この一生も無事でありますように
目が見えなくなってから、私は一ノ瀬舟賀(いちのせ しゅうが)がくれたスマートイヤホンに頼って生きていた。
舟賀が破産した日、イヤホンから突然、冷たい機械的な声が響いた。
「宿主様、自己犠牲任務を達成すれば、一ノ瀬舟賀を再び成功させることができます」
無能な人間になりたくなかった私は、必死に任務をこなした。
システムが、私に熱いコーヒーを自分自身にかけるよう命じた。その時、舟賀は怒鳴りつけた。
「桑島玲音(くわしま れいね)、いつまで狂ったふりを続ける気だ?」
システムがクラブで投資家に土下座するよう指示した。すると、舟賀は私の首を掴み、息もできないほど強く握りしめた。
「金のためなら、尊厳まで捨てるのか?」
私は涙ながらに訴えた。「舟賀、今、任務をしているの。あなたを助けるためなのよ」
すると彼は私のイヤホンを引きちぎり、床にたたきつけた。
「嘘ばかり!お前のような見栄っ張りの女、消えてしまえばいい」
その瞬間、世界は深い静寂に沈んだ。
けれど、脳裏に最後の機械的な声がこだました。
「最終任務を発表します。屋上から飛び降り、あなたの魂を捧げれば、一ノ瀬舟賀は千億の資産を手に入れます」
私は、ふっと笑った。手探りで屋上の手すりによじ登りながら。
「舟賀、任務、完了だよ。お幸せに」