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第7話:仮面の使者と、開かれた鏡

ผู้เขียน: fuu
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-07-06 12:00:05

「じゃあ、改めて紹介するわ!」

エリシアが胸を張って言う。

テーブルの向こう側には、新たに国家入りした少年、ユスティアが無言で座っていた。

固い表情、まっすぐな背筋、だが端正な顔立ちとあどけなさの残る眼差し。

「この子、今日からうちの記憶管理官兼、国家のミステリアス枠です!」

「肩書きがアイドルみたいになってる……。」

カイラムが呆れた声を出すが、隣にいたネフィラはふふっと笑って言った。

「でもまぁ、いいバランスかもね。少し陰がある感じが、刺さる層には刺さりそう。」

「陰が……?“層”って……?」

ユスティアが戸惑ったように眉をひそめると、執事の一人がメモ帳を開いてこっそり呟いた。

「“中性的な容姿”と“守りたくなる雰囲気”……逆ハーレム適性、Sランク……っと。」

「なんの査定!?」

「うち、今ハーレム構築国家目指してますからね~。」

「だからって俺を巻き込むな!!」

ユスティアは顔を赤くして立ち上がる。

その様子にエリシアはにやにやしながら寄って行った。

「ふふん、でも否定しないってことは、意識してるってことね?」

「ち、違う!俺はただ任務として……!」

「顔が赤い~かわいい~。」

「くっ……この国家、敵よりタチが悪い……!」

◆◆◆

その日の夜、国家中枢メンバーによる会議が開かれた。

「仮面の使者が、他国から密かに派遣されたとの情報があります。」

ネフィラの報告に、空気が一気に変わる。

「“仮面”か……偽名と変装、そして記録に残らない存在。過去にも王都で数件、“改変の兆候”が現れたのは、やつらのせいか。」

ミィルが静かに言った。

「彼らの目的は記録の改ざんではなく、“鏡”の捜索……でしょうね。」

「鏡?」

ユスティアが応じた。

「魔王の遺産の一部……“真実の鏡”。映した者の“本来の記憶”を映し出す禁忌の道具。」

「じゃあそれを使えば、“誰が記憶を書き換えたか”も――。」

「映る。……が、使い方を誤れば、自我の崩壊も招く危険な代物だ。」

重くなる空気。

だが、そこでエリシアが声を上げる。

「でも、それが私たちの国を狙う理由なら――逆に利用できるかも。」

「利用?」

「“真実を守る国”って、言葉だけじゃ信じてもらえない。でも、“記憶を守る遺産”を守ってるってわかれば、他国との交渉材料になる。」

「なるほどな……うまくいけば、国際的な立場が逆転する。」

ネフィラが頷く。

「なら、その鏡を先に見つける必要がある。」

「……それが、“この国の建設地点”と関係してるとしたら?」

全員の目がユスティアに向いた。

「この土地――かつて魔王の城があった場所だ。鏡のありか、ここにある可能性が高い。」

エリシアは立ち上がった。

「決まりね。明日から、“地下探索チーム”を組んで調査開始よ!」

「まさか……また俺も……?」

「もちろん!宰相兼探検隊副隊長よ!」

「肩書きが増えていくのが一番怖い!!」

こうして、“鏡”の探索が始まろうとしていた。

その夜、エリシアはそっとユスティアのもとに近寄った。

「……ねぇ、ひとつだけ聞いていい?」

「なんだ?」

「“記憶を書き換えられた自分”って、怖くない?」

一瞬、彼の瞳に揺らぎが走った。

「……怖いよ。自分が自分じゃなくなるって、想像するだけで足がすくむ。」

「……でも、私がいるから。」

「……は?」

「もしあんたが自分を見失いそうになったら、私がぶん殴ってでも引き戻すから。」

「暴力前提!?」

「お約束よ、国家的に。」

ふっと笑ったエリシアの声は、確かに彼に届いていた。

そして、地下に眠る“真実の鏡”は、いま静かに目覚めの時を待っていた――。

◆◆◆

翌朝。グランフォード領、旧魔王城の地下。

「おっかしいわね~……地下って言ったらもっとこう、石畳とか、骸骨とか……」

「ファンタジーの偏見がひどいな?」

エリシア、カイラム、ユスティア、そしてネフィラの四人は、魔王城の地下を慎重に進んでいた。

魔王時代の遺構を再利用して建国したこの土地には、まだ踏破されていない“地下迷宮”が広がっていた。そして、そこに“真実の鏡”が眠っている可能性が高い――それが今回の目的だ。

「ふむ……この壁、魔力で封じられてますね。」

ユスティアが壁を指でなぞり、魔力の流れを読み取る。

「この紋章……“記憶守護”の結界か。なら、鏡はこの先だ。」

「よし、開けちゃいましょう!」

「そんなノリで――うわっ、開いた!?」

石壁が軋みながら開き、奥から風が吹き出す。

その瞬間、空気が変わった。

ひやりとした魔力。重く沈む空気。そして、部屋の中心に佇む、全身黒衣の仮面の男。

「――ようこそ、記憶の監獄へ。」

「なっ……!」

「“仮面の使者”……!」

ネフィラが低く叫ぶ。男は静かに歩み寄りながら、仮面越しに語りかける。

「ここには確かに、“真実の鏡”が眠っている。だが、解放は許されない。」

「なぜ?」

「お前たちは、“記憶の自由”を危険視していない。だから――抹消する。」

「上等よ、やってみなさい!」

エリシアが踏み込むより早く、男の手から闇の刃が飛ぶ。

だが、それを防いだのはユスティアだった。

「……君が守るのか?」

「“記録”も“記憶”も、人が生きた証だ。それを消すのは、誰であっても許さない。」

「その覚悟――見せてもらおう!」

男とユスティアが激突する。

魔力と魔力がぶつかり合い、地下空間が震える。

一方そのころ、ネフィラはそっと後方へと移動していた。

(鏡の位置……ここだ!)

部屋の一角、封印のかかった祭壇の奥。確かにそこに、銀色の枠を持つ鏡があった。

「見つけたわ。さて――どうやって守ろうかしらね。」

◆◆◆

「うおおおおぉおお!!」

「……その奇声、エリシアですね?」

「やる気の高まりを表す私の独自魔術“勝気炸裂波”です!」

「いや、ただの叫びなんだが!?」

エリシアの援護が入り、ユスティアが体勢を立て直す。

仮面の男がひるんだ隙に、ユスティアは叫んだ。

「……鏡よ、目覚めろ!記憶を映す者よ、真実を示せ!」

魔力が渦巻き、鏡が光りだす。男が怯んだ。

「まさか、鏡の制御権を……!?貴様、記憶の継承者か……!」

「だったら――退け!」

ユスティアの一閃が、仮面を打ち砕いた。

現れた顔は、驚くほど――“空っぽ”だった。

「……これは……顔が、ない?」

「記憶ごと“自我”を消された者か……。」

その場に静寂が戻る。

鏡の前で、ユスティアは静かに手を伸ばした。

「……映るんだろう?俺が“何者だったか”。」

鏡は彼の姿を映す。だが、次第にその像は崩れていき――

「なっ……俺が……二人……?」

そこには、微笑む双子のようなもう一人の自分。

そして、その肩に手を置く者の顔は――

「映らない……?」

「記憶が、消されてるのか……?」

「でも、ここから辿れるかもしれない。君の本当の過去、そして、“記憶改変の黒幕”の正体を……。」

エリシアがそっと微笑む。

「安心して。もう君は一人じゃないわ。……うちの国家、妙に同居人増えてきてるしね!」

「たしかに。逆ハーレム国家の宿命だな……。」

「何それ初耳!!」

笑い声とともに、仮面の使者は崩れ落ちた。

だが、鏡の中にはまだ多くの“真実”が隠されている。

そして――その奥には、まだ名も知らぬ“次の敵”が待ち構えていた。

——〈次話〉“刻まれし予言と、招かれざる客”

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