彼氏の好きだった人が戻り、私は他人の嫁に
子どもの頃からずっと牛乳を飲んで育ったせいで、私は同年代の誰よりも体つきが早く大人びていた。
18歳のとき、シスコンの兄・佐波恭平(さば きょうへい)が「誰かに体を騙し取られたら困る」と言い、親友の神代明彦(かしろ あきひこ)に私の面倒を見るよう頼んだ。
ところが、初めて会ったそのとき、明彦は私の胸元の豊かなふくらみから目を離すことなく、何度も何度も私を弄んだ。
それ以来、昼間は明彦が私の上司で、夜は私が彼のパーソナルアシスタントとなった。
丸四年間の秘密の関係で、私は彼の好みに仕上げられていった。
四年後、明彦の元婚約者が帰国し、彼は私のそばから離れて慌ただしく空港へ迎えに行った。
私は恥ずかしさを噛みしめながらも、必死に空港まで追いかけた。
つい一時間前まで、明彦が噛み跡だらけの手で私の口を塞いでいたのに。
今、私の目の前で、彼は別の女・末藤清子(すえふじ きよこ)の髪を優しく撫でながら言い放った。
「佐波百香(さば ももか)、四年前、お前が酔った俺のベッドに勝手に入り込んだんだろ。
お前は今のようにわがままを言うなんて、本当にくだらないんだ」
清子を見る彼のまなざしはあまりに優しく、私を見る嘲るような視線も普段より一層真剣だ。
私ももう馬鹿らしく思い、俯きながら兄の恭平にメッセージを送った。
【崎尾家に、私が縁談を引き受けるって伝えて】
そして顔を上げて、笑顔で彼に返事をした。
「……そう。じゃあ、さよなら」