LOGIN新卒一年目の春。 大学最後の卒業間近に結婚まで考えるほど好きだった恋人に浮気され、振られた栗山徹史の心は未だに癒えていなかった。彼女に別れ際に放たれた言葉は「徹史の愛は重すぎる」だった。 挙句の果てには友人でゲイの千坂にも同じように詰られて凹んでいると、 彼から出会い系バーを紹介される。 恋愛に飢えていた徹史は軽い気持ちでそこの店に足を踏み入れてみると、店の入り口前で恋人らしき人と口論しどこか現な表情で煙草を燻らせている櫂理人の姿があった。 そんな寂しそうな彼の姿に栗山はその男に一目ぼれしたがどうやら一筋縄ではいかず…。 好きだけど言えない気持ち。好きなのに本気になりたくない。そんなセフレの苦い恋のお話。
View More繋がる身体。ベッドを軋ませながら自分の腰の動きに合わせて淫らに上半身を揺らす彼。
「
手に入れたい程、愛おしい人の火照った顔を見つめながら名前を呼ぶ。
「くりやまっ……」
今にも限界を迎えそうなのか、快感に溺れて苦しそうに自分の名前を呼ぶ彼の姿が愛おしい。
この人に愛していると告げられる日は来るのだろうか。彼に愛が伝わる日は来るのだろうか。
決して口にしてはいけない言葉だと分かっていても、理性を飛ばした頭でうっかり零してしまいそうになる。その言葉を零してしまえば、この人との関係が終わってしまうと分かっていても想いを告げてしまいたい。愛していると……。
言葉を堪えて、奥を突きながら絶頂を迎えそうな愛おしい人のモノを掌で握りしめて先端を親指で塞ぎ止める。
「あっ、あっ……。くりやまっ、苦しい……。出したいっ、て、手放してっ……」
「理人さん、まだダメです」
欲を満たすために抱かれている貴方と愛したい為に抱いている俺とじゃ温度差が違うことは痛感している。こんな甚振るようにじゃなくて、貴方の身体を慈しむように優しく抱きたい。けれど、少しでも気持ち乗せて抱いてしまえば悟られそうで自分を戒めるようにわざと貴方を苛める。
それでも止められない……。
好きでいることも、貴方を抱かせてもらえていることも……。
「く、栗山……。ちょっと待て」 レストランの上階の予約してあったホテルでお互いにシャワーを浴びた後、すぐさまバスローブを脱いで、最後の砦である下着だけ残して肌を重ね合わせた。 いつもは急ぎ足で理人さんが主導権を持って進んでいく行為。レストランで宣言した以上、主導を握るのは徹史の番で、今日はゆっくり時間をかけて理人さんを愛するつもりだった。 理人さんをベッドに押し倒し、髪を撫でながら唇を重ねていると彼に肩を押される。見下ろした彼は怯えのような、不安な様子を覗かせながら此方を見つめてきた。「や、やけにキス、長くないか?」「これが普通です。理人さんは真面に交際したことないから知らないでしょ?恋人同士はちゃんとキスで愛情を確かめ合ってから始めるんです」「そ、そんなの知るかよ……。それに俺たちはっ……」 また得意の捨て台詞を言われそうになり、徹史は咄嗟に理人さんの唇に己の唇を重ねて塞いだ。「セフレだなんて言わせませんよ?今日は恋人の設定じゃないですか。雰囲気、楽しんでください」「楽しめって言われたって……」 理人さんの戸惑いごと優しく受け止めようと、子供をあやすように頭を撫でながらキスを体中に落としていく。今、この時だけでもいいから理人さんは自分のモノだと証を付けるように欝血痕を残す。「んっ……お前、痕付けてんだろ」 強く全身に吸い付いたことで、気づいた理人さんは身を捩らせたが、徹史はどこまでも彼を追いかけて唇を寄せるのを止めなかった。「いいじゃないですか?どうせセフレは俺しかいないんでしょ?」「そういう問題じゃ……」「貴方の項も、肩も、可愛い乳首もお腹も、腰も、全部可愛がってあげるので大人しく抱かれてください」「そんなことはいいっ……んはぁっ」 口調では強く言っているくせに、理人さんの全身の力が抜けていく。 多少なりとも感じてくれているのか、時折甘い声を漏らしては「くりやまぁ……」と息の抜けた声で呼んでくる理人さんが色っぽくて愛おしい。 右側の胸の突起を口腔内に含み、吸
「じゃあ、理人さんは今まで人を好きになったことはないんですか?」 彼にとってこの質問が地雷だと分かっていても聞きたい。その凍てついた心を溶かせる手段を少しでも見つけられるのであれば……。「……ないわけじゃない」 僅かに彼の口元が歪む。「あるんですか?どんな人ですか?」 純粋な興味もあったが淡泊な理人さんが好きになった人くらいなのだからどれほど魅力的な人だったのだろうか。徹史が身を乗り出して問うたせいか、理人さんは「なんでお前に話さなきゃなんねぇの」と怪訝そうな表情を見せてきた。「いつも淡泊な理人さんが好きになる人。純粋に気になるんです。それに、俺の今後の参考にしたいので教えてください」 一見冷たく突き放してくる彼でも、根は面倒見のいい優しさがあるのか、徹史が折れずに押し続けていれば理人さんの方から折れてくれたりする。敬意を込めて、逸らすことなく理人さんをじっと見つめ続けていると、向かいから大きな溜息が聞こえてきた。 無意識なのかスーツの胸ポケットから煙草を半分出したところで、場所が禁煙ということを思い出し、舌打ちをしていた。 どうやら徹史の執念が効いているようで、理人さんは手元にあったワインを飲み干し、ウェーターにおかわりを頼むと「分かったよ」と半ば投げやり口調ではあったが話してくれる気になったみたいだった。「よくも悪くも一途な奴だった。他に好きな人がいてさ、そいつしか見えていなくて、最初は遊び程度で関係持っていたんだけど、だんだん情が湧いてきたんだよ。丁度、クリスマスだったかな……。そいつの誕生日に奴の好きな人の代わりになって抱かれてやったんだよ。好きな奴に俺じゃない名前呼ばれながら抱かれてやんの。うけるだろ?まぁ、最初から割り切った関係だったし、今じゃいい思い出だよ」 自虐的に苦笑を浮かべながら、もう一度ワインに口をつける理人さんの表情がどこか苦しそうだった。本人はいい思い出だと言っているが、好きな人に他の誰かの身代わりとして抱かれるのは想像しただけでも、胸が張り裂けそうになる。 理人さんは真面に誰かと愛し合うような恋愛をして来なかったのではないだろうか。だから恋人を作ることを拒絶している。恋心を持ったとしても叶わない、想い合うだけ無駄だと思ってしまっている。 誰かと想い合えることの喜びだとか幸せを知らないのだろう。 俺がこの人を
理人さんとのデート当日。いつもはホテル街で待ち合わせをするが、今日はお互いの会社から近い駅方面で落ち合った。 徹史はこの日の為に初めて新調した三つ揃いの紺色のスーツに、朱色の水玉ネクタイを合わせて、少しでも理人さんと並んで恥ずかしくないように、さりげなくいつもと違うことをアピールしたくて、身なりから気合が入っていた。 ホテルの上階にある夜景が映えるレストランに到着してコートを脱ぐと、早々にスーツがいつもと違うことを突っ込まれたが適当にはぐらかしてやり過ごした。理人さんは自分の身体以外には興味がないと思っていただけに、徹史の身なりなど逐一気にしてなどいないと思っていた。思わぬところで彼に気づいて貰えて嬉しくなり、心の中でガッツポーズをする。我ながらかなり奮発して新調した甲斐があった。 しかし、身なりで背伸びをしていても、実際に畏まった食事が初めての徹史は終始緊張していた。予習はしてきたものの所作の自信はない。 一方でテーブルの向かいに座る理人さんは、運ばれたコース料理をナイフとフォークを使って慣れた手つきで口へと運んでいたので経験の差を見せつけられる。「お前を見ていると、背伸びしている感出ていて面白いよな」「背伸びしてる感って……。去年まで大学生だったんですから仕方がないじゃないですか……」 明らかに揶揄われていると分かる言動に躍起になるが、不思議と嫌な感じがしないのは初めて彼とベッドの上以外で真面に会話ができている高揚感からだった。 窓際の席で街を一望できる夜景と高価なディナー、それに目の前には好きな人。理人さんと関係を結んでからこんな日が来るとは半年前の自分は思わなかっただろう。「ムキになるなって。俺からしたら初々しくて新鮮だなって思っただけだよ」 徹史が普段見ている彼とは違う、表情の柔らかさを感じた。いつもは一文字に引かれている口元が綻んでいる姿は徹史の胸を燻る。「それって、俺のこと可愛いってことですか?」 単なる戯れだと分かっていても、レストランの雰囲気がそうさせるのか、理人さんの一つ一つの仕草に浮かれてしまう。「たかがセフレにそんなこと思う訳ないだろ。調子に乗るな」 浮かれた徹史を冷たく突き放してくる彼は通常通りであるが、黙っているだけじゃいられない。「調子に乗ってなんかいないですよ。そんな理人さんだって、お澄まし顔で
理人さんとの肉体だけの関係が続いて半年が経った師走。毎週末の仕事終わりに落ち合ってはそのままホテルへ直行するのが当たり前になっていた。 そこで恋人のように食事をして、たまに休みの日は出かけて……なんてことはなく、ただ単純に欲を満たすだけの時間。 最中も最初こそはたどたどしかった徹史も回数を重ねる度に、彼が悦ぶポイントを見つけて責めてあげるのが得意になっていた。理人さんは激しく甚振られるのが好きなのか「もっと………」と強請ってくるのが、どこか彼の中の心の錆を取り払ってほしいと切願しているように感じて、この人を救いたいと思うのに彼の望むままに応えることくらいしかできない自分にもどかしさを感じていた。 今日だって、背中にしっかりとしがみ付いて、達していたのに事後は最中の甘えが嘘だったかのように余韻もなく早々にシャワーを浴びに行ってしまう。 一度だけ事後に理人さんの後を追ってシャワー室まで一緒に入ったことがあったが、彼の綺麗な背中を見ていると堪らず触れたくなってしまい、そのままの流れでシてしまった。それが彼には凄く不快だったのか、それ以来一緒にシャワーに入るのは禁止になった。 徹史はベッドで行為の余韻に浸りながらも、シャワーの音が止むのを枕に顔を埋めて待つ。 暫くして水音が止み、シャワー室から理人さんが出てきた。前髪を梳きあげて、下はスーツのズボンに気持ち程度にワイシャツを羽織った姿でソファに座る。 この一週間、待ちに待っていた数時間のひとときが終わりを告げることに寂しさが増した。「お前もシャワー浴びてこい。浴びたら出るぞ」 徹史が執拗以上に求め、合意を得た時以外は泊まりなんてしないし、理人さんは長時間だらだらいるのは割り切った関係である以上必要ないと嫌がる。 徹史は、のそりと上体を起こすと彼の横顔をじっと眺めていた。今日は理人さんと会う前から決意していたことがあった。それは彼を食事に誘うことだった。 決行日は十二月二十六日の金曜。理人さんの為に三カ月待ちだという三ツ星レストランを予約した。すべては理人さんとゆっくり時間を過ごしたいという徹史の切なる願いのために……。 デパートの催事の責任者だと聞いていた彼がクリスマスという一大イベントの日が空いている訳が無い。 それに、あからさまにクリスマスにしたら変に勘ぐられてしまいそうなので敢えて外