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第7話

ผู้เขียน: 霜晨月
last update วันที่เผยแพร่: 2026-06-25 21:08:40

綾音はみるみるうちに目を潤ませ、次の瞬間には大粒の涙を頬に伝わせた。

「全部、私のせいなんです……。

本当の家族に会いたくてたまらなかったんです。やっと本当の両親が誰なのか分かったと思ったら、もう亡くなっていると知らされて……。

しかも、叔母さんも同じ車に乗っていたと聞いてからは、何日も食事が喉を通らなくて、夜も眠れませんでした。

私はもう両親を失っています。これ以上、叔母さんまで失うわけにはいきませんもの。

それで当時の病院について調べたら、叔母さんは亡くなってはいないけれど、植物状態のままで、もう目を覚まさないかもしれないと知ったんです」

「かわいそうに……。あなたは一人じゃないわ。私たちがいるじゃない」

真っ先に口を開いたのは大奥様だった。ハンカチで目尻を押さえると、従妹へたしなめるような視線を向ける。

「せっかくのお祝いの席なのに、そんな縁起でもない話を持ち出すなんて」

従妹は舌をぺろりと出した。

「だって、気になったんだもん……」

平蔵は軽く咳払いをし、昴へ視線を向けた。

「この件については、もう調べがついているのか」

昴は静かに頷く。

「私の不手際です。ご報告が遅れました。早紀さんは頭部に重傷を負い、現在も治療を受けています」

深雪は胸を痛めたような表情で綾音の肩を抱き寄せた。

「その方は……まだ目を覚ます可能性があるの? 綾音にとって、たった一人の血のつながった身内なのに……」

昴は淡々と答えた。

「医師の話では……希望を捨てない限り、奇跡が起こる可能性はゼロではないそうだ」

平蔵はゆっくりと頷いた。

「よし。その人をグループ傘下で最も設備の整った病院へ転院させなさい。費用はすべてこちらで負担する」

深雪は安堵の息をつき、綾音へ微笑みかけた。

「聞いたでしょう? 神崎家がついているんだから、叔母様もきっと目を覚ましてくださるわ」

綾音は感極まったように涙を流した。

「ありがとうございます、お祖父様、お祖母様……お父様、お母様」

「お礼なんていらないわ。私たちは家族なんですもの」

深雪は愛おしそうに綾音の頭を優しく撫でた。

皆が温かな眼差しで見守る中、母と娘は固く抱き合った。

その場にいる誰もが、目の前の光景に胸を打たれていた。

――ただ一人、澪だけを除いて。

彼女は表情一つ変えず、食卓の隅で静かにジュースをひと口飲んだ。

綾音の危機対応は確かに鮮やかだった。

だが、一つほころびを繕えば、別の場所からまた糸がほつれるものだ。

焦る必要はない。

これはまだ、すべての始まりに過ぎないのだから。

だが澪は気づいていなかった。

今この瞬間、長い食卓の向こう側から、一人の男が彼女に視線を奪われていることを。

先ほどから修の意識は、食卓の隅に静かに座る澪へ引き寄せられたままだった。

思考は数時間前へとさかのぼる。

――その頃、彼は自宅の書斎で、澪に関する調査資料に目を通していた。

貧しい家庭に育ち、成績は中の下。

性格は陰気で口数も少ない。

中学二年から生活費を稼ぐために働き始め、学校へ通いながら三つのアルバイトを掛け持ちしている。

写真の中の少女は肩まで伸びた髪を下ろし、重たい前髪で顔の半分を隠していた。

整った顔立ちとは言い難く、どこか生気のない目をしている。

家庭環境も、学力も、容姿も――。

すべてが「平凡」の一言で片づくような少女だった。

だが今日、実際に彼女を目にして、修は初めて思った。

世の中には、ここまで写真写りの悪い人間がいるものなのか、と。

今の澪は、淡い月白色のワンピースをまとい、漆黒の長い髪を頬の横へさらりと流している。

ただ静かに座っているだけなのに、その佇まいには俗世から切り離されたような、どこか現実離れした空気が漂っていた。

調査資料に記された「平凡」という評価と、目の前の彼女の静謐な存在感。

その落差はあまりにも鮮烈だった。

――この女は、一体何者なんだ。

***

晩餐会が終わり、客たちは次々と帰路についた。

修が立ち上がり、平蔵へ別れの挨拶をすると、綾音が優雅な足取りで歩み寄り、細長いベルベットの箱を差し出した。

「修、今日はわざわざ来てくれてありがとう。ほんの気持ちだけれど、受け取ってちょうだい」

修は気だるそうに一瞥しただけで、手を伸ばそうとはしなかった。

「気を遣わなくていい。九条家と神崎家は代々の付き合いだ。家族みたいなものなんだから、贈り物なんて必要ない」

綾音の笑顔がわずかに引きつき、差し出した手が宙に浮いたまま止まる。

その空気を察したように、昴が口を開いた。

「家族同然だからこそ、礼は尽くすべきだろう。そうじゃないか、修くん」

そう言うと、昴は有無を言わせず、修の後ろに控えていた執事・田中へ箱を押しつけた。

修は片眉を上げただけで、それ以上断ることはせず、玄関へ向かった。

駐車場へ出る。

夜の帳がすっかり下りた中、九条家の黒いセダンのそばに、一つの人影が立っていた。

最初は使用人の誰かだろうと気にも留めなかった。

だが近づいた時、不意に横から声がした。

「修」

はっと振り向くと、夜の闇の中、白い服をまとった澪が真っ直ぐ彼を見つめていた。

「こんなところで、こそこそ何をしている」

「待っていたの」

澪は静かに答えた。

「誰を?」

「九条家の車の前に立っているのに、誰を待っているのかって聞くの?」

澪は無垢な瞳をぱちりと見開き、小さく首を傾げる。

「あなた以外に、誰がいるの?」

「俺を待っていただと?」

修は鼻で笑った。

一歩踏み出し、バン、と車のドアへ手をつく。

身を少しかがめ、自分の身体と車のドアで澪を囲い込んだ。

「さっきの晩餐会じゃ、俺のことなんて知らないって顔をしていたくせに。今度は駐車場まで追いかけてきて待ち伏せか?」

声を潜め、その響きにはからかうような色が混じる。

「それとも……あの平手打ちを思い出したのか? 神崎のお嬢様」

その瞬間、澪の胸の奥に鋭い痛みが走った。

前世で味わった裏切り。

屈辱、怒り、後悔――。

さまざまな感情が渦を巻く。

澪は両手を強く握り締め、その感情を必死に押し殺した。

「さすが修様。記憶力がいいのね。でも、あの平手打ちよりも、私が気になっているのは……」

そう言って彼女は手を伸ばし、指先をそっと彼の胸元へ添えた。

「今のあなたの鼓動……少し速いみたい」

修は一瞬、言葉を失った。

理由もなく喉が渇く。

澪のような突然現れた隠し子など、これまで何人も見てきた。

純白の紙のように世間知らずな者か、礼儀も常識も知らない下品な者か、そのどちらかだった。

だが目の前の女は、そのどちらにも当てはまらない。

彼女は海のようだった。

表面は穏やかでも、その底がどれほど深く、どんな嵐を秘めているのか、誰にも見抜くことはできない。

修は苛立たしげにネクタイを緩めた。

その何気ない仕草を見るたび、澪の指先は無意識に小さく丸まる。

それは、この身体に深く刻み込まれた、生理的な反応だった。

前世の歓迎会で、澪は緊張のあまりスープをこぼし、ワンピースを汚してしまった。

その場にいた全員の笑い者になり、宴の後、一人庭の片隅へ逃げ込んでは、壁に向かってこっそり涙をぬぐっていた。

その時、修が目の前に現れ、何も言わずにポケットティッシュを差し出してくれた。

おそらく修にとっては、ほんの気まぐれだったのだろう。

だが当時の澪にとって、それは暗闇に差し込んだ一筋の光であり、溺れる者へ差し伸べられた救いの手だった。

その小さな優しさが、澪の心に「依存」という名の種を植え付けたのだ。

あの日と今が、重なって見える。

違うのは、二人の立場だけだった。

もはや見下ろす者と見上げる者ではない。

澪は大胆にも彼の耳元へ顔を寄せ、吐息のような声で囁いた。

「怖いの? それとも……興奮してる?」

修の呼吸が止まる。

九条家の御曹司として、彼は礼儀正しい令嬢たちを数え切れないほど見てきた。

だが、これほどあからさまに牙をむいてくる女は、一人としていなかった。

思わず彼は澪の手首を強く掴む。その力は自分でも驚くほど強かった。

「お前……一体、何者なんだ」

澪はじっと彼を見つめ、薄い唇をわずかに開いた。

「私が何者かなんて……」

その瞳は静かに揺れることなく、まっすぐ修を射抜く。

「あなたが一番よく知っているはずでしょう? 九条修」

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