三日の出張、息子の母は別人に
私は小林由衣(こばやし ゆい)、出張に出て三日目、長いあいだ静まり返っていた息子のクラスの保護者ライングループに、突然一人の女性保護者が入った。
音声メッセージを再生すると、聞き覚えのない甘い女性の声が流れる。
「はじめまして。新任の国語教師の白石真帆(しらいし まほ)です。後藤智也(ごとう ともや)の母でもあります。これからはよろしくお願いします」
私は全身がこわばり、グループのメンバー一覧を開いて何度も見比べた。
智也は私の息子。彼女が智也の母なら、私はいったい誰?
すぐ夫の後藤亮介(ごとう りょうすけ)に電話する。
「ねえ、保護者のライングループ、誰か間違って入ってない?」
電話口で、彼は一拍おいて、それから何でもないふうに笑った。
「名前のかぶりじゃない?学校って同姓同名、けっこうあるし。どうしたの、何かあった?」
私は笑って「大丈夫」と言い、通話を切った。けれど胸のざわめきは消えず、空港へ駆け込み、その夜のうちに飛び立った。