捧げた想いは、届かなくて
誕生日当日。
六年付き合った恋人、柏木恒一(かしわぎ こういち)は、私にプロポーズするはずだった。
だが現場に駆けつけた私が目にしたのは、本来なら私のために用意されていたはずの指輪を、別の女に差し出す彼の姿だった。
恒一は、悪びれる様子もなく淡々と言った。
「恩師の奥様が不治の病なんだ。最期を迎える前に、優月(ゆづき)の花嫁姿を見たいそうなんだ。いい子で待っていてくれ。長くても三か月だ」
――その一か月後。
私は栄都市随一の富豪と盛大な結婚式を挙げた。
式場に駆け込んできた恒一は、息を切らして復縁を懇願した。私は薬指に輝く十カラットのダイヤをひらりと掲げ、微笑んだ。
「悪いけれど恒一。私、もうあなたに割く時間はないの。どうぞ大人しく列に並んでちょうだい。来世なら、まだチャンスがあるかもしれないわよ」