เข้าสู่ระบบ「おはようございます」
次の日、機嫌良く出社した功一に竹田が震える声で給湯室から出てきた。
それも来ているのはいつものスーツではなく、喪服だった。「え ? 竹田さん、どなたか不幸ですか ? 」
「神代……実は……あの神社の引戸さんだが…………死んだんだ」
真っ青な顔で呟く竹田に、功一はなんとも冷静を保ったまま答える。
「そうですか」
「一緒に来てもらいたいんだが、今日は客が来る予定だし……」
「ソーラーパネルの事業者さんですね。俺が相手しますよ」
「うん……まぁ、この辺りでその規模の土地を売りたい奴はなかなかいないしなぁ。農家さんもまだまだ現役だし。とりあえず希望やなんかをもう一度聞いてみて」
「わかりました」
「山を崩すとか、個人宅に付けるとか&hellip
『ルシウスを味方につける』 仁香の当面の目標。 次の日、何事もなく功一を送り出した仁香は祭壇のある部屋へ一人座り込んだ。 功一の中に潜むルシウスをまずは害の無いものに変える。 いや、確かに仁香には害はない。しかし頼みの綱の引戸は亡くなり、土地を売り捌く話を持ってきた。「……わたしがルシウスならどうする…… ? 」 ルシウスは完全な愉快犯だった。 ミレアを本気で好きだった訳でも、アスターを妬んだ訳でもない。 長年、太陽神の加護がどちらに付くかで競い合う同じ外見の子供。双子というよりコピーに近しいその存在の、大事にしている女性を手にかける。 太陽神に選ばれたのは自分だと言うのに、アスターが目下の者に確定したが瞬間から変貌した。「そんな彼が生まれ変わったら……」 ミレアに対する執着より、アスターに対するマウントの方が強い気がするのだった 。「わたしの前世はミレア……あの遺影の男はルシウス。功一さんの中にいるのも……。 ……それならアスターは……」 アスターの生まれ変わりこそが、功一なのである。 仁香にだけ理解できる過去と前世のアスターの所作や性格。傲慢で派手なルシウスより誠実だが自由人のアスター。過去に知り合った当時の功一はまさしく。 しかし、功一は今やオカルトの類いを信じないタチなうえ、この神代家の義父母もこの祭壇のせいですっかり神仏に信頼がない。 その時インターホンが鳴った。「え ? 誠治くんじゃないの ! 」 玄関に出た友紀が驚いたように見上げる。 台車を押した呉服屋の主人が立っていた。「いや〜、神代さん久しぶり〜。あのさぁ、嫁様いるでしょ ? 俺んとこの仕事頼んだんだよ〜いや〜ありがてぇ。細かい作業は嫌いでさぁ」「あぁ、もしかして内職の話 ? 」
「ニカ、ただいま」「あ、おかえりなさい……」 微笑む功一に仁香は目も合わせずキッチンへ戻り、濯いである弁当箱を丁寧に洗う。昨晩の事がトラウマのように蘇る。 今もだ。あの雰囲気には覚えがある。優しかった頃の功一とは少し違う、愉快そうに笑う姿はまさにルシウスの面影を匂わせる。 功一はそのままリビングへ行くと佐喜男の側へ行く。「父さん、東側の山を持て余してたろ ? 実は買取り手がいるんだけど、話を聞いてみない ? 」「はぁ ? お前……あんな場所が欲しいなんて……騙されてんじゃねぇのか ? 」「路面や住宅ならそうだけど、相手は電設関係でソーラーパネルを建てたいらしいんだ」 この話に佐喜男の顔色が変わった。「土地は……買取りか ? リースか ? 」「応相談。どう ? 」「そりゃあ……どうせ使わんし……。山道は整備されてないから出入りするのも困難だろ。バイパスは南の畑を通したし、もうそんな話は来ないと思ってたが……ソーラーパネルかぁ」「別荘地や観光地になるよりいいじゃんって思うけれどね。 即決する必要ないよ。相手も俺の大学時代の先輩でさ、怪しいヤツじゃないし、話聞いてみる ? 」「そうだな。聞くだけ聞いてみてもいいぞ」 莫大な金の匂いに鼻を利かせる佐喜男のそばで友紀も概ね同じ態度で聞いていた。 ところが、そこへ口を挟んだのは美千花だった。夕飯を食べ終え、寝転がりながらテレビを観ていた身体を起こす。「え ? え ? あの山、わたしが独り立ちしたらくれるって約束したじゃないですか」 これには友紀の目が丸くなる。「お父さん、そんな約束……勝手にしていたの !? 」「いや。だって、折角農家になっても農業する場所がないんではなぁ」「だからって
「仁香さん ? 」 引戸家を後にしようとした仁香を、引戸の妻 楓子が引き止めた。「困ったことがあったら言ってね ? 」「はい……ありがとうございます ! 」「あの……。あの祭壇は、まだあるのかしら ? 」「……ご存知なんですか ?! 」 楓子は苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。「うちのお祖父さんは反対したんだけどね ? 神代家で新興宗教を始めるから神棚と仏壇の取り払いをするって言った時……お引き受け出来なったのよ。しなかったというか……」「それは……なぜですか ? 」「……祀ろうとしているものが……悪神だから、と。そんなことを言ってたわね。 当時わたしも嫁に来たばかりでね。深くは聞けなかったけど……。 でも今、貴女がなんでもないなら良かったわ」「そ、そうですね」 終わりだ。 祈祷やお祓いをしたくてきたというのに、話が流れてしまった。 だがしかし、確信にも変わる。 ルシウスの魂はこの世に生まれ変わり、仁香を待ち構えるため神代家に祀られるまで進化した悪神である事。 竹田に挨拶を済ませ、余った時間を考え、そのまま予定通りに役場へ向かった。 □ 役場、地域交流センター、保健センターなどが一角に列をなして同じ敷地に建っている。 仁香は車を止めると、回覧板に入っていた地域情報紙を取り出す。「ここには電気配線……アクセサリーのセロハン詰めって書いてあるけど……案外聞いたら他にも出てくるものよね」 地域役場の中に入り、冷たいタイルの上を歩く。 すると前方から着物を来た男性が歩いてきた。 すれ違った身なりの
玉串料を用意すると、仁香はすぐに車に乗り込んだ。 今から行けば夕暮れ前に訪ねられる距離の神社である。「仁香さん、一体どこへ行くの ? 」 友紀が訝しげに運転席の仁香に立ちはだかった。 ルシウスと思われる遺影は本人ではない。恐らく生まれ変わりや、前世の記憶を持つ誰かだったのだろう。しかし既に故人であるということは同じ時代に生まれられなかった。 そして、仁香がこの神代家へ嫁いでくるまで待っていた。 あの祭壇に巣食いながら。「お義母さん……。あの祭壇を、お義母さんは嫁いだ時にもありましたか ? 」「何よ、急に。掃除が嫌になったの ? 」「いいえ、まさか。責任をもって手入れさせていただきます。 実は遺影の中に外国人がいるのをご存知ですか ? 」「……ええ。姑はね、そいつの祟りがどうとかでアレを作ったとか聞いたけど」「それ以前に並んだ遺影の方たちは……? 」「そりゃあ、祭壇を作るってなったら、仏壇がいらなくなるでしょ ? だから一緒にしてもらったらしいわ」「つまり元凶はやっぱりあの人なんですね。 そうなると、あの方は神代家の方なんですか ? 」「……それについては、功一や塁の事もあるし聞いてみたけど……どうも遠縁の親戚らしいわね。 たまたま当時の長子が病死して、引き継いだのがその外国人だったとか。でも結局子供に恵まれなくてね。その後は神代家を出た娘が離婚して戻ってきて、その息子が継承したのよ。 何にしてもこんな事はここだけの話。家の他で詮索しようとなんか思わないで頂戴」「ええ。分かっています」 仁香の正装に近しい格好をジロジロ見た友紀が雪に残ったパンプスの足跡を目ざとく見つける。「ちょっと仁香さん、本当にどこへ行くの ? そんな格好で」 全くしつこい事だ。 しかし仁香も友紀の行動も分かってきていた。
仁香の脳内は混乱していた。 功一を見送り家事を済ませたところであることに気づく。 功一に買ってもらったスノーブーツが無い。 下駄箱を開けるも確かに無いものは無い。「そんな……」 今までにもあった。 仁香の年齢の服飾を友紀が盗ることは無いが、衣装ケースを漁られることはある。 実害はないので何とか我慢していた秋口。 冬の到来とともに仁香の服が消えるようになった。 窓からそっと離れを眺める。 美千花の住む離れの改装された納屋の出入口に 、仁香の物と同じスノーブーツが立っているのが見えた。「嘘……また…… ? 」 前回はコート、その前はパンプスだった。 最初のパンプスの際は仁香が美千花を責めると『参観日に履いていくものがないから』といい、子供を盾にする。 立ち会った佐喜男も「靴くらいで、怒るなよ」と話を丸めにかかる。それからずっと美千花の盗み癖は続いている。「はぁ……」 理解不能とばかりに水の入ったバケツを持ち、鳥居の部屋にはいる。 その日──仁香の感覚はいつもと違った。 何故かその祠を知っている気がした。 そんなわけが無い。 この祠は功一の祖父が新興宗教として建てたものだ。 しかし、仁香にはその日。 その祠の中に収められているものがなにか分かってしまった。震える指先で金属のバーをあげて観音開きの戸板を開く。「……っ !!? これ……夢で見た……太陽神の印……。 はっ !!」 なにかの気配に振り返る。 あの外国人の遺影の紐が切れ、今にも床に叩きつけられんばかりにプラりと揺れていた。「 !! 危ない ! 」 慌てて遺影を手に取る。 頭がぼうっとする
『太陽神はルシウスに授ける ! 』 この一言でアスターの運命が決まった。 兄のルシウスは後継者として家を継ぐが、自分は家から出るか、抵抗したら死が待っている。 父親が術師に御告と受け、これからの未来を語り出す。 式典には多くの街人や王族の姿もあった。 アスターは惨めな気持ちを押し殺しながら荷物を纏め始める。 その時、既にルシウスの姿が無いことに気付く。 確かにここに来ていたはずだ。 後継者に選ばれたのはルシウス。街人たちはみなルシウスに群がり、交流を求めるだろう。 しかし、荷物ごと既に消えているのだ。「どこへ…… ? いや、それよりも俺は家を出る準備をしないと」 そして最後の別れをミレアに告げなければならない。更に自分に願いが叶うなら──どうか無一文で始める旅の生活に共に付いてきて欲しい。勝手は重々承知の上で、アスターはミレアと共に家を離れようと決意していた。 □「ミレア ! 」「アスター !? 今日は……祭典に行くんじゃなかったの ? 」 アスターは式典の日だというのに、いつもと同じ服装で現れた。「すぐに帰ったんだ。 さぁ、俺が太陽神に選ばれた ! 証を貰ったんだ ! 来てご覧」 そのミレアのそばに現れたアスターは、いつもより機嫌よく、滑らかな口でミレアを家に誘った。「いけないわ。わたしはお屋敷には入らないよう言いつけけられているの」「そんなの ! 俺が許すよ。今日から俺が主人となるんだから」「でも……」 アスターがミレアの手を強引に取る。 玄関にはまだ帰宅したばかりのルシウスのカバンや羽織ものが脱ぎ捨てられたままだった。「ルシウス様も帰宅されているの ? 益々中に入る訳には行かないわ」 強い迷いを見せるミレアに、アスターは安心させるように抱きついた。「今までずっとこうしたかったんだ。誰にも何も言わせないよ。 寝室へ行こう。柔らかいベッドの上で、君を感じさせてくれ。
部屋から部屋へ掃除機を犬のように連れて歩く。 友紀が自室からひょっこり顔を出すと、トイレへ向かった。 その間に掃除しろ、というサインなのだ。「ホイホイホイ〜」 さっさかさっさか。 作業だ。 これはただの掃除。家事だ。 そう思わないと心が病んでしまう気がして、小声で窓を開け埃を逃がす。(大丈夫。先月まではこの部屋に入れてもくれなかったんだから。考えれば自分の部屋を勝手に掃除されるっていう方も負担よね。 わたしも理解しなくちゃ……)
駅前でいつも功一と仁香は待ち合わせをした。 都会の冬はいつもビル風が強く、冷たくなった仁香の耳を功一は笑いながらポケットから出した手でぴっとりと触れて温めてくれた。 仁香は建築会社の事務員を、功一は不動産業の営業の端くれとして仕事上知り合いになった。 功一の仕事ぶりに仁香の上司や現場から多くの高評価がフィードバックとして上がってくる。土地が絡む話は大抵、揉めがちで大金を支払う者は企業、個人問わず神経質になりがちだ。 功一の勤めていた梅田不動産は先々代の社長が多くの土地を所有し莫大な資産を築いたが、その息子の代に変わると見る見る間に失速。 そこで頭角を現したのが功一だった。 仕事
いつも仁香は南の島の崖に立っている。 恋人と会うために。 場所は知らない。何しろ、自分は物心つく前に、庭の手入れの為だけに連れてこられた使用人なのだ。その庭のある豪邸の主人にも名前すら覚えて貰えない。そんな身分だ。 ある日、生活に色がついた。 花は美しく、海はどこまでも続くコバルトブルー。 地平線のスカイブルーがオレンジに変わる頃、仁香はドキンドキンと高鳴る胸を押えて、誰かを待つ。 庭木がガサガサっと揺れる。 振り返ると功一によく似た、身なりの良い青年が出てきて、仁香の細い腰を抱きめ、嬉しそうに笑いながら抱えあげる。 幸せだった。幸せな気持ちだった。 ──この夢は繰り返し
雪荒ぶ道。 轍のついた路面の端で仁花《ニカ》は冷えていくサンダルの爪先を見詰めた。 眺めたところで仕方ないというのに、疲労と絶望で思わず顔を下に向けてしまう。 仁花は両手に大きなナイロン袋を提げ、ありったけの日本酒を持っていた。瓶の重なり合い割れてしまうのを見越し新聞紙を持参したが、あまりの重さに一度雪の上へ袋を下ろした。 普段温厚な義父はいつも仁花を可愛がり、気遣ってくれる。そんな義父の頼みとあっては断れないのだ。例え酒が人格を狂わすとしても、味方になりうるのは義父だけ。 今晩、酒を買いに行って来いと義父が言うもので家を出たが、仁花は義母に車を置いていけと言われ徒歩で三キロ先の







