跡継ぎのない親王様に嫁いだら、幼馴染は絶望に堕ちる
姉が認知症になった後、原田邸との縁談は私に回ってきた。
憧れの少年に嫁げると胸を高鳴らせていたが、祝言の夜、彼は寝所に現れなかった。花嫁をひとり置き去りにするなど前代未聞の恥辱。翌日には噂が広まり、私はみんなの笑いものとなった。
やがて私は、姉が抱える秘密に気が付き、彼女に帯で首を絞められ、井戸へと突き落とされ、そのまま命を落とした。
次に目を開けたとき、私はまだ縁談を取り交わした日にいた。
原田隼人(はらだ はやと)は、認知症を患った姉を抱きかかえ、その指先にそっと口づけた。
「蛍、どんな姿になっても、俺の最愛の女性だ」
私は迷わず決心し、姉と隼人を後にして、跡継ぎを持つことができない親王の縁談を受け入れた。
今度こそ、皆の前で姉の秘密を暴き、二人に幸せな未来を歩ませはしないと、そう決意した。