主人公、アンジェリカ=シアースミス侯爵令嬢はクリフトン=マクファイル侯爵令息と婚約。 ところで、アンジェリカには義妹が…自分のものを悉く盗っていく義妹。クリフトン様も奪われるのでは…。なんて不安もありました。 嫌なことというのは当たるもので、義妹のヘレナとクリフトン様が婚約することに私とは婚約破棄。 私が継ぐはずだったのに、クリフトン様が家を継ぐことになり、私は最悪家からも追い出されることとなりました。
もっと見る実際に‘婚約’ということってあるんだなぁ。と思ったと同時に、私はこの時とても幸せでした。
政略結婚じゃないのに、婚約…。なんだか照れ臭いなぁ。
私はこの国ゴールリード帝国の侯爵令嬢です。名前をアンジェリカ=シアースミスと申します。
今日婚約したのは、同じ侯爵位の侯爵家なのですが、次男の方なのでいずれは我が家に婿入りを希望してらっしゃいます。なんか恥ずかし~!!
あ、名前ですね。クリフトン=マクファイル様です。
帝国は16才まで教育を受ける義務があるので、学園に二人とも通っていたのですが、そこで互いに一目惚れです。きゃー、恥ずかしー!!
「アンジェリカ、今日から君の家に住み込んでいいだろうか?」
「お父様の許可が必要ですけど?」
気が早いですよ~!でもまあ吝かではない自分がいるのも確かなんですけどね。
「あ、それと顔合わせの時にいたと思うんですけど私の義妹…」
「ああ、君の父君は再婚だと学園の時から言っていたね」
そうなの。その義妹が私のモノをなんでも持って行くのよ。油断するとクリフトン様すら義妹に奪われるんじゃないかと思う。
義妹の名前は、ヘレナ=シアースミス。庇護欲をそそるような声色に上目遣い。そのあどけなさとのギャップを感じさせるような豊満な体つき。
……正直言って私はこの義妹が苦手でならない。
お父様も「ヘレナという妹が言ってるんだ。姉としてもっと寛大に接したらどうなんだ?」
と言い、ヘレナが私の部屋からいろんなものを持って行くことを止めないし、咎めない。おまけに「お姉様のドレスはお胸のところがきつくって~」とかお父様の前でも平気で言うし。それなら、持って行かないでちょうだい。と思う。
あ、義妹の事を考えるとイライラして仕方ないわ。
こんなに幸せな日なのに!
「君の父君の許可をもらったよ。シアースミス家の領地経営について勉強するのが交換条件みたいな感じだけど。領地経営についてはもともと勉強するつもりだったから、交換条件でもなんでもないかな」
そう言って私に微笑みかけてくれるクリフトン様がとても素敵だと思った。
―――そう思っていたのに……。
「おねーちゃんごめんねー。でも好きになっちゃったんだもん、仕方ないでしょ?」
開き直られても。―――予想が当たってしまった。義妹が私のモノ…婚約者であるクリフトン様を私から奪った…。
「アンジェリカからヘレナに変わっただけで変わりはないよな?俺がこの家を継ぐ」
そんなわけないでしょ?
「アンジェリカの父君も同意してくれたことだ。つまり君とは婚約破棄」
えーと、つまりヘレナは義妹だからシアースミス家の血は入ってないわけだし、クリフトン様にいたっては全く別の家。
シアースミスの血が途絶えるという事になるけど、お父様は本当にそれでいいのかな?
「直にお父様に聞きに行く!」
「それはダメだ!」
「そうよ。お父様は今は感染性の病に臥しているのよ?」
最近初めて聞いた。
「どうして私は今初めてお父様の容体を聞くことになるの?」
「うふふっ。それは、お姉様が不要だからよ。この家からも出ていってもらいたいわ」
私はどうやって生きて行けばいいの?
「ただいま。女将さん」「どうだった?陛下なんて平民のわたしゃ雲の上の人過ぎて実感がないよ」「アハハ。ちゃんと存在する方ですよ。とってもいい方でした。いろいろ許可をいただきました」 いろいろの中にはシアースミス家当主を毒殺しようとした罪をどうするのかという事ももちろん含まれています。あの二人、ヘレナとクリフトン様。 ヘレナはいろいろ欲しがり過ぎだから、煩悩退散で修道院送りが相当だろうという事になった。 クリフトン様は貴族で楽をしたかったのだろうということで、鉱山夫送りとなった。皮肉にも宝石の原石を採掘する鉱山夫。どんなに宝石を採掘しようとも自分のものにはならない。 その日の営業中に私と騎士団長の婚約を騎士団員たちに報告した。「なんだよ~。やっぱり団長、アンジーちゃんを口説いたんじゃないか!」「団長ならアンジーちゃんも幸せになるだろうなぁ」 と、かなりの団員に祝福されたのでよかった。「俺は結婚しても生涯騎士団長だからな!」「あ、それからもう一つ報告」「まさかアンジーちゃん…子供が…」「そんなんじゃないですよ!」 そこは全力で否定させてもらう。殿下の沽券にもかかわる。「私、実は本名アンジェリカ=シアースミスって貴族なんです」「…シアースミスってこないだド派手な結婚式してたよな?」「恥ずかしながら義妹です」「だよなぁ。アンジーちゃんの実の妹だったらショックだわ~」 かくかくしかじかと団員さん達にも説明しました。「マジかよ~」「俺は義弟であんな感じだったら。斬っちゃうかも」「殺人は割に合わないから、ボコるだろうなぁ?」 皆様かなりのお怒りです。「似てないよな~」「アンジーちゃんの方が絶対に美人だ!」「「「「そうだ、そうだ!」」」」 あの~、見た目とかじゃなくてですねぇ。「そんなわけで、陛下ともご相談の上、二人の処分についても話してあるんです。安心してください」「「「「処刑だ!処刑だ‼」」」」 皆さん過激です。気持ちはわかるんですけど。「処刑はダメですよ!」「アンジーちゃんは優しいなぁ」「聖母みたいだ」 とか言われたけど、内心は「処刑は一瞬で罪の意識なんか感じる時間ないじゃない?だったらじわじわと嫌がらせのように永遠と続く処罰の方がいいのよ」と思っていたんだよね。言わないでおこう。 私は既に皇宮にお部屋
今回もグレイ様からドレスが届いた。 自分に合わせて、微調整をし、また女将さんにドレスを纏った姿を見てもらった。「いやぁ、流石だね。アンジーはキレイだよ!自信を持って行っておいで!」「女将さんに言ってもらうとなんだか勇気が出ます!頑張ります!行ってきます‼」 そう言って、今回も迎えに来たカールにエスコートされて馬車に乗り込んだ。「前よりも馬車が豪華な気がするのは気のせいですか?」「アンジェリカ様はほぼ殿下の婚約者様ですから、特別待遇となります」 なるほど。 今回も車窓から外を眺めていると、皇宮についた。 カールのエスコートで馬車から降りたのですが、それを見たグレイ様はなんだか不機嫌です。 ――――このドレス、あんまり似合ってないのかなぁ?女将さんは褒めてくれたけど。 カールがグレイ様をつついて、覚醒させてくれました。「ああ、あんまりキレイで呆けてしまったよ。すごく似合ってるよ!」「グレイ様は今日も素敵です」 よくよく見ると、なんだかペアルック?そういう風に作ったの?「さあ、応接室に行こう。父上…じゃなかった。陛下達がお待ちかねだよ」 え?私はお待たせしてしまったの?「お久しぶりです。アンジェリカ=シアースミスです。本日はお時間を儲けて頂きありがとうございます。なんでも私がお待たせしてしまったとか……」 なんたる恥というより、申し訳なさ!お忙しい中時間を作ってくださっているというのに、お待たせしてしまうなんて!「久しぶりだな、アンジェリカ嬢は。ちょっと見ないうちに美しく成長したものだな」「光栄に御座います」「なんでもうちのグレイと婚約するとか?」 皇后陛下もお美しい!見惚れてしまいます‼「娘からはそのように聞いています。おい!アンジェリカ‼」「すみません。皇后陛下がお美しく、見惚れてしまいました」「まあ、お上手ね」 実際にトリップしてたんだけど…。「グレイ様との婚約をお許しいただきたく参上しています」「「いいわよ~」」 軽い!軽すぎる‼「グレイ様には我が家門に臣下として下っていただく予定でして…。構いませんか?」「いいね。いや~、どこの公爵家も下るには丁度いい年頃の子がいなくて困ってたから、逆にこっちからグレイで良ければ…みたいな?」「グレイ様は騎士団長を続け、うちのアンジェリカが領地経営をするという形
「それから、もう一つ重要な話なんだが…アンジェリカ嬢と私の婚約を認めていただきたい」「アンジェリカでよろしければ喜んで!アンジェリカもこの事は知っているんだろ?」「ええ、まぁ」 恥ずかしいわねぇ。「よろしければ、私がシアースミス家に臣下として下るつもりです」「よろしいのでしょうか?我が家門は侯爵家ですよ?王家に縁のある家門ではないのですが?」「しかし、歴史ある家門だ。私はこのまま騎士団長として次期国王を支えていくつもりだから、アンジェリカ嬢には領地経営をしていただきたい。社交は……ケースバイケースとなるだろうけどそのような形となるが?」「我が家にとっては非常に有難いお話です。陛下にはお話は?」「まだしていない。貴殿の意識が回復し次期当主が決まったら話ができるだろうと思い、話はしていない」「確かに、ヘレナが次期当主の場合はアンジェリカは婚約後皇宮住まいとなっていたでしょうね。確率は低い話ですが」「それでも確実ではなかったので、貴殿の許可を取った上で陛下に話をしようと考えていた」「あの~、その陛下に話をする時には私も一緒という事になるのでしょうか?」「「そうだろう?」」 男二人に言われた。 後日、シアースミス家からはお父様と私。王家からは陛下と皇后陛下にグレイ様の5名で話をすることとなった。 陛下と皇后陛下が親しみやすい方だといいな。「お父様!私は碌にドレスを持っていません。今着ているドレスだって今日のためにグレイ様が用意してくれたものです」「すまない。お前のものはヘレナに盗られたんだろ?」「そうですよ!後日、着るものはどうしたらいいのでしょう?」「そうだな。私も皇宮にいるからどうにも動けないしな…」 お父様に言っても仕方なかった。やはり、背に腹は代えられない!グレイ様に頼むとしましょう。「グレイ様、後日顔合わせの際に着るドレスを持っていません。グレイ様、すみませんがなんとか調達していただけませんか?微調節は自分でします!あと、お父様が着る服もついでにお願いしたいです。陛下に顔合わせとなると、緊張する……」「そこらのオッサンに会うと思えばいいよ。ドレスね。また送っておく。着てる姿を楽しみにしてるよ」 と、つむじにキスを落とされた。 うわーっ、ちゃんと髪はキレイだよね?臭いとか嫌だよ? 陛下……久しぶりだなぁ。グレイ様の
「なかなかに過酷な人生だな。ヘレナ嬢があんな常識外れなのはシアースミス現当主殿の責任があったりもするわけだな」「そうですね。それでも、当主の座だけはヘレナに譲る気はなかったと思いますよ。あんな常識外れの子」「だよなぁ。ところで、俺が第2皇子なのは知ってる?」「はい。団員の方に教えていただきました」「長男が健康で知識・教養・マナーとか完璧なんだよ。だから俺に王位が回ってくることはないだろうな。兄貴は立派な皇帝になる」「グレイ様はこのまま騎士団長として次期皇帝を支えていくつもりなんですね。素敵なご兄弟です」「でだ。アンジェリカが俺と婚約してくれないかなーと淡い期待をするわけなんだが?」 え?皇子妃?急すぎない?「えーと、それはお父様の意識がはっきりしてからですね。私が次期当主となる場合、グレイ様はシアースミス家に臣下として下るんですか?」「ああ、そのつもり。当主っていっても、名前がアンジェリカ=オールディントンと言う名前になってもらうけど?グレイ様は騎士をするんですよね。領地経営とかは私がするんですね」「そのつもり。もし、次期当主に本当にヘレナ嬢を指名した時はアンジェリカは城で暮らしてもらう。シアースミス家の没落は惜しいけど、そこは当主の選択だからやむを得ない」「要約すると、私の名前がアンジェリカ=オールディントンに変わる。次期当主の指名によって私の住む場所が変わる。でしょうか?」「そうだ」「いずれにせよ、お父様の意識がはっきりしてからですね」「そうだな」 数週間後、お父様は王家の一室で意識を取り戻した。自分がヘレナに殺されそうになっていた事など、事細かにグレイ様から聞いたようだ。「殿下に申し上げます。私は誓ってヘレナのような破天荒な娘に当主の座を譲ろうとは思っていません!」「そうだよなぁ。殺されかけてるし?」「そこまでするとは思わなかったのですが、そこまで当主の座が欲しかったのでしょうか?」「ヘレナ嬢はアンジェリカ嬢が手にするモノを奪うことに喜びを感じるという厄介な性癖を持っているようでなぁ。心当たりはあるか?」「はぁ。それで、なにかとアンジェリカの持ち物を私にねだったりしていたのか…。愚かにも私はアンジェリカを責めるような事を言ってしまったが」「貴殿に問いたいのだが、今後次期当主の座は誰に渡す予定だ?」「もちろん、アンジ
後日、本当に団長に招待された。 ドレスを持っていないことわかったのかな?ドレスをプレゼントされた。サイズがちょっとあっていなかったので、自分で手直しをしました。「団長から自宅に招待するとは聞いていたんですけど、まさかの皇城。ドレスを持ってないって察してくれたのかな?プレゼントだってコレを…」 女将さんに着ている姿を見てもらった。「アンジー、キレイだよ。なんかこう、貴族って感じがするねぇ。アンジーだからこんなにキレイなんだろうね。私がそのドレス着たらってサイズが全く合わないね。というより縫い目がはち切れるかアッハッハッハ」 喜んでくれるのでなんか嬉しい。貴族にとってドレスは戦闘服。 明日は招待された日だ。 皇城から馬車で迎えが来るらしい。まあ、まさかドレス姿で徒歩で皇城まで行くのは変だ。 翌日、本当に馬車が迎えに来た。「皇城よりアンジェリカ嬢を迎えに参りました。カール=ラドンと申します」「初めまして。私はアンジェリカ=シアースミスと申します。以後お見知りおきを」「流石は殿下が招待するだけのお嬢様でいらっしゃるお美しい」「まあ、お上手」「それじゃあ、女将さん。いってきま~す!」 馬車なんて久しぶり。「えーと、カール様?」「しがない従者ですのでカールとお呼びください」「カール、皇城までどのくらいかしら?」「そうですね、20分くらいでしょうか?」 20分あれば結構色んなことが出来るなぁと思いながらも、流れる景色をみながら皇城へと馬車に揺られていました。酔わなくて良かった。久しぶりだから酔うかと思った。「アンジェリカ嬢、待っていた。早速だが、応接室まで案内しましょう」「ゴフンッ、我が主よ。その前に言う事があるでしょうに」 カールは顎と目で頑張ってグレイ様に合図を送っていた。「あー、遅れてしまったがそのドレス。とてもよく似合っている。サイズは合っていたかな?」「あ、ちょっと大きい部分など自分で調整をしました」「アンジェリカ嬢は自分で調整もできるのか!」「そういう境遇でしたので」「なんだかすまないなぁ。さっさと応接室まで行こう」 久しぶりに履いたハイヒールは結構痛い。靴擦れを起こしたのかな?「シアースミス現当主についてだが、王家の権力で王家で保護している。床に臥しているというのは事実のようだ。その原因だが、何者かに
昨日、というか今朝まで大騒ぎしていたわりに店の中は非常にキレイだった。女将さんに聞いたら。「最後は酔っぱらった状態だったけれども、騎士様達に自分たちで汚した分をキレイにしてもらた。なんか酔っぱらって「誰が一番キレイにできるか勝負だー!」とか言い始めてさ。そしたらみんな全力で掃除を始めて、こんな感じ」 なるほど。お酒の力ってスゴイな。 昼になったらランチタイムで店を開けることとなった。「あら、騎士団長様。いらっしゃいませ。今日も本日のおすすめで構いませんか?」「ああ、それでたのむ。アンジーはいるか?」「アンジー!」「はーい!」「騎士団長様がお呼びだよ!」 私なんかしたかしら?騎士団の皆様を誑かした?いやいや、そんなことはないと女将さんが証言してくれるはず。「団長様、お呼びですか?なんでしょう?」「単刀直入に言おう。アンジェリカ=シアースミス」「私は家を追い出されましたのでシアースミスではありません」「ではアンジェリカは確定か…」「ここではアンジーでお願いします」「このままではシアースミス家が乗っ取られた挙句に没落する」「そうでしょうね」 ヘレナの見栄っ張りをコントロールできなければ散財した挙句に借金を重ねて没落でしょうね。「ヘレナ嬢と当主殿との血縁関係は認められない。なおかつ当主殿の健康管理もどうだろう?」「それは心配です。私が会いたいと言った時は「感染性の病で臥している」と言われました」「ふむ、考慮しよう。もうすぐランチができあがる。続きは正式に我が家に招待する」 騎士団長の家?なんか凄そう。どこなんだろう?「団長様、すみません。今日のオススメがデザートだったので、勝手にシチューにしました」「そんなに申し訳なさそうにしないでほしい。ここはなんでも美味しいと部下からよく聞いている。女将のそんな顔を見たくて来ているわけじゃない」「団長様ってば、お上手ですね。団員たちも見習ってほしいわよ、全く。団員たちは皆アンジーちゃん大好きですからね」 と、女将さんは笑っていた。 その日の夜間営業の時間に常連となった団員さん達がやってきた。「はぁ、今日の訓練はハードだったぁ。きっと、いや必ずエールが美味いに決まってる!女将、今日のオススメとエール!」「今日のオススメはデザートだけどいいのかい?」「…今日はテールスープにしよう
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