エリン
私、水無瀬澄乃(みなせ すみの)の結婚式は、これまで数え切れないほど延期されてきた。
私はウェディングプランナーに電話をかけ、花嫁の名前を、婚約者・京極征爾(きょうごく せいじ)の幼馴染である「藤堂愛妃(とうどう あき)」に変更するよう伝えた。
プランナーは戸惑いを隠せない声で尋ねてきた。「水無瀬様、本当によろしいのでしょうか。今回は京極様も延期にはなさいませんでしたが……」
その声に滲む驚きを聞き取りながら、私は淡々と答えた。「ええ、花嫁を藤堂さんに変更してちょうだい」
最初から、征爾が結婚式に関して出した指示はたった一つだけだった。
――装飾はすべて愛妃の好みに合わせるように。
「愛妃はセンスがいいから、俺たちの結婚式の参考にするだけだ」と彼は説明していた。
だが、会場の装花から引き出物、入場曲に至るまで、すべての決定権は愛妃にあった。私のウェディングドレスのデザインでさえも。
彼女はさらりとこう言っていた。「マーメイドラインの方が、澄乃には似合うわ」
だから私は、彼女の痕跡が隅々まで染み込んだこの結婚式ごと、すべてを二人に譲ることにした。
そして、この茶番劇から完全に身を引くのだ。
これからは、あの男は過去に浸っていればいい。私は、誰にも縛られない広い世界へ飛び立つのだから。