愛よ!風に乗れ
平井雄也(ひらい ゆうや)は、眠りについていた。
なのに、枕元に置いてあった彼のスマートフォンが、真夜中に突然何度も、明るく光った。
私は奇妙な気持ちになった。そっと、そのスマホを手に取った。
「ヴィヴィアン」という名前の女性からのLINEメッセージが、何通も届いているのだ。
最後のメッセージは、彼に【おやすみ】と告げていた。
雄也のスマホには、私の指紋も登録してある。結婚して二年、信頼と尊重を築いてきたからこそ、今まで彼のスマホを覗いたことなど一度もなかった。
彼のことはよく知っている。誠実で、むしろ人付き合いが苦手なくらいの男だ。浮気なんてするはずがないと、私は思っていた。
それなのに……どうしても気になって、ロックを解除するボタンを押してしまったのだ。
そして、この胸が締め付けられるような、開けてはいけないパンドラの箱を、開けてしまった。