兆円の遺産とマッチ三本、私はマッチを選んだ
祖父が臨終の際、兆円の遺産と三本のマッチを残した。
「君たち姉妹で一つずつ選びなさい。真由美が姉だから、先に選べ」
私は迷わず兆円の遺産を選んだ。
義理の妹――竹田亜由美(たけだ あゆみ)は、たった三本のマッチを受け取るだけ。
ところが、あのマッチには、とんでもない力が秘められていた――火をつけて願い事をすれば、何でも叶う力。
妹は、両親が私ばかりを可愛がるのをずっと恨んでいた。真っ先に、彼女はマッチを擦った。
「あの二人が、惨めな最期を迎えますように」
案の定、父は突然の心臓発作で急死。母は病院へ駆けつける途中、大型トラックに跳ね飛ばされた。
私は包丁を手に、妹に詰め寄った。
「あんたが大人になったら遺産も分けるって、約束したよね!?
父さんと母さんが善意であなたを引き取ったんだよ!食べるものも着るものも、ずっと私と同じにさせてきたのに!どうして恩を仇で返すの!?」
妹の顔には、むき出しの欲望がにじんでいた。
「引き取るんなら、あんたを捨てて、全部私に譲るべきだったのよ!
あんたが恵んでくれる遺産なんて、要らないわ。みんな死ねば、結局お金は全部私のものになるんだから!」
そう言い捨て、妹は冷たい笑みを浮かべ、二本目のマッチに火をつけた。
「竹田真由美(たけだ まゆみ)が山奥に売り飛ばされて、産む機械になって、難産で死にますように!」
私は青ざめた。ありったけの貯金をはたき、千人ものボディガードを雇い、鉄壁の警護を敷いた。
……でも、ある深夜、全てのボディガードが同時に気を失い、私は結局、あの山奥に売り飛ばされた。
地獄の日々が始まった。私は豚や犬以下扱いの、ただの産む機械になった。
どれほどの時が流れただろう。激痛と屈辱の果てに、私は静かに息を引き取った。
そして、目を開くと――遺産を分配する、あの日に戻っていた。