ロウヤ浪漫譚
結婚して六年目、周防蒼介(すおう そうすけ)の傍にはまた別の女がいた。
以前と同じように、何事もないふりをしたかった。
でも今回の女は大人しくなく、あの手この手で私の前で芝居を打つ。
蒼介の彼女への態度も今までとは違い、彼女はこんなに我が儘放題なのに、ずっと甘やかしている。
病気のせいで頻繁に注射を打たれて腫れ上がった左手の甲に触れると、突然どうでもよくなった。
「蒼介、離婚しましょう」
出会って、分かり合って、そして顔を合わせるのも嫌になるまで、たった六年しかかからなかった。
あなたは私が最も必要としていた時に現れたのに、私が闇から抜け出した後、再び深淵へと突き落とした。
もう疲れた。
残り少ない時間、私はただ自分のために生きたい。
繋ぎ止められない犬なら、他の人を噛ませておけばいい。