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愛という名の共謀

愛という名の共謀

By:  鈴鳴りんCompleted
Language: Japanese
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私は江坂紗月(えさか さつき)。 前夫の白川陽翔(しらかわ はると)は、会社が倒産したと言い残し、ビルの屋上から身を投げた。 悲しみに押し潰されそうになりながらも、私には生後五か月の娘・江坂つかさ(えさか つかさ)がいた。 その子を抱えて、私は数千万円もの借金を背負うことになった。 そんな私を不憫に思った幼なじみの江坂慎也(えさか しんや)は、周囲の反対を押し切って、私に結婚を申し込んでくれた。 慎也は、つかさを実の娘のように大切にし、誰よりも愛すると約束してくれた。 けれど、つかさは不幸にも、それから間もなく肺結核でこの世を去った。 心が空っぽになったように日々を過ごしていたある日、私は偶然、慎也と、死んだはずの陽翔が話しているのを聞いてしまった。 「やっぱりお前は容赦ないな。会社を潰れたように見せかけて、俺を死んだことにするなんて。 まあ、そのおかげで俺は金を持ったまま、絵梨と結婚できたわけだけどな」 ――芦原絵梨(あしはら えり)。陽翔や慎也と同じ、私の幼なじみの一人だった。 「お前も紗月と結婚して一年以上だろ。つかさに手を出してなかったら、本気で紗月に情が移ったのかと思ったぞ」 しばらく黙っていた慎也が、低い声で言った。 「つかさがいると、絵梨が安心できないんだよ。俺だって、好きであんなことをしたわけじゃない。 絵梨が幸せでいられるなら、俺はなんだってする」

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Chapter 1

第1話

私は江坂紗月(えさか さつき)。

前夫の白川陽翔(しらかわ はると)は、会社が倒産したと言い残し、ビルの屋上から身を投げた。

悲しみに押し潰されそうになりながらも、私には生後五か月の娘・江坂つかさ(えさか つかさ)がいた。

その子を抱えて、私は数千万円もの借金を背負うことになった。

そんな私を不憫に思った幼なじみの江坂慎也(えさか しんや)は、周囲の反対を押し切って、私に結婚を申し込んでくれた。

慎也は、つかさを実の娘のように大切にし、誰よりも愛すると約束してくれた。

けれど、つかさは不幸にも、それから間もなく肺結核でこの世を去った。

心が空っぽになったように日々を過ごしていたある日、私は偶然、慎也と、死んだはずの陽翔が話しているのを聞いてしまった。

「やっぱりお前は容赦ないな。会社を潰れたように見せかけて、俺を死んだことにするなんて。

まあ、そのおかげで俺は金を持ったまま、絵梨と結婚できたわけだけどな」

――芦原絵梨(あしはら えり)。陽翔や慎也と同じ、私の幼なじみの一人だった。

「お前も紗月と結婚して一年以上だろ。つかさに手を出してなかったら、本気で紗月に情が移ったのかと思ったぞ」

しばらく黙っていた慎也が、低い声で言った。

「つかさがいると、絵梨が安心できないんだよ。俺だって、好きであんなことをしたわけじゃない。

絵梨が幸せでいられるなら、俺はなんだってする」

「紗月がどれだけつかさを大事にしてたか、お前だって知ってるだろ。お前が死なせたって知られたら、一生恨まれるぞ」

陽翔が、電話の向こうで面白がるように言った。

「だから、このことは墓場まで持っていけ」

慎也は大きな窓の前に立ったまま、しばらく黙り込んでいた。

やがて、低い声で答える。

「大丈夫だ……俺なりに、償っているつもりだ。

子どもがいれば、どうしたって情は残る。絵梨も、お前がつかさを理由に紗月と切れなくなるんじゃないかって不安がっていたんだよ。つかさがいなくなれば、絵梨も安心できる。

紗月は俺を信じている。真実に気づかせない自信はある」

二階の廊下でその言葉を聞いた瞬間、全身から血の気が引いた。

喉が塞がったように息ができない。

慎也が顔を上げる前に、私は逃げるように寝室へ戻った。

鍵をかけた途端、力が抜け、その場に座り込んだ。

陽翔は、死んだはずだった。

会社が倒産したと言い残し、ビルの屋上から身を投げたはずだった。そして私には、返しきれないほどの借金だけが残された。

何もかも失ったと思っていた私に手を差し伸べてくれたのが、慎也だった。

つかさは、まだ生後五か月だった。慎也は私たちを支えたいと言って、結婚を申し込んでくれた。

けれど、ようやく少しだけ前を向けるようになった頃、一歳を過ぎたばかりのつかさが肺結核でこの世を去った。

たった一年のあいだに、私は何度も人生を壊された。

それでも慎也だけは、私の味方だと思っていた。

なのに、今になってようやく分かった。

全部、あの三人が仕組んだことだった。

陽翔は死んでいなかった。

慎也もまた、最初から私を騙していた。

私の信頼を利用して、私の最愛の娘まで奪ったのだ。

あの三人はみんな、私にとって大切な幼なじみだった。

陽翔はすべてを持って、絵梨のもとへ行った。

それなのに、どうしてつかさまで奪われなければならなかったのだろう。

気づけば、涙が止まらなくなっていた。

そのとき、背後でドアノブが回る音がした。

「紗月?」

鍵がかかっていると分かったのか、慎也は焦ったようにドアを叩き始めた。

「紗月、頼む。開けてくれ。

つかさのこと、まだ受け止めきれてないのは分かってる。でも、これからは俺がいる。ずっとそばにいるから。

頼むから開けてくれ。一人で抱え込むな。

つかさは優しい子だったんだから、お前がそんな顔してたら悲しむよ。

紗月……開けてくれ」

よくも、そんなふうに言えたものだ。

さっきの会話を聞いていなかったら、私はきっと――何も知らないまま、ずっと騙されていた。

やがて慎也が鍵を見つけてドアを開けた。

その頃にはもう、涙は拭っていた。

「……紗月、びっくりした。どうしたんだよ」

そう言いながら慎也は私の手首を取った。

傷がないと分かると、ようやく息をついたように私を抱きしめた。

「よかった……ほんとに、よかった。

もう前みたいなことはするなよ。頼むから」

少し間を置いて、低い声で続ける。

「俺がいるだろ。

約束したじゃないか。一緒に年を取っていくって」

そして、私の肩を抱いたまま言った。

「子どものことは……また考えればいい。次はきっと、大丈夫だから」
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