Short Stories & Novels

Explore a diverse collection of captivating short stories that span various genres. Perfect for readers looking for quick literary escapes and engaging narratives.
あいにく春はもう終わっていた - All novels & stories
やし
「ミス・ワールド」の応募締め切りの最後の瞬間に、私はやっと決心して送信ボタンを押した。 10分前、私は日向南人(ひなた みなと)の肩にもたれかかって結婚写真を選んでいた。 私は胸を弾ませながら、これがどうかと彼に写真を差し出した。 しかし、彼は突然、私を強く押しのけると、背筋をぴんと伸ばし、スマホから目を離さなかった。 「心音……自殺する」 私が反応する間もなく、南人は慌てて病院へ向かった。 自分の伸ばした手を見て、私は突然、この数年一緒にいても全然意味がなかったと思った。 3年前、木村心音(きむら ここね)の兄は南人をかばって刺され、命を落とした。 それ以来、彼女は私たちが一緒になるのを阻止するため、ありとあらゆる口実を繰り出してきた。 これが、666番目の口実だ。
11.3K
あなたの愛は遅すぎた - All novels & stories
ネズミマン
彼氏が事故で亡くなり、最期に「唯一の弟である平塚鶴本(ひらつか つるもと)の面倒を見てほしい」と私に託した。 私は彼を大学卒業まで支え、会社を立ち上げる手助けもした。けれどある夜、鶴本が酒に酔った勢いで、私たちは一線を越えてしまった。 その後、私たちの関係に悩んでいたとき、彼のデスクに置かれた私の写真と婚約指輪を目にした。 胸が大きく揺さぶられ、私は休憩室の扉を開け、二人の関係をはっきりさせようと思った。 ところが、扉を開けた瞬間、白いキャミソールが足元に落ちてきた。 私はその場に凍りついた。布団の中には、驚いた表情を浮かべる女性アシスタントを包み隠そうとする鶴本の姿があった。 「ノックくらいもできないのか?」 顔面が真っ白になるのを感じながら、私は慌てて退こうとした。だがそのとき、アシスタントの怯えた声が私を呼び止めた。 「裕美さん……服を取っていただけますか?」 彼女の瞳に潜む敵意を無視し、私は無言でキャミソールをベッドに投げ捨て、その場を逃げるように後にした。 会社を出るとすぐに、鶴本から電話がかかってきた。 「裕美姉……俺の部屋に勝手に入るのは、もうやめろ」 私は乾いた笑みを浮かべて「わかった」とだけ答えた。 それ以来、二度と彼の世界に足を踏み入れることはなかった。
8.5
11.5K
少女のまま、風に攫われて - All novels & stories
アイちゃん
4歳のとき、私と弟の鈴木竜之介(すずき りゅうのすけ)は溺れて、私だけが助かった。それから母は、私のことを憎むようになった。 夜になると、母は何度も「あめ」を持って、私に無理やり食べさせようとした。でも、そのたびに父が止めてくれた。 その後、私は長い髪をばっさり切って、可愛いワンピースも着なくなった。竜之介のかわりになろうと必死だった。そうしたらやっと、母は私に目を向けてくれるようになった。 それから3年後、母のお腹にまた赤ちゃんができた。「死んだ竜之介が帰ってくる!」って彼女は大喜びだった。 母が喜んでいるのを見て、私も嬉しかった。竜之介が帰ってくるんだ。本当によかった…… じゃあ、このお家にもう、私っていう代わりの子は必要ないんだ。 私は、昔、母が飲ませようとしたあの「あめ」を見つけだして、静かに飲み込んだ。
5
7.1K
愛は雲間に隠れる - All novels & stories
墨香
私が胃の病気で倒れそうになっている時、野田安里(のだ あさと)はちょうど自分のアシスタントと一緒に誕生日ケーキのロウソクを吹き消している。 私は痛みで意識が飛びそうなのに、彼は一度もこっちを見ないで、アシスタントの鼻を甘く撫でる。 「結月、またひとつ大人になったね。バースデイ・ガールはちゃんと願い事するんだよ!」 そのあと私は激痛で意識を失って病院に運ばれる。安里に何十回も電話をかけるけど、全部すぐ切られる。 一方で、アシスタントはSNSに投稿して、九枚の写真でも収まりきらないほどのプレゼントを自慢している。 「最高!安里ちゃんって世界一番優しい人!結月はずっと安里ちゃんと一緒にいられるように!」 私は電話で問い詰めるけど、安里は全然悪びれない。 「結月の誕生日なんだから、俺が一緒にいて何が悪いの。嫌なら別れれば?」 これで九十九回目の「別れよう」だ。彼は相変わらず、私が絶対に別れないと思い込んでいる。 でも今回、私は同意する。
5
11.3K
偽りの独占欲にさよなら。もう「幽霊彼女」をやめます - All novels & stories
影森知佳
私には、ひどく独占欲の強い彼氏がいた。 7年付き合ってきた江坂悠真(えさか ゆうま)が、口癖のように言っていた言葉がある。 「君がかわいすぎるから悪いんだ。誰かに取られたくない。だから、ほかの男には見せたくない」 「なっちゃんはきれいだから、誰だって惚れる。ほかの男が少し見るだけでも、俺は嫉妬するんだ」 だから悠真は、私を自分の友人たちに近づけようともしなかった。 けれどある日、私は別アカウントで彼のSNSを見つけてしまった。 3年分、600件を超える投稿。 そこにあったのは全部、彼と別の女の子が過ごした日々の記録ばかりだった。 2人は旅先の街を歩き、山頂で願いごとをし、海外の街角で抱き合ってキスまでしていた。 最新の投稿は、海辺で撮られた写真だった。 大勢の友人たちに冷やかされ、歓声を浴びながら、悠真はその子にキスをしていた。 添えられた言葉は【愛する人は、世界中に見せびらかしたい】だった。 指先が震えた。 私は黙って画面を閉じ、南の町へ向かう航空券を予約した。 7年続いた恋も、終わらせると決めるのはほんの一瞬だった。
7.7
9.5K
無言の愛 - All novels & stories
長男
パーティーの席で、娘がわざと大声で夫に言った。 「パパ、小森お姉さんがパパの赤ちゃんを妊娠したでしょ。これから私たち一緒に暮らすの?」 夫は切ったステーキを私の前に置き、静かに言った。 「俺はママと約束したんだ。もしどちらかが先に裏切ったら、その人は永遠に相手の世界から消えるって。 その代償を俺は背負えない。だから上手く隠していた。 赤ちゃんが生まれても、彼女たちを絶対にママの前に現れさせはしない」 そう言い終えると、永遠にお前を愛していると手話で伝えてきた。 だが彼は、私の目が赤くなっていることに気づかなかった。 彼は、私の耳が一週間前に治ったことに気づいていない。 そして、私がずっと前から彼らの関係を知っていることにも気づいていない。 さらに、彼らに内緒で、私が教育支援のために貧困地域に行く航空券を買っていたことも知らない。 あと七日で書類が下りたら、私は彼の世界から完全に消えるのだ。
7
50.7K
私を蔑み、母になる未来まで奪った夫などもういらない - All novels & stories
ちょうどいい
会社で火事が起きた時のこと。私は唯一の脱出ロープを、夫の森田理仁(もりた りひと)に渡した。 しかし、彼は私の顔から火災避難用マスクを無理やり剥ぎ取ると、振り返ってそれを助手である陣内涼子(じんない りょうこ)に着けさせたのだ。 理仁は脱出ロープを使って脱出し、涼子もマスクのおかげで無傷で逃げ出すことができた。 ただ私だけが煙を吸いすぎて気を失い、さらには倒れてきた柱で腹部を強打してしまったせいで、下腹部から流れ出した血が足元を伝った。 消防隊員が私を救急車のストレッチャーに乗せようとしたその時、理仁は私を引きずり下ろした。 「柚葉(ゆずは)、お前のその程度の怪我でストレッチャーなんか使うな。涼子が先だ。彼女のほうが重症なんだから、しっかり検査してもらわないと!」 消防隊員と医師は呆気にとられた。 彼らは血に染まった私のスカートと、指の軽い火傷で泣きじゃくる涼子を交互に見つめる。 同僚たちも思わず口を挟んだ。「お言葉ですが、社長……どう見ても森田部長の方が重症じゃないですか?」 すると、理仁が声を荒げた。「うるさい!俺はこいつの夫なんだから、こいつが重症か重症じゃないかくらい分かっている。それに、お前たち。そんなこと言って、もし涼子に何かあったら、ただじゃ済まさないからな」 私は少し膨らんだお腹を押さえると、静かに頷いて、涼子を救急車に乗せることに同意した。 理仁……これで私もこの子も、もうあなたに縛られることはない。
4.5
9.2K
生まれ変わった私、逆襲への人生 - All novels & stories
小魚と宝物
夫である九条蓮(くじょう れん)と、彼が支援していた女子大生が、インスタにウェディングフォトを投稿したあの日。 私はいつものようにヒステリーを起こすこともなく、ただその投稿に「いいね」を押した。 そして、「お似合いの二人ね。心から祝福する」とコメントを残した。 界隈の人間は皆、私のことを「愛人の横暴を許す、最も情けない妻」だと噂した。 一週間後、帰宅した彼は私にこう言い訳をした。「ただの芝居だよ。彼女の祖父が病気で、死ぬ前に孫娘の花嫁姿が見たいって言うからさ」 私は静かに頷いた。 「本気になんてしてないわ。あなたのこと、信じてるもの」 前世の私は、この日、結婚式場に乗り込んで大暴れし、彼らの式を台無しにした。 蓮はその報復として、私の両親が経営する会社を徹底的に追い込み、破産した両親はビルから飛び降りた。 そして私自身も、彼の手によって精神病院へ送られ、廃人同様になるまで折檻された。 だから、二度目の人生となる今回は、彼の愛など乞い求めない。ただ、その財産だけを狙うことにした。 彼が浮気をするたびに、私は彼名義の資産の一部を移動させる。 チャンスはあと三回。それが終われば、彼はすべてを失うことになる。
8.6
11.9K
304回も蔑ろにされた末、私は離婚を決意した - All novels & stories
二つの愛
夫の村田圭佑(むらた けいすけ)に304回も頭を下げて、ようやく一度だけ時間をもらえた。父を海へ連れて行き、最期のひとときを過ごすための時間を。 海辺で父に寄り添いながら、車椅子に座った父のぬくもりが静かに消えかけていくのを感じていた。 なのに、圭佑は一向に姿を現さなかった。 圭佑の胸に居続ける初恋の人・中島加奈子(なかじま かなこ)のインスタには、彼と一緒に森の中で雲を眺めている写真が投稿されていた。 【都会の喧騒から離れ、二人で過ごす幸せ】 手元を滑らせた私は、その投稿に「いいね」をしてしまった。すぐに圭佑からメッセージが届く。 【もう何度も言ってるだろ?佳奈子に迷惑をかけるなって。これ以上騒ぐなら離婚だからな】 圭佑が「離婚」という言葉を盾に私を脅してきたのは、これで何度目だろうか。 もう、聞き飽きた。 【分かった。離婚しよう】
6
11.3K
春風も、君も、二度と戻らない - All novels & stories
平坂果音
「枝里、霧島グループの最新医療技術を使えば、君の両親を植物状態から目覚めさせることができる。ただし——元恋人である俺に頭を下げてきた以上、一つだけ、譲れない条件がある」 「……どんな条件なの?」 胸の奥がきゅっと痛む。東雲枝里(しののめ・えり)は息をのんで問い返した。 「高峯翔真(たかみね・しょうま)と別れろ。そして、俺のもとへ戻ってこい」 低く落ち着いた声には、否応のない圧が込められていた。 「……わかった。応じるわ」 一瞬の迷いも見せず、彼女は静かにそう答えた。
7.3
9.3K
婚約者が逃げたので、別の男に嫁いだ - All novels & stories
こぼれ桜
桐生慧(きりゅう けい)の幼なじみ、相沢莉子(あいざわ りこ)が、結婚式の途中で花嫁が逃げ出す「駆け落ちごっこ」をしてみたいと言い出した。 式が半ばまで進んだところで、慧は花嫁姿の私――一条美咲(いちじょう みさき)を振り返った。 「莉子の駆け落ちごっこに付き合ってくる。五分で戻るよ。あいつが遊び好きなのは、美咲も知ってるだろ。そんなに目くじらを立てるなよ」 そう言うと、慧は引き止める私の手を振りほどき、莉子と手をつないで会場から駆け出していった。 招待客たちの哀れむような視線が、一斉に私へ注がれた。 私は唇を噛みしめ、今にもこぼれそうな涙を必死にこらえながら、せめて最後の意地だけは守ろうとした。 三十分が過ぎても、慧は戻ってこなかった。 招待客たちが帰り支度を始めると、新郎側の友人として式を手伝っていた三浦直人(みうら なおと)が慧に電話をかけた。 「慧、いつ戻ってくるんだ?美咲さんがまだ待ってるぞ」 慧は少しも悪びれずに答えた。 「莉子と海へ行くことになったんだ。しばらく戻れそうにない。美咲には待たせておけばいい。あいつは俺と結婚するために、親とまで縁を切ったんだぞ。どうせ俺なしじゃいられない。少しくらい待たせたって問題ないだろ。騒ぎを起こさないよう、お前たちで見ていてくれればそれでいい」 固く握りしめていた拳から、ふっと力が抜けた。 慧の投げやりな声を聞いた瞬間、胸の中に残っていた最後の期待まで、音もなく崩れ落ちたのだ。 私は招待席にいた、かつて家同士の縁談で私の結婚相手になるはずだった男へ視線を向けた。 騒ぎ立てることも、泣きわめくこともなかった。 私は彼とそのまま式を挙げ、会場を出ると、二人で役所へ向かって婚姻届を提出した。
6
18.1K
7年後の私からの警告 - All novels & stories
ご飯ちょうだい
今日の午後、私は7年後の自分から一通のメッセージを受け取った。 差出人はなんと私自身、神谷舞衣(かみや まい)だった。 何かの新手の詐欺だろうと思い、ろくに中身も見ずに憤慨して返信した。 【くそ詐欺師!】 すると相手は、睡眠薬の空き瓶の写真を送ってきた。 【私は詐欺師じゃないわ。でも、確実に死にかけている。景斗とは別れなさい。今日は彼が浮気を始めた初日よ。彼の初恋の人が帰国したの。名前は白石琴音(しらいし ことね)】 私は呆然とした。 この詐欺師のデタラメを鼻で笑ってやろうとした矢先だった。黒川景斗(くろかわ けいと)の初恋の相手は、紛れもなくこの私なのだ。 背後のドアが開いた。 景斗が笑みを浮かべて誰かを招き入れ、私に紹介した。 「舞衣、新しい友達を紹介するよ。白石琴音だ。俺の義妹で、今日帰国したばかりなんだ」
5
9.9K
別宅に夫の愛人がいた - All novels & stories
ちょうどいい
私は、本間澪華(ほんま れいか)。結婚してからずっと空き家のままになっている家がある。 そんなある日、管理会社から連絡が入った。 「本間様、恐れ入りますが、そちらにご入居中の方へお伝えいただけますでしょうか。ベランダに干してある女性用の下着が外から見えてしまうということで、下の階の方からすでに二度ほど苦情が入っておりまして……」 送られてきた写真には、透け感のあるセクシーなランジェリーが、ベランダのいちばん外側に掛けられ、風に揺れていた。 その隣には、見覚えのあるメンズのボクサーパンツまで干してある。 胸の奥がすっと冷え、私はすぐ夫の本間郁人(ほんま いくと)に電話をかけた。 「汐見ヒルズの部屋、人に貸したの?」 郁人は一瞬だけ黙り込んで、それから急に笑い出した。 「なんだ、もう気づいたのか。本当はサプライズにするつもりだったのにさ。帰ったら、家賃はちゃんと家計に入れるようにするから」 私は嬉しそうなふりをして、「ほんと?助かる」と笑ってみせた。 電話を切ると、そのまま汐見ヒルズへ向かった。
6
7.4K
花菜の想い、背ききれず - All novels & stories
キン
夜が更け、水のように静かだった。鈴木花菜(すずきはな)は一人で寝室に座り、携帯電話の微かな光だけが部屋を照らしていた。 「プロポーズ、受け入れるわ」 その言葉を聞いた森下拓海(もりしたたくみ)は、魅惑的な声で笑った。 「やっと分かってくれたんだね。あの不適切な彼氏と別れる決心がついたみたいね。 この三年間、俺と婚約しているのに、東都市へ一人で行ってしまった。あの男、お前との関係を公にしなかったよな?辛かっただろう」
6
15.0K
この言葉、一生変えない - All novels & stories
無恙
特殊警務部の誰もが知っていた……周防凛河(すおう りんが)は最も優秀な交渉人であり、生死を分ける極限の瞬間でさえ、犯罪者の心の防壁を崩すことができる。 にもかかわらず、仲程依夜(なかほど いよ)の涙の前では、彼はいつも敗北するのだ。 誰もが口を揃えて言った。彼は依夜を骨の髄まで愛していて、星も月もすべて彼女に捧げたいと思っているのだと。 けれど、それが真実ではないと知っていたのは、この世でただ一人、依夜だけだった。 凛河の「本命」は、別の女性だった。
6
14.8K
27回目の入籍をすっぽかされ、彼の兄に嫁ぐ - All novels & stories
聴雨
江波結斗(えなみ ゆいと)と共に区役所に婚姻届を出しに来るのは、これで27回目となる。 日曜開庁の窓口で、ようやく私たちの番号が呼ばれた――まさにその瞬間だった。後ろにいた義妹の江波愛莉(えなみ あいり)が不意に身をかがめ、胃のあたりを押さえた。 「お兄ちゃん……お腹が、すごく痛いの」 結斗はすぐさま彼女の肩を抱き寄せた。 「今すぐ病院に連れて行くからな」 愛莉は慌てて首を横に振った。 「ううん、大丈夫。今日は二人の大事な日だもん。私、我慢するから」 口ではそう言いながらも、結斗の袖を握る手だけは決して離そうとしない。 結斗はすっと眉をひそめた。 「愛莉、無理するな。すぐ連れて行く」 そう言い残し、彼は番号札を私の手に押しつけた。 私――矢野目芽依(やのめ めい)は、彼を静かに見つめた。 「婚姻届なんて、手続きに10分もかからないでしょう。その時間すら私にくれないの?」 彼はこちらへ視線を向けようともしない。 「どうせ26回も待ったんだ。今さら1回増えたところで、大した違いはないだろう」 あまりに悪びれないその口ぶりに、私は思わず笑みをこぼした。 そうか。彼自身も、何度も私との約束をすっぽかしてきたことは分かっていた。 ただ、私が待ち続けているという事実を、一度たりとも真摯に受け止めていなかっただけで。 「結斗。今日、私と婚姻届を出さないなら……28回目は、もうないから」 彼は愛莉を抱き寄せたまま、こちらを見ようともしなかった。 「今はごねないでくれ。愛莉を落ち着かせてからだ」 私は俯いてスマホを取り出し、長らく連絡を絶っていた番号とのメッセージ画面を開いた。 【10分以内に、本人確認書類を持って区役所まで来て】
5
10.5K
まだ花嫁になれない私 - All novels & stories
五円
結婚式で、夫の秘書・西野若菜(にしの わかな)が新郎新婦の写真を間違えて映し出してしまった。 スクリーンに映し出されたのは、私・柴田蛍(しばた ほたる)とのウェディングフォトではなく、夫・柴田礼司(しばた れいじ)と若菜が伝統的な婚礼衣装で手を取り合い、見つめ合っている、とても幸せそうな姿だった。 会場が騒然となった。 ミスをした若菜が泣きじゃくりながら、式を延期してほしいと私に懇願する。 礼司は慌てる様子もなく、低く落ち着いた声でこう耳打ちした。 「みんなもう来てるんだから、今さら延期なんてしたら面目丸つぶれだし、縁起も悪い。それに、どうせ誰も花嫁の顔なんて詳しく知らないだろう。だったら、とりあえず若菜に代理で式に出てもらえばいい」 参列した友人たちは、礼司のそんな身勝手な発言を聞いて、私が怒り狂うのではないかと唖然としていた。 しかし私は淡々と頷き、その提案に乗ることにした。 私の冷静さに気を良くした礼司は、どうせ入籍も済ませているんだからと、いずれ日を改めてちゃんと挙式してやる、と言い残した。 だが、彼は決定的な勘違いをしている。 他の女を花嫁の代役に立てたあの瞬間、私の中ではすでに離婚の決意が固まっていたということに。
4
9.1K
やり直し人生、今さら後悔されても遅い - All novels & stories
文芝
旦那の隼人と一緒に、年末に実家へ帰る途中だった。 ……そのはずが、事故に巻き込まれて、気がついたら――恋人になる前の時間に戻っていた。 前の人生では、七年間、彼と結婚していた。お互いに礼儀正しく、表面上は平穏な夫婦。でも、彼は最後まで一度も子どもを望んでくれなかった。 あとになって、私はやっと気づいた全部わかったのは、死んだあとだった。彼の心の中にはずっと「思い人」の影が残ってたんだ。 だから私は決めた。今回は、彼を解放してあげようって。 黙って連絡先を消して、距離を置いて、それぞれ違う道を選んだ。 ――そして、七年後。 彼は株の世界でトップに登りつめ、思い人の水瀬水無瀬さんと一緒に、同窓会で堂々と婚約を発表した。 私が一人でいるのを見ると、彼は皮肉を込めた笑みでこう言った。 「詩羽、俺のこと、二度の人生どっちでも一番愛してたって自覚してるけど……だからって、いつまでも俺のこと待ってなくていいんじゃない?」 私は何も言わずに、そっと息子の手を取った。 その瞬間、隼人の顔から血の気が引いた。目を真っ赤にして、私を睨みつけながら叫んだ。 「……お前、『一生一緒にいたい』って言ったよな?『俺のためだけに子どもを産む』って……言ったじゃないか!」
16.8K
恋文を晒されたので、婚約破棄です - All novels & stories
狐坂
同窓会の日、親友が抽選箱を取り出した。 箱にはこう書かれている。 【桜井糸(さくらい いと)、恋する乙女の名言集・大抽選会】 その場がどっと沸いた。 誰かが引き当てたのは、高3のとき角田旭(かくだ あさひ)に渡したラブレターだった。 【旭くんが今日、私に笑いかけてくれた。だから明日も、彼に捧げたいと思った】 別の誰かが引いたのは、大学時代のもの。 【返事が来なくてもいい。忙しさが落ち着いたら、きっと思い出してくれるはずだから】 けれど旭に宛てた手紙に、彼が返事をくれたことは一度もない。とっくに捨てられたのだと、今までずっと信じ込んでいた。 最後に親友が引き当てたのは99通目。 彼女は旭の胸に寄りかかったまま、笑いながら読み上げた。 「もしいつか私のことが必要なくなっても、それでも幸せを祈ってる」 旭は紙をひったくり、笑って親友をたしなめた。 「よせよ。糸は恥ずかしがり屋なんだから」 そう口では言いながらも、その目はどこか、私が恥をかくのを面白がっているように見えた。 親友が手紙をめくった拍子に、箱がぐらりと傾き、中の手紙がこぼれ落ちた。それを拾おうとかがんだ私は、箱の底に小さく書かれた文字に気づいた。 【毎月更新】 【仲間内だけのお楽しみ】
6.2
10.7K
二度と待たない、私のための人生 - All novels & stories
世界は巨大なスイカ
私を待たせるのが、榛名律希(はるな りつき)の癖だった。 律希の会社の危機を救うため、妊娠五ヶ月の身である私、瀬戸琴音(せと ことね)は大晦日の夜に彼の代理として接待の席に赴いた。 会食の席で周囲から律希について尋ねられた時も、私は無意識のうちに彼を庇う言い訳を口にしていた。 いつ迎えに来るのかと尋ねると、律希は「もう少し待て」と言った。 だが彼は、私からわずか十メートルしか離れていない車の中で、かつて援助していた女の子と逢引きしていたのだ。雪が降りしきる極寒の中、妊娠中の私を放っておいたまま。 帰路で大渋滞に巻き込まれた時、下半身から温かい血が流れ出すのをはっきりと感じた。 顔を上げて律希に助けを求めたが、彼は相変わらず「もう少し待て」と言うだけだ。 窓ガラスに反射する彼のスマホ画面。彼は、女の子とのトーク画面を一番上にピン留めし、楽しそうにメッセージを送り合っていた。 私とお腹の子供の命は、あんな女の子一人にすら及ばないというのか。 午前零時。新しい年の訪れを告げる、除夜の鐘の音が遠くから響き渡った。 もう二度と、私は立ち止まって彼を待つことはしない。
6
11.1K
PREV
1
...
2122232425
...
157
New Arrivals
遅咲きの夢と、捨てた約束
遅咲きの夢と、捨てた約束
· ワンワン
10.6K views
長く思い、長く恋う
長く思い、長く恋う
· 心降
12.9K views
恋は水の跡
恋は水の跡
· 鴨肉丼
8.9K views
裏切りの家
裏切りの家
· しぜん
7.5K views
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status