死にたがりの私を、なぜか皆が愛し始めた
財閥の御曹司である九条海斗(くじょう かいと)と、午前中に入籍したばかりだというのに、その日の午後には、私たちは離婚届を提出するために再び役所を訪れていた。
手元に残されたのは、結婚届と離婚届受理証明書だけだ。
私・如月琴音(きさらぎ ことね)はその場で立ち尽くし、周囲を取り囲む彼の友人たちからの嘲笑を浴びていた。
「おい海斗、莉奈の一言のために、まさか本当に如月家のご令嬢と結婚して即離婚するとはな」
「見ろよ、お嬢様のあの顔、真っ青だぞ。泣くんじゃないか?」
しかし、海斗は如月家の養女である白石莉奈(しらいし りな)を愛おしそうに抱き寄せ、甘い声で囁いた。
「ほら、これで二つの受理証明書、揃ったぞ。
これで笑ってくれるか?」
莉奈は「ぷっ」と吹き出し、その澄ました顔に花が咲いたような笑みを浮かべた。
文句の一つも言ってやろうと踏み出したが、三人の兄たちに力ずくで止められた。
如月グループ総帥である如月家長男の如月大和(きさらぎ やまと)は、眉をひそめて言った。
「莉奈を笑顔にできるのは海斗だけだ。
お前も少しは弁えたらどうだ?」
トップ俳優である如月家次男の如月蓮(きさらぎ れん)は、私を地面に突き飛ばした。
「あの子は身寄りがなくて可哀想なんだ。
お前は恵まれているんだから、男の一人や二人、くれてやれ」
生物学教授である如月家三男の如月湊(きさらぎ みなと)は、冷たい表情で告げた。
「海斗は最初から彼女と結ばれるべきだったんだ。二度と二人の邪魔をするな」
心の奥底にいる「最愛の人」の幸せを、私なんかに邪魔させないために、彼らは私を無理やり車に押し込んだ。
その時、長い間沈黙していたシステムがついに起動した。
【プレイヤー様、攻略ミッションの完了を確認しました!
直ちに元の世界へ帰還しますか?】
後部座席に座り、私は憂鬱なふりをして窓外を眺めたが、危うく笑い出しそうになった。
ミッションのために演じてきたこの茶番劇も、ようやく終わりだ。
彼らの茶番になんて、もう二度と付き合ってられないわ!