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【55】紫野との旅行

Auteur: 猫宮乾
last update Dernière mise à jour: 2025-08-16 19:40:21

「なぁ、旅行いかないか?」

 紫野に誘われたのは、夏の事だ。

「時島と二人旅って言うのも飽きただろ? たまには俺と。費用は出すから」

「いいって別に。自分で払う。それより、何処に行く?」

「壁に掛かってる絵画の模様が変化すると評判の宿」

「すごく行きたくないけど、見たいな、それ」

「だろ?」

 俺の言葉にクスクスと紫野が笑った。宿の名前はKホテル――T県K市の駅前にあった。それほど大きな街ではなく、はっきり言ってしまえば廃れていた。

 二人で特急電車に乗り、珍しく駅弁を買ってみた。

 電車に乗っている最中、高階さんからメールが着た。

 ――『今夜空いてる?』

 オカルト話に思考が傾いていた俺は、それとなく紫野を一瞥する。

 紫野の方はどういうつもりなのだろう。二人で同じ部屋だったら、その、ヤるのだろうか。

 きっとそういう行為は、雰囲気なのだろうとは思うが、今更ながらに意識した。

 もう俺達は、気楽に旅行に、二人きりで行くなんて言う関係では、無くなってしまったのだろうか? それともこんな事を思案する俺の方が、考え過ぎなのか。

『今夜は友達と旅行で、K温泉に行ってます。お土産を買ってきます』

 そんな返事をして、俺は何とはなしに電源を切った。

 昔から、人前で携帯電話を弄るのはあまり好きではない。だが、多分それだけが理由では無かった。現実をありありと彷彿とさせられる事が、俺はあまり好きではないのだと思う。旅行の間くらいは、誰とも繋がらず嫌な事を忘れたいと願っていた。

「相手、誰?」

「紫野、お前は俺のカノジョか」

「左鳥相手なら、カレシにはなりたいけどな。なんか……怖い顔してたぞ」

「え?」

「俺の勘違いじゃない気がする。違うか?」

「そんな事無いって」

「じゃあ見せろって。別に良いだろ」

「何、急に」

「――俺じゃない左鳥の相手が、気になる」

「は?」

 俺は大きく首を捻りながらも、背筋が冷

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