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第5話

ผู้เขียน: Hayama
last update วันที่เผยแพร่: 2026-08-05 16:24:51

第2次審査の会場となる広々としたスタジオで、付箋と書き込みでボロボロになった台本をきつく握りしめていた。

今日のために、セリフの一言一句から相手の間の取り方まで、すべてを完璧に頭に叩き込んできた。

けれど、参加者たちがスタジオの中央に一列に並べられると、張り詰めた空気を切り裂くように監督の低い声が響いた。

「さて。さっそくだが、君たちが握りしめているその台本をすべて回収させてもらう」

スタッフが素早く動き出し、有無を言わさぬ手つきで参加者たちから次々と台本を没収していく。

「え……?」

「この台本を使った演技は、通過者のみで行う次回の第3次審査で行う。」

監督の言葉に、周囲から戸惑いのざわめきが起こる。

私も思わず息を呑んだ。

「なぜ、わざわざ課題台本を事前に渡し、今日まで徹夜して読み込ませたのか。それは、君たちが頭で作ってきた芝居を、ここで一度全て空にするためだ」

容赦のない言葉に、スタジオの空気が凍りつく。

「実際の現場では、直前の台本変更や想定外のトラブルなど日常茶飯事だ。完璧に準備したものを突如奪われた時、役者の本性が顔を出す。僕たちが見たいのは、予定調和の綺麗なセリフじゃない。追い詰められ、計算が狂った時にこそ剥き出しになる、感情の反射神経だ」

監督は手元のバインダーをパタンと閉じ、私たちに向かって告げた。

「つまり、今から君たちには即興芝居をやってもらう。テーマは、数年ぶりに再会した幼なじみと、解けない誤解」

ドクン。

心臓が、痛いほどの音を立てて跳ねた。

数年ぶりに再会した幼なじみ。

それは…。

震える視線を、審査員席へと向ける。

そこに冷静に参加者たちを観察していた悠と、ふいに視線が交差した。

この即興芝居で言葉を紡げば、果たしてどこまでが演技で、どこからが真実の感情になってしまうのだろうか。

「公平性を期すために審査は1人ずつ行います。桜田美羽さん以外は、一旦別室の待合室へ移動して待機してください」

スタッフの事務的な声が、凍りついたスタジオの空気を動かす。

私の名前が呼ばれ、肩が跳ねた。

心の準備をする時間すら与えられないまま、1番手という重圧が容赦なくのしかかる。

けれど、不思議と足の震えはなかった。

ざわめきが遠ざかり、スタジオの中が異様なほどの静寂に包まれていく。

「では、さっそく始めましょう。美羽さん。中央へお願いします」

大きく息を吸い込み、誰もいなくなった広いスタジオの中央へと足を踏み出した。

無数のカメラの冷たいレンズと、大人たちの鋭い視線が、一斉に私へと向けられる。

台本はない。考える時間もない。

今、私の中にあるのは、綺麗に作られたセリフではなく、この身に深く刻み込まれた痛みだけ。

私はギュッと拳を握り締め、審査員席に座る彼から目を逸らさずに、静かに顔を上げた。

「一ノ瀬さん、お願いします」

その言葉に、審査員席に座っていた悠が立ち上がった。

彼はこの即興審査があることを、当然知っていたのだろう。一切の表情を崩すことなく真っ直ぐに私のもとへ歩み寄り、数歩の距離を空けて向かい合った。

圧倒的なトップ俳優のオーラと、2年間の埋められない溝。

「状況を簡単に説明しよう」

監督が、私たち二人を交互に見ながら言った。

「設定は、もうすぐ取り壊しが決まっているかつて二人がよく通っていた思い出の場所。そこに別々の理由で訪れたら、数年ぶりに鉢合わせてしまった。という状況だ」

監督は少し言葉を区切り、さらに設定を付け加える。

「二人は仲のいい幼なじみだった。けれど、過去にある誤解があって決裂している。片方は『夢のために自分を見捨てて逃げた』と憎んでいて、もう片方は『相手の足手まといにならないため』に身を引いた。その誤解が解けないままの再会だ」

心臓が痛いほどの音を立てて跳ねた。

悠の茶色い瞳の奥に、隠しきれない痛みの色が走るのを私は見逃さなかった。

「そのあとの展開もセリフも、すべて君たちの自由に作ってくれていい。ただし、『お前にだけは、会いたくなかった』という悠のセリフからスタートだ。準備はいいかな?」

「はい」

台本のない即興芝居。

「よーい、アクション!」

監督のその合図とともに、悠のまとう空気がガラリと変わった。

私を射殺すような強い視線で睨みつけ、ギリッと奥歯を噛み締める。

「……っ、俺は、お前にだけは会いたくなかった…!」

心臓を直接抉られたような痛みが走る。

これが設定を与えられただけの即興劇だということは頭では理解している。けれど、彼の本心であることも痛いほど分かっていた。

けれど、それでも。私は、こうして悠に会えたことが嬉しかった。

ふっと、自分でも驚くほど自然に、口元が緩んだ。

無数のカメラのレンズが冷たく光る中、私は真っ直ぐに彼を見つめ返し、少しだけはにかむように笑って口を開いた。

「……元気そうね」

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