レイ
自分の帰国を祝う宴で、桐谷枝里子は西原越也の愛人――江川詩織に会った。
彼女は色褪せたシャツに身を包まれ、越也の取り巻きに無理やり酒を勧められていた。一杯飲めば二十万がもらえると。
枝里子が越也の腕に絡んで入ってくると、詩織はむせび泣きながらも必死に顔を伏せ、涙を拭った。越也に自分の弱さを見せたくなかったのだ。
取り巻きの一人があざけるように彼女の顎を引き、だらしなく言う。
「桐谷さんが帰ってきた以上、越也さんがお前を捨てるに決まってる。お前はな、所詮桐谷さんがいない間の代用品にすぎないんだぞ」
別の男が下品に続ける。
「とはいえ、二年も越也さんのそばにいたんだろ?越也さんに土下座すれば、情けで小遣いくらいはもらえるんじゃねえの?」
その言葉に越也は鼻で笑った。
「くだらない話はよせ」
彼は枝里子の皿にフルーツを乗せていく。
「安心してくれ、枝里子。俺はあの子と寝てない。ただ、暇つぶしに遊んでただけだ。
お前が戻ったら、すぐに縁を切るつもりだ」