九条舞
桑原琴葉(くわばら ことは)と結城碧斗(ゆうき あおと)が結婚して2年。あの日、琴葉は偶然にも、彼の妹が彼にこう問い詰めているのを立ち聞きしてしまった。「もしお義姉さんと雪乃が同時に目の前に立って、選べって言われたら、どっちを奥さんにするの?」
碧斗は答えた。「雪乃だ」
その答えを聞いた琴葉は、冷静に離婚を切り出した。だが、離婚手続きに必要な1ヶ月の、まさに最終日――予期せぬ妊娠が発覚し、あろうことか碧斗にその現場を押さえられてしまう。
彼女はその場で子供をおろすと宣言したが、医師からは「身体的な理由により、中絶はできません」と告げられてしまった。
碧斗は彼女に2つの選択肢を突きつけた。
1つ目は離婚の取り消し。
2つ目は最後の離婚手続きを完了させ、親権も彼女に渡すが、妊娠期間中は彼と同居すること。
琴葉は後者を選んだ。
こうして、彼女と元夫との離婚後の同居生活が幕を開けた……
同居後、琴葉はあることに気がついた。年中無休の仕事人間だった彼が、まるで別人のようになり、毎日きっちりと定時に帰宅するようになった。用もないのに彼女にまとわりつき、「お腹の子供のため」という口実で、何かと甲斐甲斐しく尽くしてくる。
やがて、無事に子供が産まれた。
赤ちゃんを腕に抱く琴葉を、碧斗は優しくその腕の中に抱きしめた。彼は彼女の額に愛情深く口づけを落とし、優しく囁いた。「子供はお前のものだ。そしてお前は、俺のものだ」
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