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第176話

作者: みそ煮
last update publish date: 2026-06-18 12:31:50

亮太の行動に、日菜乃はもちろん香織ですら驚きを隠せなかった。

(りょ、亮太が私を庇ったですって……!?)

結婚生活の間、亮太はどれだけ日菜乃の方に非があろうともいつも彼女を守り、香織を責め立てていた。そんな彼が突然自分を庇ったのだから、驚くのも当然だろう。

愛する妻ではなく、他の女を守った亮太に招待客たちもザワザワし始めた。彼がどれだけ前妻の香織を毛嫌いしていたかは有名な話だったからだ。

日菜乃は大きな目をまあるく開いて彼を見上げていた。信じられない、何を言っているのかと亮太に訴えかけている。

「社長、一体どういうつもりですか……?」

「……いい加減にしろと言っているんだ。いくら何でも、今回のお前の行動は目に余る」

「社長……?」

日菜乃の悲し気な表情を見てもなお、亮太は同情する素振りすら見せなかった。それだけ言い終えると、そのまま彼女から顔を背けて元いた場所へと戻った。

(変ねぇ……いつもなら私に対して勝手なことを言うなだの日菜乃を泣かせるなだの何だの言うはずなんだけど……)

てっきり罵倒されるだろうと思った香織は、呆気に取られていた。司会者は二人が呆然としている今がチャンスだと、
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    亮太の行動に、日菜乃はもちろん香織ですら驚きを隠せなかった。(りょ、亮太が私を庇ったですって……!?)結婚生活の間、亮太はどれだけ日菜乃の方に非があろうともいつも彼女を守り、香織を責め立てていた。そんな彼が突然自分を庇ったのだから、驚くのも当然だろう。愛する妻ではなく、他の女を守った亮太に招待客たちもザワザワし始めた。彼がどれだけ前妻の香織を毛嫌いしていたかは有名な話だったからだ。日菜乃は大きな目をまあるく開いて彼を見上げていた。信じられない、何を言っているのかと亮太に訴えかけている。「社長、一体どういうつもりですか……?」「……いい加減にしろと言っているんだ。いくら何でも、今回のお前の行動は目に余る」「社長……?」日菜乃の悲し気な表情を見てもなお、亮太は同情する素振りすら見せなかった。それだけ言い終えると、そのまま彼女から顔を背けて元いた場所へと戻った。(変ねぇ……いつもなら私に対して勝手なことを言うなだの日菜乃を泣かせるなだの何だの言うはずなんだけど……)てっきり罵倒されるだろうと思った香織は、呆気に取られていた。司会者は二人が呆然としている今がチャンスだと、間に割り込んだ。「し、新郎様もそうおっしゃっていることですし、お二人とも落ち着いてください」亮太が割って入ったことにより、香織と日菜乃はくだらない争いをこれ以上する気にはなれなかった。「……そうですね、私の発言が原因で場を混乱させてしまったようです」「……私もムキになりすぎました」二人は反省の弁を述べ、日菜乃は亮太の横へと戻って行った。香織はマイクを口元に近付け、スピーチを再開した。「……様々な経緯がありましたが、私は今日お二人をお祝いするためにこの場へやってきました」彼女が話し始めると、騒がしくなっていた会場がシンと静まり返った。香織はそれ以上、余計なことを言うつもりは無かった。時間が押している以上、さっさと終わらせるべきだろう。「――亮太さん、日菜乃さん。ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに」「……ありがとうございます、香織さん」「……」その言葉で香織は主賓スピーチを終えた。返事をしたのは日菜乃だけで、亮太は黙ったまま複雑な目で香織を見つめていた。(どういうつもり?私に罪悪感でも抱いているわけ?)香織はそんな彼の意味深な視線に完全無視を決め込み、そ

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    好き勝手言う香織にとうとう耐えられなくなった日菜乃は、彼女の前に立ちはだかった。よほど頭に来ているのだろう。いつもの愛らしい顔が般若のようになっている。(亮太が近くにいるってのに、気にしないのね)香織はそんな日菜乃を前に、余裕の笑みを浮かべていた。恐ろしいほどに毅然としており、優雅さすら感じるほどだった。「結婚おめでとうございます、日菜乃さん」「……自分が何を話したか、わかっています?」「ええ、もちろんですよ」香織は日菜乃にニコッと笑いかけた。全く動じていない彼女に、日菜乃の眉間にシワが寄った。「日菜乃さん、突然出てこられるだなんて……どうなさったのですか?」「香織さんがあまりにも勝手なことばかり言うものですから……」日菜乃は貼り付けたような不自然な笑顔で笑った。招待客がいる手前、理性を保とうと必死なのだろう。「勝手なこととは……何でしょう?」香織はわざとらしくきょとんと首をかしげた。日菜乃を煽るような行動だった。(何を言っているのかわからないわ。私がスピーチで話したのは全て本当のことで……)香織は何一つ嘘を言ってはいなかった。「香織さん、あのときのことまだ根に持っているんですか……私、正直幻滅しました。いつまでも過去のことをネチネチ言うだなんて……」「そういう性格なんですよ、私は」ハッキリとそう言い切ると、日菜乃は悲しそうに眉を下げた。「今日は私と亮太の結婚を心からお祝いしてくださると思っていましたのに……」「ええ、もちろんそのつもりで来ましたわ」――あなたが、大人しくしていたならね。香織は心の中でそう付け加えた。一方的にやられるだなんて、香織は絶対に黙っていない。「ですが、日菜乃さんがあまりにも私を馬鹿にするようなことばかりなさるので……」「……何のことでしょう?身に覚えがありません」「あんなことをしておいて、覚えていないとシラを切るおつもりですか?」二人の間に火花がバチバチと散った。「お二人とも、落ち着いてください……!」司会者が何とか止めようと慌てて間に入るが、二人は止まらなかった。このままではいつまでも式が進まない。しかし、香織も日菜乃も退くつもりは毛頭なかった。そんな二人を見かねたある人物が、間に割って入った。「――いい加減にしろ」不機嫌そうな低い声が割り込んだ。「亮太……?」「社長……!」

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    ――香織のその一言で、会場が凍り付いた。「私が亮太さんと結婚したのは、大学を卒業したばかりの二十二歳の頃です。私たちは元々大学の同級生で、私からのアプローチで亮太さんとの婚約が決まりました」「く、九条様……何をおっしゃっているのですか……!?」好き勝手言う香織に、司会者が思わず口を挟んだ。そういう反応になってしまうのも無理はないだろう。主賓スピーチとは、新郎新婦へのお祝いの言葉を述べるためのものなのだから。慌てふためく司会者を横目に、香織は言葉を続けた。「亮太さんとの結婚後、彼は私には指一本触れることなく、外で遊び歩いていました。朝まで家に帰ってこないことも多く、私たちはすれ違っていきました」亮太は顔を真っ青にし、日菜乃は鋭い目で香織を睨んだ。そんな二人を前に、香織は余裕の笑みを浮かべた。(ふふふ、私を見世物にしようとしたお返しよ)先に失礼な真似をしたのは日菜乃たちの方なのだ。大人しくスピーチをするような香織ではなかった。「そんなときに亮太さんが出会ったのが、まさに唯一愛した女性日菜乃さんです。彼女との関係が始まってからというもの、亮太は一切の女遊びをやめ、日菜乃さん一筋になりました!」「香織さん?何を言っているのですか?」しばらく黙って聞いていた日菜乃が、低い声で香織に尋ねた。(人が話している途中に割り込むだなんて、マナーがなっていないのね)笑みを浮かべているためわかりづらいが、日菜乃は相当頭に来ている。顔が引きつってピクピクしている。一方、横にいる亮太は青い顔で黙ったままだ。(まだ亮太の方が頭が良いのね)このような公共の面前で、感情を露わにするのはあまり褒められたことではない。亮太は前まで人前で平然と声を荒らげたり暴力を振るっていたが、今日はそのような気分ではないようだ。香織はそんな二人を煽るようにスピーチを続けた。「それから、日菜乃さんが妊娠し……亮太にとって初めての子を産みました。私はとっても悲しかったのですが、何も言いませんでした。亮太を愛していたので」香織は周囲の同情を誘うように、切なげに目を伏せた。その効果はてき面だった。元々かなりの美人な香織の哀愁漂う表情は、人々の心を簡単に動かした。「まぁ、何ということ……」「いくら何でも……香織さんが不憫だ」「略奪で結ばれたことは知っていたが……」香織の話に、招待

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    それからしばらくすると、式が始まった。香織はじっと席に座り、亮太と日菜乃の登場を待ち続けた。ご丁寧に新郎新婦を紹介するオープニングムービーから始まり、香織は冷めた目で二人の動画を眺めた。(とんだ茶番ね……さっさと終わらないかしら)ムービーが終わると、司会者のアナウンスが流れた。「――新郎新婦のご入場です」その一言で、招待客たちが入口に視線を向けた。大きな扉がゆっくりと開いたかと思えば、腕を組んだ二人が入ってきた。真っ白なタキシードに身を包んだ亮太と、その横で微笑む日菜乃。(あらあら、今日の日菜乃は一段と華やかね……あんな事件を起こした張本人だとは思えないほど)白いウエディングドレスを着た今日の日菜乃はとても美しかった。彼女の着ているドレスはスカートの部分に華やかな縦のフリルをあしらっており、大きなパフスリーブの袖部分が印象的な可愛らしいものだった。全体的にレースを施し、髪の毛は低めの位置でシニヨンにまとめている。ふわっとボリューム感を出す髪には、花のベッドドレスが散りばめられている。「わぁ……とっても綺麗な花嫁さんね」招待客からは歓声の声が上がった。男性は主に日菜乃を、女性は亮太をそれぞれ美しいと褒め称えた。香織は自分を差し置いて幸せになろうとしている二人を見ても、今さら何とも思わなかった。ただ、気になる点が一つだけ。(……愛する女が横にいるってのに、どうしてそんな顔をしているのかしら)バージンロードを歩く亮太の表情が、何故か曇っていた。隣で愛らしく微笑む日菜乃とは打って変わって、彼は入場してきてからずっと暗い顔をしている。誰とも目を合わせることなく、視線を伏せたまま歩いている。よく見ると目の下にクマがあり、顔色が良くなかった。しまいには、横にいる日菜乃を全く視界に入れていない。(マリッジブルーってやつ?亮太にもそういう気持ちがあったのね)香織は特に気に留めることもなく、式を見守り続けた。「日菜乃さん、とっても綺麗ですねぇ」「……」横にいるのが新郎の元妻であることに気付いていないのか、隣に座っていた女性がそう声をかけた。香織はニコッと笑って答えた。「ええ、そうですね。女の私でも見惚れてしまいそうです」彼女が答えたその瞬間、すぐ近くを歩いていた亮太の視線が一瞬だけチラと香織に向けられた。「……!」彼と目が合い、彼女はドキ

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