あなたを離れて、よかった
「宿主、あなたはすでに伊賀修司(いが しゅうじ)の攻略を8回挑戦していました。現在の好感度は99%。これまでで最高の数値です。
もう一度攻略すれば、成功の確率は極めて高いと予測されます!
9回目の攻略を選びますか?それとも、リスクを取って攻略対象を変更しますか?」
システムの声を聞きながら、白鳥暖子(しらとり あつこ)はこれまでの8度の攻略を思い出した。
どんな身分で近づいても、修司には毎回、正体を見破られてきた。
最初は地震の中、彼を助けて命を落とした。
そのときは、ほんの少しだけど、彼も悲しんでくれた。
でも、彼が暖子が「復活」して再び自分に近づいてくるのを知ってからは、少しずつ彼女を人間として見なさなくなった。
7回目の死は、別荘の火事だった。
彼は、本命の飼い犬を助けに行けと命じた。
炎に焼かれて死んだあの痛みは、今でも思い出すだけで体が震える。
目を閉じて、かすれた声で暖子は答える。
「はい、変更する」
「了解しました。9回目の転生後、新たな攻略対象に変更します」
……