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3:出会い

작가: けもこ
last update 게시일: 2026-07-09 23:12:15

廉の母は、曾祖父が旧華族という旧家の出身で、自分たちの体裁を保つために、娘をペアールホテルグループを経営する一族に身売りのような形で嫁に出した。

その当時、高級ホテル志向を進めていたペアールが上流社会への足掛かりを得るためにそれを求めたのだった。

しかし、結婚後、大人しく自己主張をしない廉の母親は、婚家で散々に苛め抜かれていた。

夫である跡取り息子は、他に何人も女を作り、ホテルの経営に興味を示さず、経営者一家の推進力は衰える一方で、その責任すら嫁である彼女の責任にされていた。

マナー教室を開いていた綾香の母の元に、結婚後通って来ていたのだが、ある日、レッスンのふとした拍子に綾香の母は、廉の母の腕にいくつもアザがあることに気づいた。

「ねぇ、紫衣しえさん。あなた、どうしたの?これ」

「あ、私、動作が鈍いでしょう?よく転ぶんです」

困ったように笑いながら袖を伸ばして隠そうとする。綾香の母はその様子に違和を感じ、ずっと気にかけていた。

夏の初めに彼女から、しばらく教室を休みにすると連絡があり、その連絡が姑経由だったことが気になり、綾香の母は、電話のあった日にその家を訪ねた。

夏休みということで、たまたま、幼い綾香もついて行くことになった。

突然の訪問だったせいで、使用人と廉の母以外にはおらず、使用人を騙すようにして母は家に上がり込み、廉の母に会った。

その顔には目の周りに大きな黒いアザがあり、痩せた腕には古い黄色くなったものから最近ついたのだろうまだ赤く生々しいものまで複数のアザが見えた。

羽織ったカーディガンで、腕を必死で隠そうとする廉の母に、綾香の母は優しく話しかけた。

「紫衣さん、この家を出ましょう。私があなたを助けるわ」

「先生、そんな、無理です。私、働いたことも無いし、それに、廉はこの家の跡取りですから。私は離婚したら廉から離されてしまう。そんなの耐えられません。どうか、早くお帰りになってください」

そう言ってうつむく彼女に母はなおも説得を続けた。どうにかこの家から連れ出そうとするも、しり込みする彼女に、どうか勇気を出して、と母は説得し続けた。

「ダメです。先生。先生のご家族みんなにご迷惑をかけてしまう」

そう言って泣き崩れた彼女を母が慰めていると、綾香の背後から声がした。

「母さん。一緒にこの家を出よう。俺は、絶対に母さんについて行く。この家を継いだりはしない。高辻さん、お願いします。俺、必ず恩返ししますから、今は力を貸してください」

学校から帰って来て、会話を聞いていたのだろう。学生服を着た廉が立っていた。その時の廉は、まだ中学1年生だったのに、小学2年生の綾香にとって、その姿が随分と大人に見えた。

廉の言葉に背中を押され、その日の内に廉の母と廉は、我が家へとやってきた。廉の荷物は学生服と体操服と学生カバンだけだった。

「どうせしばらくは学校へ行けないし、外にも出ないからこれで十分だよ」

大胆な行動を軽く笑って話す廉に、ただただ、すごいお兄さんだ、と思ったのを覚えている。

そこからは、大人のやりとりがたくさんあって、正直細かいところを綾香は覚えていない。

正義感の塊である母は、マナー教室の他のご婦人方と、その後ろ盾であるセレブなご夫君を味方につけ、廉の母の離婚を戦い抜いたらしい。同じ教室に有名な離婚弁護士の方がいたことも幸いした。

慰謝料、養育費、婚姻費用をきちんと請求出来た上に、廉の親権はきっちり母親が得ることができた。

その後、廉の母は、料理の腕を買われ、高辻の家で住み込みで家政婦として働くことになり、廉も一緒に離れで生活することになった。

もともと、廉が通っていた中学は、都内でも有名な進学校で、その中でも廉は相当に優秀だった。

我が家に来た時には、近くの公立中学に転校すると本人が言っていたが、綾香の父が、それを猛反対した。

「ダメだよ、廉君。君のような優秀な子は学びを深めるべきだ。そうだな、私が君に奨学金を出すことにしよう。いずれ大人になって返してくれればいい。このまま学校を続けなさい」

綾香の2つ上にいる兄の孝也の、良い刺激にもなると考えたのだろう。

結局、廉は高校までその学校に通ったが、のちに父に聞くと高校は特待生として無償で通ったらしい。

高校時代には、時々、自宅を訪れる海外からのゲストの通訳なども担うようになり、いつの間にか父と一緒に家での社交を担うようになっていた。その合間に兄や自分の勉強を見てくれたりもした。

兄の孝也は、廉に心酔しており、父の思惑通り廉を見習って熱心に勉強にも励んだ。

綾香自身は、どうも理数系が得意になれず、せいぜい語学を普通の少し上くらいまでがんばって、就職も両親に促されるまま父の会社へと流れた。優秀な廉や兄を見ると、正直なところ、劣等感に苛まれる。

「廉くんも孝くんも何でそんなに勉強が好きなんだか。世の中もっと楽しいこといっぱいあるじゃん」

中学入試の勉強に辟易して、勉強を教えてくれている廉にそう愚痴ったことがある。廉は笑いながら、問題集の解説書でポンポンと綾香の頭を叩きながら、たしなめた。

「一生の内で自分が経験できることって少ないけど、先人が学んだことを本で読んで知れば、生きてる時間の何倍も経験したことになるんだ。それってお得だろう?」

正論だが、綾香の試験勉強のモチベーションはその言葉では上がらなかった。

高校卒業後、廉はなんとアメリカの大学のビジネス専攻へ進学し、飛び級で卒業した後に父の会社のアメリカ支社で働きながらMBAを取得した。

留学中に時々帰って来て顔を合わすことはあったが、見る度にかっこよくなっていく彼にドキドキしてしまい、次第に昔のように親しく話すことはできなくなった。

メキメキとビジネスの頭角を現し、アメリカ支社で支社長になった彼は、昨年、本社に戻り父の片腕となった。

しかし、社内でももっとも忙しい人物となってしまった彼に、同じ会社にいるとはいっても滅多に出会うことは無かった。

憧れの初恋のお兄さんは、いつの間にかとても遠い人になってしまっていた。

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    「お帰り、綾ちゃん。廉くんも。孝くんと彼女さんもお待ちかねだったのよ」上機嫌の母が出迎えてくれる。廉はそっと綾香の腰に手を回してさりげなく寄りそう。「ねぇ、綾ちゃん、孝くんの彼女って誰だと思う?」玄関からリビングに向かう途中で母が嬉しそうに問う。さっき、答えを聞いてしまったの、ごめんね、お母さん。綾香は、心の中でそう呟いた。リビングに入ると、窓際の長いソファに、孝也とエリカが並んで座っていた。 エリカが、綾香の姿を目にして緊張した様子で立ち上がる。「あ、綾香、この間は夕飯に付き合ってくれてありがとう」非の打ちどころのないようなこの人でも、こんなに緊張して不安そうになることがあるのか、とそう感じた。ずっと勝手な勘違いで打ち解けられずにいたことが、本当に申し訳なく感じた。「こちらこそ、誘ってくれてありがとうございました。また、食事に行きましょうね」心からの笑顔を向けて、そう告げると、エリカの顔が明るく輝いた。「あら、綾ちゃん、声が随分と変よ。風邪? それで寝坊したの?」夕飯の準備ができたと宮島さんが教えてくれたので、ダイニングへ移動する。「俺は、綾香を送って来ただけだから、これで失礼します」「え、そんなこと言わないで廉くんも一緒に食べましょうよ。宮島さんにもそのつもりで準備してもらったし」結局、廉も一緒に食卓につき食事をすることになった。書斎から出て来た父がいつになく寡黙に食事を取っている。とはいえ、いつものように会話のほとんどを母が仕切っていて、エリカが質問攻めにされてアワアワしているのを皆で微笑ましく見ているという晩餐だったのだが。食後のコーヒーを運ぶ手伝いをしようと席を立つと、一緒に廉もついてきた。 台所の宮島さんに、あとはするから、と伝えて下がってもらう。「トレーは俺が運ぶから。無理しないで」コーヒーのトレーを廉に運んでもらい、リビングに足を踏み入れると、ちょうど孝也が真剣な表情で父に話をしていた。「結婚を前提にして、彼女と一緒に暮らしたいと思ってる」孝

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