あの子が好きなら、勝手にどうぞ
結婚して八年。私はずっと、夫と幸せな日々を送っていると信じていた。だからこそ、たくさんのチャンスを捨ててきたのだ。
バレンタインデーの夜。私は心を込めて食卓を整え、夫の帰りを待っていた。だけど届いたのは、「残業するから遅くなる」という、たった一行のメッセージだけ。
私はいつも彼のために言い訳を探していた。きっと仕方のないことなのだろうと。でも、友人から送られてきた一枚の写真が、私の知らなかった夫のもう一つの顔を見せてくれた。
それはウェディングドレス姿の、見知らぬ女の子とのツーショット写真だった。キャプションにはこう書かれていた。
「巡り巡って、やっと十八の頃からずっと、ずっと結ばれたかった彼女と結婚できた」
写真の彼女は、とても幸せそうに微笑んでいた。でも、その女の子は、私じゃなかった。
私はもう、何もなかったふりをすることができなくなった。
人と人との縁なんてものは、きっと、こんな風に、すれ違いの中で静かに消えていくのだろう。