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20.再会

last update Last Updated: 2025-06-08 16:00:00

「おい、あいつらが山賊倒したってよ」

「マジかよ。あんな細い奴らが ? 」

 ザワ……ヒソヒソ……

「だって吟遊詩人だぜ ? 」

「馬鹿 ! ただの偽装ジョブだろ !? 戦士とか、騎士じゃないのか ? 」

 ほらね。ほらね !? 

「確認取れてます ! 雪山の村からここへ下山されて来た方が、現場を見てくださったみたいで状況と一致してます」

「そ、そうですか……あの現場を……」

 めちゃくちゃ燃やしちゃったけど良かったのかな……。懸賞金なんか要らないから無かったことにしたい。

 でも貧乏だし、呪われてるし、半魔族疑惑だし。素直にヒーロー気分とはならないわね。わたしを攫ったのがせめて魔物なら割り切れたんでしょうけど。

「リラ ! セロ ! 」

 ほら、もう名前まで筒抜けに…… !  ??? この声って。

「セロ ! リラちゃん ! こっちこっち ! 」

 群衆の中、レオナとジルが手を振って立っていた。

「レ……レオナァ〜 !! 会いたかった ! 」

「あはは ! 大袈裟な ! まだ一週間も経ってないよ ? 」

「よう ! 現場見てきたぜ ! 」

 ジル、その話はやめて ! 

「皆殺しで焼け野原 !! おめぇらやるなぁ〜 ! ヒューヒュー」

「ジル ! お願い。なんて言うか……わたしたちは音楽家なの ! 」

「ほんとほんと凄ぇよな ! 」

「そうじゃなくて……」

「おいおい、まじで吟遊詩人かよ」

「何 ? 今日はギルドが賑やかねぇ」

 村人まで集まってきた ! 

「それが、山賊に懸賞金が出てたろ ? 

 あの細い吟遊詩人
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