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第44話・伝令鳥の知らせ

مؤلف: 新矢識仁
last update تاريخ النشر: 2026-06-12 05:14:31

 それからしばらくは、特別なことは何もなかった。

 町が浮いているだけで、みんなはそれぞれいつも通りの生活を送っていたから。

 ヴァリエがいる、ということだけが唯一の違いだけど、一日目に二刻で七人にケチをつけたから「突き落とされたくなければ許可なく家から出るな」と言い聞かせてからは平和だった。

 シエルたちは巨大ベッドのデザインであれこれやって、ヒロント長老たちは畑であれこれ、ティーアたちは家畜であれこれ。全員町が浮いていることなど気にせずに頑張ってくれていた。

 子供たちも、ソルダートに頼んで門の方へは近付かないようにさせれば、町の敷地は高い塀で囲まれているので安全。全員きゃいきゃいと遊んでいる。一応ミュースに見張りは頼んでおいてあるけど、子供たちは全員素直で「危険だから門の方に行ってはいけない」という約束を守ってもらっている。アパルに「法律」で「子供だけで門の方に行ってはいけない」という法を作ろうかという話もあったけど、今の所はその必要もなさそうだ。

 平和っていいなあと思う日々。

 自分の家はヴァリエがいるので、泣くアナイナを何とか説き伏せて会議堂で寝起き(会議堂にはいつの間に
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  • Lv1・Maxからのまちづくり   第92話・印のデザインは

     と。言うわけで。 翌日、陶器通り近くの印章彫刻家ダムガ師匠の所を訪れたぼくです。「その間抜けな格好は何なのかね、町長?」 気難しい顔でいきなりこういう師匠。 間抜け? あ、エキャルか。「すいませんこいつは訳あってあと二日は傍に置いておかなければならないんですこいつのことは無視してお願いします」「印章作りは下を向く。首が痛む」 ダムガ師匠はむっすりと言う。「更に頭に鳥が乗っていたらもっと首を痛める」「あ」 気難しい人かと思ったら、心配してくれていた。「エキャル、しばらく机の上に乗っててくれる?」 くぅ、と残念そうな顔をしてエキャルは机のぼくのすぐそばに着陸した。「それでいい」 師匠、頷いて、掌に乗るほどの四角い石を取り出した。「印章彫りに一番いい石、セーデン石じゃ」「へえ」 蒼い石を遠ざけたり近付けたりして見つめる。「まずは、どのような図柄にするか考える」 どんな図柄、かあ。町の印章はグリフォンだけど、ぼくの図柄かあ……。ぼく……。「面倒であれば自分の名をそのまま印にしても良い」 その手があったか!「町長印と違い過ぎると疑われるだろうが」 ……そうか。 う~ん……。 軽くほっぺたをトントンする気配。 ん? 誰? そっちを見ると、エキャルが心配そうな目でこっちを見ていた。「大丈夫だよ、エキャル……」 ……ん。 エキャルにすればいいんじゃないか? 町はともかくとして、ぼく自身はあんまり特徴がない。 アナイナと髪の色も目の色もパーツもよく似ているのに、アナイナは美少女だけどぼくは美少年ではない。むしろ特徴と言える特徴のない無個性な人間だ。 スピティやフォーゲルではこいつが本当に町長か扱いは当たり前だった。 町民でもぼくの顔を見てすぐ町長と分かる人間は半数いるかいないか。サージュやアパルが町長だと思ってる人もいるくらい。 そんなぼくが昨日注目を浴びたのは、頭の上のエキャル。 さすがに頭に伝令鳥を乗っけしている人間はグランディールでは町長であるぼく以外いない。 伝令鳥を乗っけて一日グランディールを歩き回ったから、エキャルと並んで覚えた人もいるんじゃないか。 そのぼくを表すのに伝令鳥は相応しいんじゃないかと思った。「こいつ、どうでしょう」 手を上げると、その上にエキャルが嘴を乗せて

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第91話・子供たちに教えるために

     う~ん。 町をぶらぶらして見聞きしたことを思い出し、問題点を洗い出す。洗い出すほど問題点がたくさんあったわけじゃないけど。 今の状況だと子供問題を優先したほうがいいなあ。 子供が何もすることがないからあちこちを探検して回ってるわけだな。 探検が悪いとは言わないけれど、畑を踏み荒らされたり家畜を蹴られたり窯に入り込まれたりするのは困る。うん、とっても困る。 畑はまだ可愛いもんだけど、家畜蹴飛ばして蹴飛ばし返されたら大怪我だ。窯に入ってるの気付かないで火を入れたら大惨事だ。 そうなる前に手を打った方がいいなあ。 学問所を作ることは予定していたけど、早めたほうがいいかもしれない。教える人はファヤンスから来た人の中に学問所の先生をやっていた人が二人いたので任せるとして、何を教えるかをまだ決めてないし。何を教えるかは町の方針とか色々関わってくるので、ファヤンスの教え方で教えられても困るので後回しにしようと思っていたけれど、そういう状態じゃなさそうだ。 会議堂に帰って、二人の頭脳を呼んで、相談した。「そうか……子供が」 妻帯者のサージュ、難しい顔。「うん。町民の五分の一が成人未満。それが暇を持て余して町中走り回ってる。それはいいんだけど大事な場所や危ない場所にも行ってるんだ。牧草地で家畜に近付いたり、窯の中に入ったり」「それはまずいね」 アパルも渋い顔。「会議堂に入り込んでくるのも時間の問題だな」「うん。それで、学問所を早めに開ければ、と思ってるんだけど」「確かに、暇な時間を減らせばそれだけ走り回ることは少なくなるってことだ」「ただ、何を教えるか……」「先生も呼んできて一緒に相談しよう」 というわけで呼び出されたのが、ケンナリ・レーラール先生とチチェル・プルファソラ先生。「私たちの意見を聞きたいとのことですが……お役に立てるか」 ケンナリ先生渋い顔。「わたしたちは町長の命令で、陶器のことを教えさせられていたんです。ですが、ファヤンスを併合したからと言って完全に陶器の町で売るわけでもないのでしょう?」「うん。敢えて言うなら何でもできる町」 ぼくの言葉に、チチェル先生も難しい顔。「どういう方面を教えればいいのか、難しすぎます」「仕事の内容とかは要らない」 ぼくは天井を見上げて呟く。エキャルがバラン

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第90話・町を巡って

     そのままぶらぶらと歩いて、今度は一面の緑の世界に辿り着く。 家畜を飼育する牧草地は、人間の住んでいる場所より広いかもしれないのは、家畜担当組が家畜をのびのび育てられると思った結果、らしい。 実際、あちこちで牛や馬、山羊や羊がのんびりと草を食み、鶏が地面を突き、豚が悠々と昼寝する。 家畜売買業者のゾーオンが連れてきた家畜を全部町に預けてくれて、飼育も担当してくれているので、ティーアやフレディをはじめとした動物関連のスキルの希望者がほぼ放し飼いで様子を見ている。放し飼いだけど寝る時には家畜小屋に戻ってくるそうだ。 家畜たちもこの牧草地が一番安全と分かっているし、お腹もいっぱいになるし、十分に広いので逃げ出すこともない。牧草も食べる端から伸びるので、何の問題もない。 結果、家畜たちはのんびりゆったりと牧草地で遊んでいる。 で、牧草を蹴散らして走り回るのが子供たち。「こーら、豚をまたがない!」 強面のティーアに怒られて、慌てて子供たちが逃げていく。「ティーア!」 声をかけると、ティーアが気付いてこっちに近付いてくる。「町長。様子を見に?」「うん。どう?」「まあ、子供たちが入り込むこと以外は特に問題もなく」「つまり子供が問題と」「ああ」 う~ん。「家畜の数が足りないとかは?」「いや、家畜も子供を生んでいるし、贅沢をしなければ肉や乳がなくなるということもないだろう」「そうか。何かあったらすぐに言って」「ああ、ゾーオンにも伝えておく」 その視線がぼくの顔から頭上に移る。「実物の伝令鳥は初めて見たな。頭に乗るものなのか?」「いや、肩に乗られるとバランスが悪いし肩が凝るんで妥協した結果」「へえ」 ティーアがギリギリエキャルに触れるか触れないかの場所に手を差し出した。 エキャルが首を伸ばして、その指を見る。 じっくり指先を観察してから、頭を戻す。「気に入られてはいないようだな」「いや、多分、今までで一番普通っぽい反応」「普通?」「アナイナにめっちゃ敵意むき出しで……。アナイナの指、突きかけた」「なるほど、確認して敵意がないと分かって頭を引っ込めたんだな」 ティーアは動物操作のスキルを持っている。操作するんであって懐かせるのはフレディのスキルだけど、それでもティーアのことを嫌ってるわけではないらしい

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第89話・畑から見える景色

     ヨモギを首につけたまま、頭の上にエキャルを乗っけして歩いていく。 畑の方は比較的穏やかで、作業に勤しんでいる人の姿が何人も見える。ヒロント長老がぼくの顔を見て手を振った。「畑の方はどう?」「特にこれと言って問題はないよ。儂のやることも少ないしの」 ヒロント長老は畑の代表みたいなもので、畑で働く人たちを取りまとめている。「新しい人からの苦情とかは?」 にっこり微笑んで首を横に振られたので、それは良かったと顔が緩む。「ああ、一つだけあったか」「何?!」 顔をあげて食いつくぼくに、ヒロント長老苦笑。「子供が遊んで畑に入り込むことが……」「ああ……」 どの町でも子供の遊ぶスペースって言うのはあんまりない。スキルとそのレベルで住む町が決まる世の中では、子供は正式に町の住民ではなく、成長して役に立つのかがさっぱりわからないので基本的な勉強しか教えない。スキルが判明してから本格的な勉強になるんで、ランクの低い町だと子供は下手すると自分の名前しか書けないというパターンもある。 グランディールは近いうちに学問所を作りたいと思っている。子供が増えたんで、みんなに読み書きと計算、あと印の作り方を教えるところがあればいいなあと、何となく。 でもまだ出来てないので、邪魔にならない限り町の中を歩き回ってもいいという許可を出してあったけど、畑に入り込まれるとなあ……。「畑に柵作る?」「そうですな、柵があれば入ってはいけないことが分かる」 ぼくは柵の形を考えて、スキルを発動。 畑を取り囲むように、子供には背の高い柵を作った。出入り口も簡単な鍵がかかるようにしてある。「こんな感じで?」「十分ですな」 ヒロント長老が頷く。「多分畑が広がれば柵もそれを取り囲んでくれましょうな」 で、と長老の視線が上に。「伝令鳥をお買いになられましたか」「宣伝鳥も近いうちに買おうと思ってるけど」 ぼくは頭の上に手をやる。ふかっという羽毛の感触と手に押し付けられる丸みを帯びた形。「とりあえずぼくが飼ってみて、どんな感じなのかを見たいってアパルもサージュも言ってたし」「そうですか」 長老は目を細めてエキャルを見る。「最初に送りたい相手はどなたですかな?」「ん~……個人的な話になって悪いけど」 手を挙げてエキャルを撫でながら答える。「両親に」「そう言えば、

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第88話・懐かせる期間

     三日は傍に居てやってください、とパサレは言った。 伝令鳥や宣伝鳥は、まず自分が帰ってこなければならない場所を覚えなければならない。不特定多数に送る宣伝鳥や町で買う伝令鳥は場所を覚えてそこから行き来するけれど、ぼくのみたいに完全に個人的なやり取りをするなら、自分の飼い主を完璧に覚えてもらわないといけない。何処から何処に送ってもぼくの所に戻ってくるように。 高価でスキルレベルの高い伝令鳥は、例えば他人に貸しても、飼い主の意を酌んで他人の手紙を知らない人間の所にも届けたりできる。けど、元の住処あるいは飼い主を完全に認めていない鳥は元の住処に帰ってきてしまったりする。 エキャルは高価でスキルレベルの高い伝令鳥だけど、それでもぼくの気配を覚えるには三日はかかる、んだそうで。 基本的に鳥かごの中に入れておくものだけど、鳥かごに入れると文句言って暴れる。言い聞かせると分かってはくれるんだけど、あの黒い目でじっとぼくを見上げてくる。出してくれーって言ってるの分かるんだよ、これが。逃げないからここから出してーって言ってるのが。 鳥かごに入れておかなくても、ここまで気に入った飼い主の元から逃げ出すことは滅多にないとパサレも言ってたし、ぼくがエキャルの傍に居るよりエキャルがぼくの傍に居るのが色々無理がなくていいかと自由にさせた途端、右肩に飛び乗った。 鳥だからそんなめちゃくちゃ重いってわけじゃないんだけど、それでも右肩に重みはかかる。「……肩が重いんで別の場所に行ってもらっていいでしょうか」 バサバサッと飛んで頭の上。「何で頭の上がいいの?」 長い首を下ろして頭のてっぺん辺りに自分の頭を擦り付ける。「分かった分かった。そこがお前の定位置なんだな?」 だったら仕方がない、ちょっと間の抜けた姿になるけれど、エキャルを頭に乗せて、毎日恒例の町の巡回に出かける。 と言っても町のあちこちを散歩がてらほっつき歩くだけなんだけど。 拉致監禁された直後によく護衛もなくほっつき歩けますね、と元ファヤンス住民に言われたけど、実際の所グランディールより安全な場所はない。 宙に浮いているグランディールに侵入しようとすれば、まずスキルか騎獣で飛ぶしかない。で、上空から入り込もうとすると、水路が邪魔をする。水路はどうやら雨除け風除け寒さ対策もされているらしく、水路を突き抜けて通ろう

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第87話・名前を付けて

    「お待たせいたしました。書類を……あら」 頭の上の伝令鳥を見てパサレが笑う。「お前、本当にこの方のことを気に入ったのね」「これが?」「頭に乗るのは信頼しているからですよ」「そうなの?」 頭の上に手を伸ばすと、掌に頭をぐりぐりしてくる感触。「では、ここにお名前と印を」「大人しくしててね」 ゆらゆら揺れている伝令鳥にそういうと、ぴたりと動きを止める。「この気難しい子がこんなに好くなんて、本当に運命の相手に巡り合えたのね」 書類を渡された。「この鳥の名前をこの欄に書いてください」「名前?」「ええ。名前を与えて、主従の契約を結ぶ。そういうものでしょう?」「名前……」 まさか入手したその場で名前を付けなきゃいけないとは……。「前の持ち主はどんな名前を付けてたんですか?」「同じ名前を付けることはお勧めしません」 何で? というぼくの顔に気付いたんだろう。パサレは真剣な目でこっちを見た。「名前を与える、ということは、この子に対する全権を名付け親が得る、ということに他なりません。前の飼い主と同じ名でこの子を呼ぶと、この子は果たして自分がどちらに仕えてどちらを愛しているか混乱するでしょう。名前、とは、その相手に責任を持つという一番分かりやすい例なのです」「ちなみに前の飼い主はどのような方でしたか?」「かなり強引な方でしたね。明らかにこの子が嫌がっているのに自分にこそこの子が相応しい、とお金を置いて強引に連れ帰ってしまいました。その後、この子が逃げ帰ってきた時連れ戻せ、でなければ弁償しろと言われましたが、ええ、伝令鳥をただの持ち主のステータスと見做している方にはお譲りできませんとお金と弁償金を叩き返しましたよ」 ……何か、その元の飼い主って、ぼくの知っているヤツのような気がする。 そいつのおさがりと思うと嫌だけど、無理やり連れていかれたのを嫌がって戻ってきたと言われたら、放っておくわけにはいかない。 じゃあ、名前つけないと……。 う~ん……。名前って……言われても……。 緋色か……緋色……緋色……。「エキャルラット」「古語、かな」アパルの言葉に頷き返す。「通称はエキャルかな?」 頭の上でエキャルと名付けた伝令鳥が揺れている。「踊ってる?」「踊ってるねえ」 踊るの?!「ではここにもう一度お名前と印、そしてここに伝令

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第8話・スキル学

    「えっと。アパル、さん?」 綺麗に焼けた焼き魚の身を歯でむしり取りながら、アパルさんは「ん?」と言う顔をした。「スキル学を、勉強してらっしゃったんですか?」「んん? んん、まあ。「法律」なんてスキルのせいか、色々学ぶことが楽しくてね。盗賊に身を落としても勉学だけは捨てられなかった」 身を噛んで飲み込んでから、アパルさんは頷いた。そう言えば宴会前、洞窟から大量の本を家に移動させていた。どうやってあれだけの本を持って出られたのかちょっと不思議な気がする。 それはさておこう。今欲しい情報はそれじゃない。「スキル学って、どんなことを勉強するんですか? 確か「スキル学におけるレベルか上限1

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第7話・炎の舞

     盗賊団の皆さんが感動と号泣と荷運びを終えたところで、ぼくとアナイナがいる家にやってきた。 手に手に、焼けた魚だの炙った干し肉だの多分酒が入った壺だのを持っている。「……えーと?」「飲もう!」「えーと」 シエルさんの端的な言葉に悩んでしまったぼくに、ヒロント団長が笑いかけた。「儂らだけの町を造ってくれたお礼と、儂らのこれからを祝って、宴会をしようと言う話になった。主役は君だ。来てくれるかな?」「そ……」「喜んで!」 ぼくより先にアナイナが返事した。「アナイナ……」「こういう時はね、盛大にお祝いするのがいいの! みんなもそれを願ってるの! 何がどうあってもこの町を造ったお

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     正直、ショボい光景を覚悟して目を開けた。 所詮はレベル1Maxのスキルだ、ボロ家の一軒でも立っていれば大ラッキーという気分で。 ゆっくり開いた視線の先、眼の前にあるのは、門だった。 衛兵がいてもおかしくないような、立派な門。 左右を見れば、城壁と言ってもいい立派な塀。 エアヴァクセンよりも立派な入り口だった。「これ……は……?」「おいおい、レベル1のもんじゃないぜこれは」 盗賊団の皆さんも呆然と入口を見上げている。 アナイナだけが、自分がやったわけでもないのに得意気に胸を張っていた。「ほーら、やっぱり、お兄ちゃんじゃない」 何だその威張り方は。「い、いや、塀だけが立

  • Lv1・Maxからのまちづくり   第5話・町がないなら造ればいいじゃない

     一瞬空気が凍り付き、動き出すのに数秒かかった。「簡単に言ってくれるなお嬢さん」 盗賊団、スキル「法律」のアパルさんが苦笑した。「町を造るには、色々なスキルの持ち主が大勢集まらなければならない。まずお嬢さんは未成年だからスキルもない。そして我々もそのようなスキルはない……」「一応食事には困らないけど、洞窟の中での生活があんたに耐えられるとは思えないけどね」 スキル「食獣」のマンジェさんが不愉快そうな顔をした。確かにそうだよな、家を建てるみたいなスキルがない限り、雨風をしのげるところなんて洞窟とかしかない。聞いた限り、反エアヴァクセン盗賊団の中に家を建てられるスキルはない。「お兄ち

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