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第7話(37)

『病院で診てもらったら、警察に連絡される危険があります。だからこそ、先生に診てもらうしかないんです。……手の出血もひどいし、息遣いも苦しそうで……。数人の人間から襲われたらしいんです。俺が電話で呼ばれて駆けつけたときにはもう、倒れていて』 和彦の良心としては、中嶋の頼みを聞き入れたい。だが、もしこのことを賢吾に知られたときが怖かった。それに、鷹津という刑事に付け狙われているかもしれない状況で、組に知らせず動くのは、危険すぎる。 さすがにそこまで中嶋に説明するわけにもいかず、和彦はひたすら断る。だが、中嶋は引き下がらなかった。『お願いします。俺も、単なる知人や友人なら、先生に診てほしいなんて言いません。だけどその人は、俺にとって特別なんです。ずっと世話になりっぱなしで、何も返せていない。このまま何もしないなんてできません』 和彦が知る限り、中嶋は野心家だ。計算ができる男なりに、和彦の存在は利用価値があると思っているはずだ。ただしその利用価値は、あくまで長嶺組や総和会という後ろ盾があってのものだ。和彦も、中嶋が総和会の人間だからこそ、あれこれと教えてもらっていた。 そんな中嶋が、個人的な情に訴えてきたのは予想外だった。 困り果てた和彦は何度も髪を掻き上げていたが、電話の向こうから絶えず聞こえてくる中嶋の懇願を無視して受話器は置けなかった。「――……君は、診てほしい人間への借りが一つ返せていいかもしれないが、ぼくに対してはどうなんだ? 今度はぼくに対して、借りを一つ作ることになるぞ」『かまいません。先生が必要とするときに、俺は何があっても借りを返します。だから今回は、俺を助けてください』 中嶋が本気で言っているのは、よくわかった。仮にこれが演技だったとしても、騙された自分を責めることはできないだろう。つまりそれぐらい、真剣だということだ。 和彦は乱暴に息を吐き出すと、こう尋ねる。「怪我の状態を、できるだけ詳しく教えてくれ」 電話の向こうで、中嶋が安堵の吐息を洩らした。和彦は一瞬、中嶋には内緒で、長嶺組に事情を説明しようかと思ったが、中嶋が総和
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第7話(38)

 今日はもう、組員が部屋を訪ねてくることはなく、携帯電話での定時連絡があるだけだ。電話に出て二、三言話せば済むので、部屋の電気さえつけておけば、和彦が出かけていることがバレる可能性は低い。――何事もなければ。 エレベーターでエントランスに降りながら、和彦の心臓はドクドクと大きく鳴っていた。近所への買い物程度なら、組員と鉢合わせしても平気だが、さすがに大きなバッグを持った状態では、なんの言い訳もできない。最悪、逃げ出そうとしていると取られるかもしれない。 慎重にエントランスをうかがうが、人の姿はなかった。早足で外に出て辺りをうかがうと、すぐにタクシーを停めて乗り込む。向かう先は、中嶋のマンションだった。** 中嶋のマンションは繁華街のすぐ近くにあった。人と車が行き交う雑多な通りで、夜とはいってもにぎやかだ。 治安に少々不安を覚えそうな場所だが、中嶋のような仕事や、水商売をしている人間にとっては、これぐらいのほうが周囲に気をつかわなくていいのかもしれない。 渋滞に巻き込まれながら、なんとかタクシーをマンションの前で停めてもらうと、和彦は素早く周囲を見回してから降りる。皮肉なもので、渋滞のおかげで背後の車の特定が簡単だったため、尾行がついていないと確認するのは容易だった。 エントランスの前で、到着したと中嶋に連絡を入れ、オートロックを解除してもらう。 部屋があるというフロアまで上がると、中嶋がドアを開けて待っていた。和彦を見るなり、心底ほっとしたような表情を浮かべ、軽く片手を上げた。「……本当に来てくれたんですね」 和彦が歩み寄ると、そんな言葉をかけられる。「あれだけ頼まれたからな。だけど、先にこれだけは言っておく。――少しでも面倒事になりそうだと判断したら、組に報告する。その後の君の立場まではこちらも責任は持てない」 頷いた中嶋に促され、和彦は部屋に入る。「君こそ、いいのか? 総和会に知られたらマズイんじゃないのか」「それで怖気づくぐらいなら、先生に治療を頼んだりしませんよ。俺としては、先生にこうして来てもらうのは、大きな賭けなんです。&helli
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第8話(1)

 秦の顔を見た瞬間、全身の血が凍りつくような気がした。自分の足で立っているという感覚すらなくなったが、手に持っていたバッグを足元に落とした音で、ようやく和彦は我に返る。「彼が……」 硬い声を発すると、隣に立った中嶋が頷く。「電話で秦さんの名前を出さなかったのは、そう頼まれたからです。俺としては、秦さんの名前を出したほうが、先生は助けてくれると言ったんですけど、頑として聞き入れなくて」「それで、ぼくを騙すようにして呼び出したのか」 意識しないまま、和彦の口調は怒りを含んだものとなる。 秦がどうして、電話で自分の名を出すことを許さなかったのか、その理由が和彦にはわかっていた。誰も好きこのんで、リスクを冒してまで脅迫者を助けたりはしない。だからこそ秦はまず和彦を呼び出し、現場で自分の存在を知らせることにしたのだ。 中嶋の様子からして、二人の間に何があったのか関知していないのだろう。つまり中嶋は悪くない。理屈ではそうなのだが――。「先生っ」 和彦が帰ろうとすると、中嶋が驚いたような声を上げる。かまわず行こうとしたが、素早く中嶋が前に回り込んできた。和彦の異変に気づいたらしく、中嶋まで強張った顔をしている。「どうかしたんですか?」 必死の顔で問いかけられ、和彦はわずかに視線を伏せる。「……悪いが、彼は診てやれない。組に隠れて医療行為を行うのは、やっぱりやめておきたい。あとあと面倒になる」「でも、ここまで来てくれたじゃないですかっ」「気が変わった」 中嶋を避けていこうとしたが、すかさず両腕を広げて阻まれる。さすがに和彦も鋭い視線を向けた。「そんなに医者に診てもらいたいなら、救急車を呼べばいい。病院から怪我についてあれこれ詮索されても、彼は組関係者じゃないんだ。警察に連絡されても、なんとでも切り抜けられるだろう」「組関係者じゃなくても、組と繋がりはあります。そこを突っ込まれると、秦さんの立場が危うくなりかねないんです」「それは、ぼくが心配することじゃない」 和彦が言い切ると、中嶋が唇を引き結び、
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第8話(2)

「中嶋くんっ……」「お願いしますっ。秦さんを診てください。先生だから、頼るんです。俺がもっと総和会の中で力があれば、別の方法もあったかもしれない。だけど今は――先生しかいないんですっ」 中嶋は必死だ。このまま和彦が玄関に向かおうとしたら、今度は足にしがみついてきても不思議ではない。見た目は普通の青年でも、本性は切れ者のヤクザだ。相手を従わせる手段など、いくらでも持っているだろう。 それに、あまりに中嶋が必死で、振り切って帰るのは良心が咎めた。賢吾なら、それは良心ではなく、和彦の甘さだと言って鼻先で笑いそうだが。 和彦は軽く息を吐き出すと、部屋に引き返す。「先生……」「一応、君に世話になったという自覚はあるからな」 秦が横になっている部屋に入った和彦は、まず中嶋にハサミを持ってこさせ、破れたワイシャツを切って脱がせる。少し迷ってから、中嶋に手伝ってもらい、スラックスも脱がせた。ベルトで腹部を圧迫したくなかったし、何より、全身の検分をする必要がある。 その間、秦は苦しげな呼吸を繰り返すだけで、目を開けなかった。意識が朦朧としているのか、痛みで目も開けられないのだろうが、和彦は頓着しない。それよりも今は、診察に集中する。 秦の引き締まった体を一目見て、そっと眉をひそめる。顔の殴られた跡からある程度の惨状は予測していたが、それを上回る暴行の跡が残っていた。拳で殴られたものではなく、硬い棒状のものでめった打ちにされてできたものだ。 普通、殴られるとわかったら人は体を丸め、その結果、背や脇腹が傷だらけになるものだが、胸や腹がこれだけひどい有様だということは、秦の体は押さえつけられたうえで、容赦なく痛めつけられたということになる。 秦の体に慎重に触れながら、骨折していないか探る。病院に運べば、内臓からの出血も早期にわかるのだろうが、ここでは、なんらかの異変が出るまで知ることはできない。「……肋骨が折れている」「やっぱり。秦さんをここに連れて来るとき、胸が痛いと言っていたんです」 中嶋に秦の体を少しだけ抱え起こしてもらい、背の怪
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第8話(3)

 独りごちるように和彦が洩らすと、自分に投げかけられものだと思ったのか中嶋が応じる。「俺も詳しいことは何も。ただ、手を貸してほしいと秦さんから電話があって駆けつけたら、ボロボロになって倒れていたんです。どこか別の場所で暴行されて、逃げてきたらしいんですが、相手が何人だったとか、そもそもこんな目に遭った理由はなんなのか、教えてもらえませんでした。ただ、先生に連絡を取るよう指示されて……」「それで素直に従ったのか?」 和彦の口調は、つい呆れたものとなる。それを中嶋は感じ取ったのか、苦い表情を浮かべた。「秦さんは特別なんですよ。借りがあるというより、恩がある。俺が組に入ったばかりの頃、仕事でヘマをやらかして、借金を背負わされたことがあるんです。まだ二十歳そこそこのガキに返すあてなんてない額ですよ。そこで助けてくれたのが、秦さんなんです。組に入れるようお膳立てしたのは自分だから、放っておけないと言って」「金を貸してくれたのか?」「それだと、俺の将来の役に立たないからと、組での金の稼ぎ方を教えてくれました。あっ、ヤバイ方法じゃないですよ。一応、真っ当な方法です。――借金を返せたうえに、俺は組の若衆の中でも、かなりの発言力を持てるようになったんですけど、僻みで人間関係がゴタゴタするのは、ヤクザも堅気も一緒です。そういうのに嫌気が差して、俺は幹部に推薦してもらって、総和会に入ったんです」 中嶋の話を聞きながら、和彦は休みなく秦の怪我を診ていく。右手にしっかり巻かれたタオルを外してみると、さらにネクタイをぐるぐる巻きにしてあった。止血のつもりだったようだ。 刃物でも掴んだのか、てのひらはざっくりと切れており、血が流れ出ている。幸か不幸か、切り傷はてのひらだけのようだ。「彼は、何かトラブルを抱えていたのか? これは、ちょっとしたケンカ程度の傷じゃない」「聞いたことはありません。クラブ経営も上手くいっているようだし、あちこちの組に顔が利くからこそ、秦さんの店で揉め事を起こす人間はいません。……とはいっても、俺も秦さんのことを詳しく知っているわけじゃないんです」 意外に思って和彦がまじまじと見つめ
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第8話(4)

「仲良くしてもらってますけど、けっこう謎が多いんですよ、秦さんは。だからいまだに、秦静馬が本名なのかどうかすら知らない。俺は、実は秦さんが妻子持ちだったとしても、驚きませんね。本当のところ、いろんな組とのつき合いも、どこまで深いものなのか、よくわからない」「……物腰は柔らかで紳士だが、実際はヤクザそのものみたいな男でも驚かない、か?」「まあ、見た目通りの人だったら、したたかに組と渡り合うなんてできないでしょう。だけどその面を、秦さんは他人に見せない。ちょっと怖いですよね。そう考えると」「でも、慕っているんだろ」 和彦の言葉に、真剣な顔で中嶋は頷く。 中嶋と秦と飲んだとき、二人はあくまで仲のいい先輩・後輩、もしくは友人同士に見えたのだが、中嶋の話を聞いて、表情を見ていると、そう単純なものでないことがわかる。崇拝という言葉が頭を過りもするが、それよりむしろ、シンパというほうがより近いかもしれない。 中嶋は、秦という男に何か共鳴するものを感じ、それを守ろうとしているのだとしたら、献身的ともいえる態度に納得できる。 ヤクザの世界の、一種独特な男同士の結びつきは濃厚で、和彦には理解しがたいものがあるが、ヤクザである中嶋と、ヤクザのごく側に身を置く秦の結びつきも、また独特だ。 中嶋と話しているうちに妙な熱に感化されてはたまらないと、和彦はバッグを開け、ひとまずてのひらを縫う準備をする。総和会の仕事で、和彦の治療に同行することが多い中嶋も慣れたもので、こちらが指示を出す前に、処置がしやすいよう秦の手の血を拭き取り、消毒をする準備を調えてしまった。「うちは救急箱すらないので、必要なものがあったら言ってください。すぐに買いに行ってきます」 自分がいると邪魔になると思ったのか、今度はこんなことを申し出てきた中嶋に、和彦は鎮痛剤と冷湿布、コルセットや氷を頼む。実際、すぐに必要なものばかりだ。 中嶋が慌ただしく出ていくと、和彦も仕事をこなすことにする。 キッチンで手を洗って戻ってくると、秦は目を開けていた。和彦を見るなり、唇を歪めるようにして痛々しい笑みを浮かべた。「……中嶋
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第8話(5)

「麻酔薬だ。心配しなくても、美容外科医は、麻酔薬の扱いには慣れている。持病はないな?」 必要以上に素っ気なく応じた和彦は、苦笑しつつも秦が頷いたのを確認してから、傷口に注射針を入れる。「――何があったんだ」 沈黙で間がもたないため、そんな質問をぶつけてみる。案の定、秦は天井を見上げたまま答えない。和彦も本心から知りたいわけではなかったので、それ以上は問いかけず、代わりにこう言った。「中嶋くん、本気で心配していたぞ。いかにも厄介なトラブルを抱えていそうなあんたを、見捨てもせずに自分の部屋に連れ込んだぐらいだ。後輩からの人望はあるみたいだな」「中嶋は、頭が切れすぎるんです。しかも、要領がいい。そのせいか、どことなく他人を見下したようなところがある」 中嶋が他人を見下すという点に関しては、賢吾も同じことを言っていたなと、ふと和彦は思い出した。「だからこそ、自分より頭のいい人間にはすぐに懐きますよ。先生とか。そのうえ、面食いですからね」 じろりと秦を睨みつけた和彦は、麻酔が効いているのを確かめてから、傷口を縫っていく。こんな男のてのひらに、どれだけ無様な縫い目を作ってもいいと思いながらも、美容外科医のプライドとして、いい加減な仕事をするのは我慢できない。「――先生」「縫っているときに話しかけるな、気が散る」「黙って聞き流してください。……中嶋に、先生と連絡を取るよう頼んでおいてなんですが、正直、先生が来てくれるとは思っていませんでした。嫌われたという自覚はあるんですよ」 和彦はちらりと視線を上げ、秦に鋭い視線を向ける。いつもと変わらない穏やかな口調で話している秦だが、手の怪我は麻酔が効いていても、他の部分が痛んでいるのだろう。苦しげな顔をしている。「中嶋くんに感謝するんだな。連絡してきたのが彼じゃなきゃ、ぼくは引き受けなかった」「そうなったら、〈あのこと〉で脅すつもりでした」「……傷口の縫い目をジグザグにするぞ」 短く噴き出した秦だが、それが肋骨に響いたらしい。すぐに呻き声を上げた。少しだけいい気味だと思いながらも和彦は、処
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第8話(6)

 縫った跡を消毒してから、しっかりとガーゼを当てて包帯を巻く。風呂には入るなと言いかけたが、この体では入りたくても不可能だろうと思い、和彦は別のことを口にした。「中嶋くんが戻ったら、体中に湿布を貼ってやる。多分今夜、熱が出るぞ。それと、胸も圧迫して固定するから、しばらくは不自由するだろうな」「それで、先生が通ってきてくれるんですか?」「一度だけだ。これで、彼に対する義理は果たした」「わたしに対しては、何もなしですか」 和彦が睨みつけても、秦は薄い笑みを浮かべるだけだ。肋骨が折れている辺りを殴りつけたい衝動に駆られたが、そんなことをしてあとで中嶋に非難されるのは嫌だった。秦はともかく、中嶋との繋がりを断つ気はないし、関係を険悪にもしたくない。 中嶋が戻ってくるまで別の部屋にいようと、和彦が黙って立ち上がりかけたそのとき、突然、秦が急に呻き声を洩らして片手で胸を押さえた。包帯を巻いたばかりの右手も動かそうとしたので、それを見た和彦は慌てて秦の上に覆い被さり、右腕を押さえる。「縫ったばかりなんだから、動かすなっ」 折れた肋骨が肺に刺さっていたなら、とっくに苦しんでいたはずだと思いながら、秦の胸元に手を押し当てようとする。すると、その和彦の手が、反対に掴まれた。 ハッとして目を見開いた和彦の前で、秦が薄い笑みを浮かべる。店で和彦を嬲ってきたときと同じ、したたかな笑みだ。 医者として秦と接していた和彦も、さすがに状況を理解した。「……騙したんだな」「痛いのは本当ですよ。――痛くて、苦しくてたまらない。本当はこうして話すだけでも、脂汗が滲んでいます」「だったらおとなしくしていろ」 和彦は秦の上から退こうとしたが、しっかりと手を握られているため、動けない。怪我人の手を振り払うことなど本当は容易いのだが、ひどい有り様の体を見下ろしていると、手荒なまねができない。「先生は、優しいですね。いや、甘いのかな」「その甘さに付け込むのが、あんたの手口だろ」「――悪い男ですから、わたしは」 悪びれることなくヌケヌケと言い切った秦が、包帯を巻いた右手
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第8話(7)

 本人が言う通り、秦の額にはじっとりと汗が滲んでいた。折れた肋骨どころか、全身が痛くてたまらないのだろう。「……中嶋くんが鎮痛剤を買ってくるまで、黙っていろ。市販のものだから、そう強い効き目は期待できないだろうが、少しは楽になる――」 秦の右手が後頭部にかかり、和彦は全身を強張らせる。ゆっくりと頭を引き寄せられると、逆らえなかった。それどころか、秦の胸に体重をかけないよう、必死にベッドに手を突いて自分の体を支える。 これは、和彦の優しさでもなんでもない。患者に対する医者としての当然の気遣いだ。そこを秦は逆手に取った。「先生なら、暴れませんよね? わたしは今、肋骨が折れていて、てのひらは縫ったばかりです。先生がちょっと抵抗するだけで、ひどいことになる」「それは……、自業自得だ」「なら、態度で示してください」 さらに頭を引き寄せられて、息もかかるほど間近に秦の顔が迫る。あっ、と小さく声を洩らしたときには唇を塞がれていた。 反射的に頭を上げた和彦だが、秦が顔をしかめる。それだけで、和彦はもう動けなくなる。途端に秦はニヤリと笑った。まだ麻酔が効いているので、てのひらの傷が痛むわけがないのだが、麻酔が効いているからこそ、縫ったばかりの傷に負担をかけられない。「――わたしが満足するまでキスしてくれたら、おとなしくしますよ」 そう言った秦の表情は、普段の優雅さはなく、やはり苦しげだ。 ヤクザだけでなく、ヤクザの世界のごく近くに身を置く男も、まともではない。そう思いながら和彦は、間近から秦を睨みつける。それでも、再び頭を引き寄せられて唇を塞がれても、今度は身じろがなかった――身じろげなかった。 すでにもう発熱しているのか、やけに熱い秦の唇と舌が、和彦を求めてくる。唇を吸われ、こじ開けるようにして口腔に舌が侵入してくる。感じやすい粘膜を柔らかく舌先でまさぐられ、歯列をくすぐられてから、下唇と上唇を交互に吸われていた。 戸惑うほど穏やかで、優しいキスだ。だが、官能的だ。 体の奥が熱くなるのを感じ、和彦はわずかにうろたえながら、秦と間近で見つめ合う。すると、唇を
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第8話(8)

 秦が洩らした熱い吐息が唇に触れ、再び秦の舌を口腔に受け入れてしまう。それどころか――。「んっ……」 舌先が触れ合い、探り合っているうちに、秦に舌を搦め捕られていた。握られていた手が放され、秦の左手が和彦が腰にかかる。この瞬間、ゾクリとするような疼きを感じた。 本意ではないものの、秦と緩やかに舌を絡め合う。妙な脅迫による口づけを終わらせるためには、やむをえなかった。 そのうちに、後頭部にかかっていた秦の手が退けられる。同時に熱っぽい吐息を洩らし、つらそうに目を閉じた。 和彦は少々意地の悪い気持ちになりながら、やっと体を起こす。「……先生に生気を分けてもらえました」 掠れ声で秦がそんなことを言い、本気で和彦は呆れた。本来は殴りたいところだが、代わりに秦の乱れた前髪をさらりと梳いてやる。「話して痛みを誤魔化そうとしているだろ」「わかりますか?」「――余計なことを言う前に、中嶋くんが戻ってきたら、きちんと礼を言えよ」 秦がちらりと笑みをこぼす。「先生は優しいですね」「おかげで、ヤクザに付け込まれてばかりだ」 苦々しく和彦が応じると、秦は短く声を洩らして笑った。** 必要なものを買い揃えて中嶋が部屋に戻ってくると、和彦は冷湿布を貼るなどして必要な処置を手早く済ませる。胸を固定するためコルセットを装着した秦の口に、鎮痛剤を放り込んでやり、今後の対応をメモに書き記して中嶋に渡した。 さすがに夜の定時連絡を済ませたとはいえ、部屋をいつまでも空けておくのは心配だったため、中嶋とゆっくりと話す余裕もなかった。それに、秦との間に何があったのか、悟られるのが嫌だったというのもある。 何かあれば携帯電話に連絡するよう、新しい番号とメールアドレスとともに中嶋に言っておいたが、帰宅した和彦がシャワーを浴びて出てくると、さっそくメールが届いていた。秦の容態に問題が起きたというわけではなく、丁寧な礼のメールだ。 中嶋には申し訳ないが、返信を送った和彦は、即座にそれらのメールを削除する。長嶺
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