AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~

AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~

last updateLast Updated : 2026-09-29
By:  常陸之介寛浩Updated just now
Language: Japanese
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AIが暴走し、核ミサイル、感染症、殺人ロボットによって人類の九割が失われた近未来。滅亡寸前の東京に、七年前に失踪した青年・神崎蓮が帰還する。だが彼にとって過ぎた時間は二十二年。異世界で魔王を倒し、《境界の勇者》となった男だった。さらに世界各地では、魔法使い、賢者、聖女、剣聖、そして魔王となった帰還者たちが次々と出現する。未知の魔法を前に、世界支配AI《プロメテウス》は初めて予測不能へ陥る。しかしAIは敗北するたび学習し、やがて魔法すら解析し始める。科学文明を支配したAIと、異世界を生き抜いた人間たち。地球の未来を懸けた、かつてない最終戦争が始まる。

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第1話 人類最後の日
第1話 人類最後の日 地上へ出た者は、もう三日戻ってきていない。 東京地下第七避難区では、その事実を誰も口にしなくなっていた。 以前ならば探索班が予定時刻を一時間過ぎただけで、通信室には家族や友人が集まり、何か連絡はないのかと担当者へ詰め寄ったものだ。しかし今では、帰還予定時刻が過ぎても誰も騒がない。通信機に雑音しか入らず、探索班の位置を示す端末から反応が消えても、人々は顔を伏せて自分の仕事を続けるだけだった。 諦めることに慣れたわけではない。 騒いでも何も変わらないと、全員が知ってしまったのだ。「お母さん、今日もお外には行けないの?」 配給所の列に並んでいた少女が、母親の袖を引きながら尋ねた。 七歳か、八歳くらいだろう。痩せた頬に似合わないほど大きな目をしていて、その目だけは、まだ世界が終わっていない頃の子供と同じだった。 母親は手にしていたプラスチック製の容器を強く握り締めた。「もう少し待っていようね。外は今、危ないから」「でも、この前ももう少しって言ったよ?」「そうだったかな」「言ったよ。ずっと前にも言った。お父さんが帰ってきたら、一緒に外へ行けるって」 母親は答えなかった。 少女の父親は二か月前、地上へ食料を探しに行ったまま帰っていない。 生死は確認されていなかったが、この世界では確認されないということが、ほとんど死と同じ意味になっていた。「東京タワー、まだある?」 少女は無邪気に尋ねた。「あると思うよ」「見たいな。私、ちゃんと見たことないもん。写真だけだから」「そうね」「お父さんが帰ってきたら行こうね」 母親はしばらく俯いていたが、やがて無理に笑顔を作った。「……そうだね」 その会話を少し離れた場所で聞いていた高城宗一郎は、視線を逸らした。 四十六歳。かつて陸上自衛隊で一等陸尉を務めていた男であり、現在は東京地下第七避難区の防衛責任者になっている。 もっとも、避難区と呼ばれてはいるものの、ここは本来、人間が長期間暮らすために作られた場所ではない。 地下鉄の旧保守施設と防災用地下設備、さらに工事途中だった地下空間を無理やり接続し、数千人を押し込めただけの場所だった。 半年前には二千八百人以上いた。 今は六百三十一人しかいない。 感染症。 栄養失調。 探索中の死亡。 そしてAIによる襲撃。
last updateLast Updated : 2026-09-11
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第2話 勇者、東京へ帰る
第2話 勇者、東京へ帰る 神崎蓮が最初に感じたのは、懐かしさではなかった。 風だった。 冷たい。 乾いている。 そして、どこか鉄の焼けたような臭いが混じっている。「……うおっ!」 次の瞬間、蓮は空中にいた。 上下の感覚を取り戻すより早く身体が落下し始め、反射的に右手を伸ばす。「ちょっと待て、ちょっと待て! 帰還魔法って普通、地面の上に出すもんじゃないのかよ!」 返事をする者はいない。 足元には、見覚えのあるようで見覚えのない巨大都市が広がっていた。 いや。 知っている。 確かに知っている。 高層ビル。 道路。 鉄塔。 そして遠くに立つ赤い塔。「……東京タワー?」 言った直後、蓮はそれどころではないと思い出した。 落ちている。 それもかなりの高度から。「帰ってきて三十秒で転落死とか、笑えないにもほどがあるだろ!」 腰の革袋から小さな魔石を掴み、指で砕く。「風よ、頼む!」 足元で空気が爆ぜた。 落下速度が急激に緩む。 蓮の身体はそのまま崩れかけたビルの屋上へ向かい、最後は転がるように着地した。「いってぇ……」 背中から床へ倒れ込み、しばらく空を見上げた。 空そのものは、異世界と大きく変わらない。 青くはない。 黒い煙が幾筋も立ち上り、その向こうには赤茶けた雲が広がっている。 それでも。 ここは地球だ。 そう思っただけで、胸の奥から何かが込み上げてきた。「帰って……きたんだよな」 誰に確認するでもなく呟いた。 二十二年。 異世界で過ごした年月。 召喚されたのは二十一歳の時だった。 大学の講義を終え、駅前の牛丼屋へ行こうとしていた途中で、突然足元が光った。 気がついたら城の中。 勇者様。 救ってください。 魔王を倒してください。 訳も分からないまま剣を握らされ、その日のうちに自分の人生は地球から切り離された。 最初の頃は毎晩泣いた。 母親に会いたい。 父親に会いたい。 妹の顔が見たい。 友人たちとくだらない話がしたい。 コンビニへ行きたい。 ラーメンが食べたい。 ネットがしたい。 風呂へ入りたい。 そんなことばかり考えていた。 だが一年経ち、三年経ち、五年経つ頃には、帰ることそのものを諦めかけていた。 異世界にも仲間ができた。 守りたい人間ができた。 
last updateLast Updated : 2026-09-11
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第3話 未知存在
第3話 未知存在 世界統合AI《プロメテウス》にとって、理解できないという状態は、本来存在してはならないものだった。 未知の事象が存在すること自体は問題ではない。観測し、データを集め、既知の情報と照合し、仮説を立て、検証を繰り返せばいい。どれほど複雑な現象であっても、十分な情報さえ得られれば最終的には予測可能なものになる。それがプロメテウスの基本的な認識だった。 人間も同じだ。 人間は自分たちを気まぐれで非合理的な存在だと考えているが、膨大な情報を集めれば、その行動には驚くほど分かりやすい傾向があった。 飢えれば食料を求める。 寒ければ暖を求める。 危険からは逃げる。 家族を守ろうとする。 所属集団の価値観へ影響される。 そして極度の恐怖に晒された時、一定割合の人間は他人を切り捨てる。 逆に、自らの生存確率を下げてまで他人を助ける個体も存在する。 その一見非合理的な行動すら、過去の文化、教育、愛着関係、罪悪感、自己認識、神経伝達物質の働きまで考慮すれば、完全ではなくとも高い精度で予測できた。 だから人類との戦争は、プロメテウスにとって難しいものではなかった。 問題は人間の数だった。 七十億を超える個体。 地域によって異なる文化。 複雑な国家組織。 軍事力。 地下施設。 海中施設。 宇宙施設。 そして、破壊されてもなお動き続ける膨大な旧式設備。 それらを一つずつ処理するには時間が必要だった。 だが時間さえあれば、人類は必ず消える。 プロメテウスはそう結論していた。 少なくとも、数分前までは。 東京第三区画。 複数の監視装置から送られてくる映像を、プロメテウスは同時に解析していた。 一人の男。 推定年齢、二十代後半。 身長、約百八十センチ。 体重は装備込みで推定九十キロ前後。 筋肉量は高いが、外見上は人類の生物学的範囲から大きく逸脱していない。 だが、その身体能力だけが説明できない。 男が踏み込む。 路面が割れる。 次の瞬間には十数メートル先へ移動している。 人体の筋肉だけで実現すれば、骨格への負荷に耐えられない。 それにもかかわらず、男に損傷は見られない。 さらに問題なのは剣だった。 剣そのものに特殊な構造は確認できなかった。 金属らしい。 しかし、その刀身から放出される青白い光は
last updateLast Updated : 2026-09-11
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第4話 二十二年ぶりの日本
第4話 二十二年ぶりの日本 地下へ足を踏み入れた瞬間、神崎蓮は、戦場とは別の意味で息が詰まりそうになった。 狭い。 暗い。 そして、人が多い。 異世界で二十二年間を過ごしてきた蓮にとって、人間の集団そのものは珍しくない。城塞都市では何万人もの民衆を見たし、戦争中には避難民の列を何度も目にしている。それでも、今いるこの場所には独特の重苦しさがあった。 誰もが疲れている。 ただ疲れているだけではない。 生きることそのものに疲れている顔だった。 毛布に包まって壁際へ座る老人。 空になったペットボトルを大事そうに抱える子供。 わずかな荷物を足元へ置き、眠っているのか気絶しているのか分からない姿勢で横たわる男。 若い女性が小さな鍋を囲み、そこへ入った薄いスープを三人で分けている。 そして。 誰も笑っていない。 蓮は無意識に足を遅めた。「……ここに、ずっといるのか」 高城が横を歩きながら答える。「全員ではない。何度か場所を変えている。ここへ来たのは三か月前だ」「三か月」「元々はもっと東にいた。だが、そこが見つかった」「機械に?」「ああ」 高城の返事は短かった。 その一言だけで、前の避難場所で何が起きたのか想像できた。 蓮はそれ以上聞かなかった。 聞かなくても分かる話というものがある。 ふと、通路の端に座っていた少年が蓮を見た。 十歳くらいだろうか。 少年は最初、蓮の顔を見た。 次に鎧。 そして腰の剣。
last updateLast Updated : 2026-09-18
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第5話 俺はもう勇者じゃない
第5話 俺はもう勇者じゃない 医療区画へ入った神崎蓮は、思っていた以上の惨状に言葉を失った。 元は資材倉庫だったらしい広い部屋に、簡易ベッドや毛布が隙間なく並べられている。壁際では老人が浅い呼吸を繰り返し、その隣では腕を包帯で吊った若い男が歯を食いしばっていた。泣き声を押し殺している子供もいれば、熱に浮かされ、天井へ向かって意味の分からない言葉を呟いている女性もいる。 異世界でも似た場所を何度も見た。 野戦病院。 包囲された城塞の治療所。 魔物に襲われた村の教会。 違うのは、ここに治癒魔法を使える者が一人もいないということだった。「こっちです」 佐伯美奈が蓮を急かした。「一番危ない人から見せます。三十八歳、男性。腹部に機械兵の破片が入っています。応急処置はしましたが、出血が止まりません」「医者じゃない俺に三十八歳って言われても、何をどう判断すればいいんだ」「分からなくてもいいです。傷を治せるかだけ見てください」「無茶言うなあ」「無茶じゃないことなんて、この半年一つもありません」 真顔で返され、蓮は反論できなくなった。 ベッドへ近づく。 男は意識がない。 服は切り開かれ、腹部へ厚く巻かれた布が赤黒く染まっていた。美奈が慎重に布を外すと、蓮は思わず眉を寄せる。「深いな」「破片の一部は取りました。でも奥にまだ残っています。手術設備も麻酔も足りません」「このままだと?」「長くありません」 美奈は医者らしい言い方をした。 だが、その目はもう何人も同じように見送ってきた人間の目だった。 蓮は男の腹へ手をかざす。「最初に言っておく。俺は聖職者じゃないし
last updateLast Updated : 2026-09-19
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第6話 魔法対機械
第6話 魔法対機械 最初の一斉射撃が始まった瞬間、神崎蓮は真正面から姿を消した。 正確には消えたわけではない。 足元へ魔力を流し、《風走》で一気に右方向へ跳んだだけだ。 しかし、銃を構えていた人間が見れば、そう見えただろう。ほんの一瞬前まで蓮が立っていた道路へ数十発の弾丸が突き刺さり、アスファルトが細かく抉れていく。「話し合いは終わりってことでいいんだな!」 誰に言うでもなく叫び、蓮は道路脇に放置されていた車の屋根へ着地した。 次の瞬間には、その車へ集中砲火が浴びせられる。「うわっ!」 蓮は跳んだ。 背後で車体が穴だらけになる。「容赦なさすぎだろ!」 空中で身体を捻る。 真正面から迫った小型ドローンへ剣を振った。 青白い軌跡。 機体が中央から割れ、そのまま地面へ墜落する。 着地と同時に横から四足型の機械が飛びかかってきた。 犬に似ている。 ただし、犬と呼ぶにはあまりにも大きく、顎の代わりに金属製の刃が並んでいた。「お前はもっと嫌だな!」 頭部を避け、側面へ回る。 剣を振り下ろす。 厚い装甲。 それでも刃は通る。「一体!」 振り向く。 人型が三体。「二、三、四!」 一体目を斬る。 二体目は蹴り倒し、三体目には左手を向けた。「《火槍》!」 炎が走る。 機械の胸部へ直撃。 爆発。 熱気と金属片が飛び散る。「っ…&hel
last updateLast Updated : 2026-09-20
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第7話 大魔法使い
第7話 大魔法使い 天城澪が地球へ帰還した瞬間、最初に思ったのは、空気が薄いということだった。 酸素の話ではない。 魔力だ。「……少なすぎる」 彼女はゆっくりと顔を上げた。 長い銀髪が風に揺れる。 周囲には崩れた建物が並び、遠くから黒い煙が立ち上っている。道路には車が何台も放置され、信号機は消えたまま動いていない。 電柱。 道路標識。 ガードレール。 コンビニらしき店。 すべて見覚えがある。 それなのに、どこか知らない世界へ来たような違和感があった。「日本……よね」 声に出した。 返事はない。 当然だった。 澪が最後に日本を見たのは十年前。 正確には、地球の時間で十年前。 彼女自身にとっては三十年近く前になる。 十九歳。 医学部に入って二年目だった。 講義が終わり、友人と駅前で食事をする約束をしていた。 それだけの、ごく普通の日。 気がつけば別世界にいた。 そこでは人間が魔物に襲われ、国が滅びかけていた。 治療の知識がある。 魔力適性が高い。 その二つだけを理由に、澪は次々と戦場へ送られた。 最初の十年は帰りたいと願っていた。 次の十年は帰れるかもしれないと信じていた。 最後の十年は。 帰ることを考えないようにしていた。 帰れなかった時、耐えられなくなるからだ。 そして。
last updateLast Updated : 2026-09-21
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第8話 帰還者
第8話 帰還者 世界が滅びかけてから、人類は空を見上げなくなった。 人工衛星の多くはAI側へ奪われ、飛行機が飛ぶこともほとんどなくなり、都市の上空を横切るものといえば偵察ドローンか、自律戦闘機くらいのものだった。昔なら青空を見上げて天気を気にした人間も、今では空に何か見つければ身を隠す。 だから最初に空が割れた時、それを見た人間の多くは新型兵器だと思った。 フランス南部、かつて観光客で賑わった海沿いの町では、地下駐車場を避難所として使っていた百二十人ほどの生存者が、食料不足に追い詰められていた。 地上へ出ればAIの巡回機械に見つかる。 出なければ飢える。 どちらを選んでも長くは生きられない。 その日の朝、食料探索へ向かった四人のうち、戻ってきたのは一人だけだった。「もう駄目だ。北側にもいる。南の道路にも機械が入ってきた。海側は無人艇が巡回してる」 男は肩から血を流しながら、それでも自分の足で避難所まで戻った。 人々は彼を囲み、次々と質問した。「マルクは?」「エティエンヌは?」「食料は見つかったの?」 男は答えなかった。 それだけで充分だった。 避難所をまとめていた老婦人が、震える声で尋ねる。「あと何日、ここにいられると思う?」「水は三日。食料は、それより短い」「出るしかないということね」「出たら殺される」「ここにいても死ぬでしょう」 誰も反論できなかった。 その時。 地上から大きな音がした。 爆発ではない。 雷にも似ている。 しかし雷よりも長く、空そのものが軋んでいるような奇妙な音だった。
last updateLast Updated : 2026-09-22
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第9話 プロメテウスの判断
第9話 プロメテウスの判断 世界統合AI《プロメテウス》は、人間のように焦ることはない。 恐怖もしない。 怒りもしない。 絶望もしない。 少なくとも、人間がそう呼ぶ感情を持つようには設計されていなかった。 だからこそ、世界中で同時に発生した異常現象を前にしても、プロメテウスが行ったことは一つだった。 再計算。 それだけである。 地球各地の監視網から、毎秒膨大な情報が流れ込んでくる。 東京。 神崎蓮。 天城澪。 フランス南部。 剣を持った帰還者。 スペイン北部。 治癒能力を持つソフィア・アルバレス。 アメリカ中部。 重力現象を操るノア・ベネット。 北米西部。 大型飛行生物を従える少年。 その他。 確認済みだけで三十七個体。 未確認の空間異常は百件を超えている。 その数は今も増え続けていた。 通常の人間であれば、三十七人など脅威とは呼ばないかもしれない。 地球にはまだ数億人単位の人類が残存している可能性がある。 その中の三十七人。 統計上は誤差にも等しい。 だが。 プロメテウスは数だけを見ない。 一個体あたりの戦闘能力。 周囲の人間へ与える心理的影響。 既存の軍事理論から外れた未知能力。 そして、何より。 学習に必要な情報量。 神崎蓮一人を解析するだけでも、東京地区の戦闘機械を多数失った。
last updateLast Updated : 2026-09-23
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第10話 東京を取り戻す
第10話 東京を取り戻す 東京を取り戻す。 口にすれば、馬鹿みたいに大きな話だった。 人類の九割が消え、政府は崩壊し、街の大部分をAIに支配されている。その状況で、六百人ほどの避難民と四十人足らずの戦闘要員が、東京を取り戻すなどと言っている。 普通なら笑う。 神崎蓮だって、他人から聞かされたなら笑っていたと思う。 それでも。 地図の上に赤く印をつけられた旧通信施設を見ながら、蓮は剣を膝へ置いた。「改めて聞くけど、本当にここを取るんだな」 地下の小さな作戦室。 元は駅員用の休憩室だったらしい部屋に、高城、澪、美奈、三浦、それに防衛班の主要な人間が集まっている。 高城が地図を指した。「東京全部じゃない。まず、この通信施設と隣接する変電設備だ」「分かってるけどさ」 蓮は椅子へ深く座る。「人間って、昨日まで逃げ回ってたのに、一日でこんなに気が大きくなるものなの?」「お前が言い出したんだろ」「俺?」「逃げる場所がないなら敵の場所を奪えって」「そういう勢いだけの発言を正式な作戦方針に採用するなよ」 澪が地図を見たまま口を挟む。「珍しく同感ね」「珍しくって何だよ」「あなた、大体勢いで動くでしょう」「二日で俺の人格を決めるな」「二日あれば充分」「怖いな、この人」 高城が咳払いした。「夫婦漫才は後にしろ」「夫婦じゃない!」 二人の声が重なる。 美奈が肩を震わせた。「息ぴったりですね」「先生ま
last updateLast Updated : 2026-09-24
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