夫のもとへと向かったある夜のこと。ふと、廊下で彼の兄弟たちの話し声が耳に入った。
「さて、今年で時雨(しぐれ)は何度目の体外受精だ?あいつマジで必死だな」
「まあ……本人は知らないんだろ?嘉山の子どもなんか、一生できるわけないのにな」
嘉山が冷たく鼻で笑った。「バカだよな。毎回終わったあと、俺がわざわざ牛乳飲ませてんのに。何年もずっとピル飲まされてて妊娠できるわけないだろ?」
「あいつが体外受精で苦しんでんのも、全部真夏のためにやってんだよ。あれは、罰だ」
私は虚しく笑い、その会話を録音してそのまま嘉山のお爺さん――相澤当主に送った。
「私はもう、相澤家に跡継ぎを残す運命にはない。だから、もう、私を自由にしてくれないか?」