十年前に戻った私は三度も命を救ってくれた夫との縁を切ることにした
初恋の相手を亡くした伊織曜(いおり よう)は十年もの間、私を憎み続けた。
どれだけ尽くしても、返ってくるのは冷たい視線と、「本当に償いたいなら、死んでくれ」の一言だけ。
それでも、あの日、暴走トラックが突っ込んできた瞬間、私を庇って血まみれになったのは、曜だった。
最期の瞬間、息も絶え絶えに私をじっと見つめて、曜はかすれた声で言った。
「もし、お前と出会ってなければ......よかったのに」
葬儀で、義母は泣き叫んでいた。
「曜と芽依を一緒にしてあげればよかった!無理にあんたと結婚させなきゃよかったのに!」
義父の視線は、まるで刃のように鋭くて冷たかった。
「曜はお前のために三回も命をかけたんだぞ!あんなにいい子が......なんで、お前じゃなくて、あの子が......!」
誰もが、私と曜の結婚を後悔してた。私自身でさえも、そうだった。
ぼろ雑巾のように追い出された葬儀の帰り道、私はもう、生きてる意味すらわからなくなっていた。
それから三年後――
時をさかのぼるタイムマシンが現れて、私は過去に戻ることになった。
今度こそ、曜との縁は全部断ち切るって決めた。誰の心にも後悔が残らない世界を、私が作ってみせる。
今度こそ、曜のそばを離れて、彼に自由になってもらうんだ。