結婚8年目、指輪を他の女に贈る夫に未練はない
一ノ瀬柊也(いちのせ しゅうや)が主演男優賞を受賞した夜、私・一ノ瀬紬(いちのせ つむぎ)は控室の隅で、彼の99回目の熱愛スキャンダルに対応していた。
記者が「このトロフィーを真っ先に見せたい相手はいますか?」と尋ねると、彼は穏やかに微笑み、こう答えた。「長い間、僕を待ち続けてくれた人です。そして、その人を長い間待たせてしまったことを、ずっと後悔していました。このトロフィーは、その人に最初に見せたいです」
陰の中に立っていた私の胸が、小さく跳ねた。
なにしろ、私たちは8年間も内密に結婚しているのだから。
彼がまだ売れていなくて苦労していた頃、私は母の遺品を売って、彼の演技のレッスン代を工面した。
彼がネットで大炎上した時、私は徹夜で釈明文を書き、監督に頭を下げて彼を降板させないよう懇願した。
その後、彼は少しずつ人気を得るようになったが、私の存在は彼にとって隠しておきたい過去になってしまった。
彼は「主演男優賞を取ったら、君のことを公表するよ」と言った。
私はてっきり、今夜こそ8年越しの約束が果たされる時だと思った。
授賞式がまだ続いている中、私は柊也のコートを届けるために彼の控室へ向かったが、そこでマネージャーと彼の会話を聞いてしまった。
「浅倉さんが泣いてるんだよ。君が彼女のことを世間に知らせるって約束したはずだって」
柊也はしばらく沈黙した後、こう答えた。
「萌香には借りがある。僕があの日、紬と入籍するために萌香の父親の最期の電話に出られなかったせいで、萌香はずっと僕を憎んでいるんだ」
「じゃあ、紬さんのことはどうするの?」
彼は言った。「紬は