吹く風
雨宮暁景(あまみや あきかげ)と結婚して七年目、彼は外で若くて生気あふれる女子大生を囲っていた。
誰もが言っていた。棣棠朝美(ていとう あさみ)は彼の唯一の愛する人で、命よりも大切にしている存在だと。
けれど彼は、その少女を腕に抱きながら、あっさりと言い放った。
「朝美?あいつはどうでもいい。結婚して七年も経てば、残るのは家族愛だけさ。いま一番愛してるのは、君だ」
それを知って、朝美は心の中で七日間のカウントダウンを始めた。
離れる日、暁景はまだ、自分の不倫が完璧に隠されていると信じて疑わず、朝美が戻ってきて自分の手作り料理を食べるのを待ちわびていた。
だがその頃、朝美はすでに人波の中へと姿を消して、静かにこの世界から身を引いていた。
それから、朝美に飽きたと言っていた暁景は、正気を失った。
すべてを投げ打ち、彼女を探して街をさまよい、すれ違う人々に必死に問いかけた。
「俺の妻を見なかったか?棣棠朝美っていうんだ。俺の一番愛する人だ!」
そして気づけば、彼は道端に座り込む浮浪者となって、彼女は誰よりも輝く存在になっていた。
それからの彼は、人生のすべてを懺悔に捧げることになった......