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第11話 零れる赤の音色

مؤلف: 桜花桜餅
last update تاريخ النشر: 2026-04-29 07:00:00

 視聴覚室での凄惨な記録に精神を削られた僕たちは、死臭を振り払うように廊下を突き進んだ。

 大樹の顔は土気色に沈み、有栖は放心したように僕の袖を掴んでいる。彼女の瞳は、焦点を失ったガラス玉のように虚空を彷徨い、重いショックで意識の半分がどこか遠くへ置き去りにされているようだった。

「……もう、休んでる暇はねぇ。」

 大樹が、自分に言い聞かせるように枯れた声を絞り出した。

「次は音楽室だ。まだちゃんと見てないところ…。」

 有栖は、壊れた人形のように力なく頷くだけだった。

 赤い月光に照らされた彼女の横顔は、死後数日を経た死体のように白く、不気味なほど静かだった。

 そのあまりの脆さと儚さに、僕の胸は締め付けられる。かつて蜂蜜入りのお茶をくれたあの眩しい笑顔が嘘のようだ。守らなきゃいけない。

 僕が攻略を選択を間違えれば、彼女は本当に壊れてしまう。

 僕は握りしめた拳に爪を食い込ませた。この絶
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  • 桜の生贄   第14話 管理番号:サクラダアリス

    体育館へと続く大扉の前。逃げ場を断たれた行き止まりの廊下で、死神がその巨大な鎌を頭上高く振り上げた、その瞬間。 「っ……!」  横にいた有栖が、僕の腕を振り払って前に出た。  彼女がポケットから取り出したのは、小さな銀色の音叉だった。 音楽室の隠し扉の不気味な隠し通路を、死に物狂いで彷徨っていた時に瓦礫の山に半ば埋もれていたのを彼女がいつの間にか密かに拾い上げていたものだ。  有栖はそれを、渾身の力で叩きつけた。 キィィィンッ……!!鼓膜を直接針で刺し貫くような、甲高い共鳴音が廊下全体に炸裂した。停滞していた空気が激しく波打ち、鼓膜を震わせる。  殺人鬼の眉間がぴくりと歪み、大鎌を振り下ろそうとした腕が、岩のように硬直した。 「……ッ、チッ……!」  血のような赤い瞳が不快そうに細められ、殺人鬼は顔をしかめて呻く。 「耳障りな真似しやがって……!そういう小細工だけは頭が回るんだよなぁ、有栖……ッ!」  怒号とともに振るわれた刃が、僕らのいた場所の壁を深く裂き、砕け散った破片が礫となって頬を掠めた。  その光景を見て、僕は背筋に冷たい氷を押し当てられたような戦慄を覚えた。 (……間違いない。こいつ、さっきの歌声といい、今の音叉といい……異常なほど音に反応している。人間離れした聴覚で、僕らの呼吸音一つさえ聞き逃さず追ってきているんだ……!)  だが、その鋭すぎる聴覚こそが、今は唯一の隙となった。 「……走って!」  有栖の鋭い声に、美緒が弾かれたように顔を上げる。  我に返った僕は美緒を抱え直し、地を蹴った。背後では、殺人鬼がすでに大鎌を引き抜き、地を這うような動作で構え直している。 赤い瞳が、逃がさぬ獲物をむさぼる肉食獣の輝きを帯びて、再び僕らを射抜いている。 「今度は容赦しねぇぞ……!」  僕らは廊下を一気に駆け抜けた。  美緒を抱えた腕

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    あの封じられた鉄扉の先は、生きながらにして埋葬されたような、濃密な死の気配に満ちていた。  無数に枝分かれした隠し通路を抜け、肺が焼けるほど激しい呼吸を押し殺し、ようやく見覚えのある壁の隙間から這い出した先に。 「……戻って、きたの……?」  有栖の声は、震える赤い月光よりも脆く響いた。そこは、先ほどまでいた音楽室だった。 静まり返った室内には、不自然なほど濃厚な桜の香りと、それを塗りつぶすような時間が経った後のような血の錆びた匂いが混ざり合い、鼻の奥を不快感で支配していた。  だが、安堵はどこにもない。慌てて大樹が隠し扉を閉めると、中から響いていた殺人鬼の足音が慌ただしく別の方向へ遠ざかっていった。  その時、音楽室の隅にある古いスピーカーから、ざらついたノイズと共に歌声が流れ始めた。 それは歌というより、喉を切り裂かれた動物が最期に振り絞るような叫びに近しいものだった。ノイズの隙間から、誰かの咀嚼音のような生々しい音が混じり込み、鼓膜を汚していく。 「待って……この歌声……。」  有栖の瞳が鋭く光る。ただの音階ではない。 「ただの声じゃない。音階に合わせて、肖像画の目が動いてる……。」 並ぶ音楽家たちの瞳は、ただの絵の具ではなかった。  「見て、ユーリ……。あの瞳、濡れているわ。」と、指摘する有栖の震える声に僕が目を凝らすと、バッハやベートーヴェンの肖像画の眼球部分だけが、まるで本物の人間の眼球のように、生々しい光沢を放ってこちらを凝視していた。  旋律が「ド・ファ・ド・ソ」と繰り返されるたびに、並ぶ肖像画の瞳がギチギチと音を立て、一点を指し示している。 並ぶ音楽家たちの肖像画は剥き出しの眼が裏返るような鈍い音を立て、その視線はジッと一点に絡みついている。まるで、死者たちが僕たちの処刑を特等席で待ち構えているかのようだ。 死者たちの視線が一点に絡みつくたびに、僕たちのプライバシーという概念が、ナイフで薄く剥ぎ取られていくような不快感が全身を走る。 「……あそこだ!! 肖像画の視線が交差するスピーカーの中。大樹、あの中に僕たちの居場所を伝える何かがある!歌声が最大になる瞬間に叩き壊して!」  僕の指示が飛ぶ。 大樹は迷いなく黒板の裏のスピーカーへと足を振り上げた。 「三、二、一……今だッ!!」 

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    音楽室の壁と同化した隠し扉がまるで僕たちを誘うかのよう風が吹いている。  僕たちは顔を見合わせた。逃げ出したいという本能的な拒絶は、誰もが抱えていたが、ここで背を向ければこの廃校という巨大な胃袋に消化されるのを待つだけだ。 「……調べるしかないな。」  大樹の声は、地を這うように低く、逃げ場のない決意に満ちていた。  有栖は白く震える唇を強く噛みしめ、縋るように僕の腕を掴んだまま頷く。  扉の前に立つと、古い木材は死人の肌のようにじっとりとした湿気を含み、触れると心臓が凍るほど冷たい。錆びきった蝶番が、招き入れるように揺れている。 「……行くぞ。2人とも。」 ギィィィイ……ッとゆっくりと口を開いた闇は、単なる暗がりではなかった。  鼻を突いたのは鉄と腐敗した内臓が混ざり合う、むせてしまうほどの死の臭い。足元には薄い赤黒い粘液状の染みが広がり、赤い月光を吸い込んでどろりと光っている。 「……血だ。それも、新しい。」  僕の呟きが、闇に吸い込まれていく。  有栖が袖で口元を押さえ、胃液がせり上がるのを必死に堪えるような、潰れた声を漏らした。 「……奥から、風が来てる。この通路……別の地獄へ繋がってるんだわ。」  「新しい舞台かもな…。…?…なんでここに懐中電灯が…。」と、大樹が拾った懐中電灯を点け、その喉元を照らし出す。  そこには、内臓の裏側を思わせるような狭い石造りの通路が伸びていた。 壁には、指を血に染めて書き殴ったような、歪な子供の落書きがびっしりと残されている。  ≪こわい≫ ≪だして≫ ≪うたが、やまない≫ 「……子供が、ここに閉じ込められていたのか?」 僕は耳を澄ますと、メトロノームの無機質な音に混じって、歪な歌声が漂ってきたのを感じ取る。  それは、優しく子供を寝かしつける子守唄のようでもあり、あるいは首を絞められながら無理や

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  • 桜の生贄   第9話 残滓のゆりかご

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