花火ほど鮮やかじゃなくても
「沙耶、今日の参観日は、真美さんも一緒に行くから、君は行かなくていいよ」
白川達也(しらかわ たつや)の隣には、知的で上品に着飾った香坂真美(こうさか まみ)が立っている。
白川沙耶(しらかわ さや)はスカートの裾を握りしめ、学校の参観日のためにわざわざ支度を整えていたことを言い出せずにいた。
しかし、どんなに努力しても、真美の前に立つと、自分が色あせた存在に思えてしまう。ただそこにいるだけの影のような――そんな自分を思い知らされるだけだった。
息子の颯太(そうた)が五歳になったとき、達也は高い報酬で育児コンサルタントの真美を家に招いた。
それ以来、この家にはもうひとりの「女」がいる。
沙耶と達也の結婚生活も、いつの間にか「三人で歩むもの」に変わっていた。
最初は、沙耶の貧しい家柄を気にせず、家族の反対を押し切ってでも彼女を妻にしたいと決意してくれた達也。
結婚後、彼女の家柄を侮辱するような噂話が聞こえれば、達也は必ず徹底的に相手に報復した。
沙耶は信じていた――たとえ世界中が自分を見下しても、達也だけは絶対に自分を見下さないと。
だが、真美が家に来てから、すべてが変わった。