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23.*梅雨の長雨-恋慕-⑤

Author: 鷹槻れん
last update Last Updated: 2025-12-11 03:23:00

「な、のか……、それ……本当?」

それに呼応するみたいにタツ兄が私の名を初めてちゃんと愛称ではなく〝菜乃香なのか〟って呼んでくれて。

不安そうな問いかけにこくんとうなずいて見せたら、

「僕も……菜乃香に、さわりたい」

たっくんが、熱のこもった〝男の目〟で私を見詰め返してくれた。

***

「痛かったらすぐに言ってね? 私……そんなに上手くないかも知れないから」

お互いに、相手へ触れたいと意思表示をしてみたものの、タツ兄……たっくんは今、リハビリを要する不自由な身。

私は意を決して床へ降り立つと、たっくんの真正面に立って彼を見下ろした。

「な、のちゃん、……一体な、にを……」

するつもり?と続いたであろう彼の言葉を皆まで言わせずたっくんの前にひざまずくと、戸惑いの言葉とは裏腹。

ほんの少しきざし始めている彼の下腹部にズボン越し、そっと触れた。

「んっ……」

途端たっくんが眉根を寄せて可愛くあえぐから。

私はそれだけで自分の下腹部がキュン、とうずくのを感じた。

「今日は私が精一杯頑張るから……元気になったらたっくんの方から……めてね?」

責めてね、を照れ隠し。ゴニョゴニョと誤魔化すように早口で言って、ゆっくりと布地越しにたっくんのを撫で上げると、彼がふるりと身震いして。

「なんて……言ったの?」とか掘り下げてくるから「……ナイショ」って布地越し、たっくんの大切なところにチュッと口付けた。

「なのちゃ、それっ、……ビジュアル的にすげぇヤバイ」

ふわりと頭を包み込むようにたっくんの大きな手が髪を撫でて。

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