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旦那様、帰還す

ผู้เขียน: yumemado
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2026-02-09 11:30:00

戦地から凱旋の馬車が門をくぐった。

黄金の鎧に青のマント。

背の高い男が降り立つと、屋敷中がざわめいた。

「お、お帰りなさいませ! 旦那様!!」

「うむ。……妻は?」

――沈黙。

家令が額の汗をぬぐう。

「えっと……奥様は、その……」

「まさか、病か?」

「い、いえ……」

「じゃあ、どこだ」

執事、侍女、料理長、全員が顔を見合わせる。

誰も言葉を出せない。

「まさか――病死でもしたのか?」

「ご、ご健在です!」

「では、なぜここにいない!?」

「……その、旦那様と離婚、なさいました」

ドンッ! 机を叩く音が響いた。

「誰の許可でだッ!」

「……白い結婚ゆえ、教会の判断で……」

「教会の判断!? 妻の顔も知らん教会が!?」

旦那の声が屋敷中に轟く。

「――で、その妻とやらは、どんな顔だ!」

全員が硬直。

家令が、震える声で言った。

「えーと……ブルーの瞳に、ブロンドの髪で、女性です」

「そんなの、わかっている!!」

「それ以上の情報が……ございません……!」

旦那の顔が真っ赤になり、こめかみがぴくぴく動く。

「三年も結婚していて、家の誰も彼女の顔を見たことがないのか!?」

「……はい」

屋敷中、しーんと静まり返る。

外ではカラスが「カァ」と鳴いた。

「全員、目を洗って出直せぇぇぇ!!」

怒鳴り声が響く中、

旦那は拳を握りしめた。

「……俺の妻を探せ。どんな手を使ってもだ」

一方そのころ。

港町のコテージでは、

マルグリットが紅茶を飲みながらカーテン越しに光を見つめていた。

「うん、やっぱりこのレースで正解ね。

お昼はオムレツにしようかしら」

――その穏やかな午後の空の下、

“国家規模の奥様捜索令”が発令されたとは知らずに。

行方不明の奥様、町で話題になる

市場の通りを歩いていると、

パン屋の奥さんがひそひそ声で話していた。

「ねえ聞いた? なんでも、行方不明の“貴族の奥様”がいるんだって!」

「戦地から帰った旦那様が、たいそうお怒りで、国をあげて捜索中らしいわよ」

「ほら、この町にもいるかもって噂なのよ」

マルグリットは立ち止まり、パンの袋を抱えたまま首をかしげた。

「……特徴は、わからないけど、女性、へぇ、どんな奥様なのかしら」

「ブルーの瞳で、ブロンドの髪で――」

「女性なんですって!」

「ふふ、それ、かなりの人類が該当するんじゃないかしら」

マルグリットは笑って、トコトコと歩き出す。

コテージに戻り、

お気に入りの紅茶を淹れる。

香りの良い茶葉をカップに注ぎ、

クロワッサンにいちごジャムをのせる。

「うーん、完璧。これで読書時間ね」

テーブルの上には図書館のカード。

今日、新しく借りてきた本の背表紙には

『白い結婚の真実』『夫婦契約の歴史』『再婚と誓約の書式集』の文字。

「……似たような話、あるかもしれないし」

ページをめくりながら、マルグリットは微笑む。

「私はもう、結婚解消になったからなぁ……

もし再婚するなら、今度は書類だけじゃなく、ちゃんと顔を見て決めようっと」

窓の外では、通りを走る伝令が叫んでいた。

「行方不明の奥様、目撃情報ありーーっ!!」って、誰も顔知らないはずなのに、

だがマルグリットの耳には詳細は、届かない。

カーテン越しの光と、ページをめくる音だけが、静かに部屋を満たしていた。

刺繍と自由と、知らぬ評判

街のあちこちで、まだ噂は続いていた。

「ねぇ、あの行方不明の奥様、ここの町に来てるんだって」

「まさか、貴族の綺麗な人? 昨日、花を買ってたわよ」

「でも、あの人は“結婚解消”って言ってたし……別人じゃない?」

「うーん、特徴、似てるんだけどねぇ」

――そう、マルグリットはすでに“奥様”ではなかった。

「私はもう、他人よ。他人!」

そう呟きながら、刺繍箱を抱えてコテージを出る。

暇を持て余していた三年間。

豪奢な屋敷で誰にも必要とされず、

唯一、心を慰めてくれたのがこの刺繍だった。

花の模様、鳥、ティーカップ、ハーブ。

色とりどりの糸を針に通し、ひと針ひと針、静かな時間を過ごしてきた。

今日、ようやく――その刺繍を売りに行く日だった。

街の小さな雑貨店。

陽気な女主人がカウンター越しに目を輝かせた。

「まあ、なんて繊細なの! この薔薇の陰影……まるで生きてるみたい!」

「ほんの趣味ですの」

マルグリットは照れながら笑った。

「趣味だなんて、とんでもない。これは売れるわ!」

店主はすぐに奥から帳簿を取り出した。

「これ、全部買い取らせて。しかもね、これからも作ってもらえない?

定期でお願いしたいの」

「まぁ、そんな……」

「高く買うわ。貴族のお嬢様が刺したって言っても通るくらい上品だもの」

マルグリットは少し驚いたように目を瞬かせた。

「……ありがとうございます」

店主はウィンクして言った。

「ね、これが“自由の針仕事”ってやつよ」

夕暮れ、コテージに戻る道。

風に花の香りが混じる。

マルグリットは包みを抱えながら、心の中で呟いた。

「誰かのためじゃなくて、自分のために針を動かすのって、いいものね」

紅茶とクロワッサンと、刺繍の糸。

屋敷では未だ「奥様どこ!?」と叫んでいるらしいが、

マルグリットの時間は、もう優雅に前へ進んでいた。

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